戦国異伝供書
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第百六話 八万の大軍その五
「城の者達の命をです」
「助けてほしいと」
「そう言えばです」
「もう戦の目的は果たした」
「両上杉は思い」
それでというのだ。
「話を飲みです」
「勝った勝ったとなりますな」
「そうなります、宴もはじめるでしょう」
「そしてその夜に」
「そうしましょうぞ」
まさにというのだ。
「ここは」
「では」
氏康も頷いた、そうしてだった。
彼は軍勢を率いてきたが両上杉を軸とした関東諸侯の軍勢に対して城を明け渡すので城の者達は助けて欲しいと和睦を申し出た、するとだった。
彼等は受けた、三日後城を明け渡すことになったが。
それを聞いて氏康は笑って言った。
「これでじゃ勝ちですか」
「我等の」
「そうなりましたか」
「うむ」
こう家臣達に述べた。
「そうなった」
「あちらが和を受けた」
「それがですか」
「まさにですか」
「そうなった、ではじゃ」
今度は風魔に声をかけた。
「今宵とじゃ」
「城の方にですな」
「話を送れ」
「今夜にですな」
「全軍を以て敵軍に夜襲をかける」
八千の兵と城の兵達を以てというのだ。
「そしてじゃ」
「敵軍を打ち破るのですな」
「八万の兵を後ろから攻め」
夜にというのだ。
「攻めるのじゃ、ただな」
「ただといいますと」
「我等は服も具足も旗も白じゃ」
北条家の色の話もした。
「その白はな」
「決してですか」
「攻めるでない」
このことも言うのだった。
「よいな」
「同士討ちはしない」
「何があっても」
「そうして戦いますか」
「今宵は」
「そうせよ、あと敵の軍勢の中は隅から隅までじゃ」
それこそというのだ。
「暴れ回るのじゃ」
「敵を倒して回る」
「そうしていけばよいですか」
「攻める時は」
「また首を取るよりもな」
それよりもというのだ。
「耳を取れ」
「耳が褒美の証ですな」
「敵を倒したという」
「それにしますか」
「首を取ると時間がかかるしじゃ」
首を切るそれにだ。
「重いな」
「首は実にかさばりますな」
「あれは」
「幾つも取れば猛者ですが」
「褒美もそれだけ増えますが」
「しかし切るのに時間がかかり重くてかさばってな」
それでというのだ。
「夜襲の時は不向きじゃ、だからじゃ」
「耳ですか」
「倒した敵のそれを取り」
「褒美の証としますか」
「そうせよ」
この度の戦ではというのだ。
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