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レーヴァティン

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第百七十三話 北陸攻めの前にその二

「言うまでもなくな、しかしな」
「大軍であるだけに」
「その兵糧はかなりの量になります」
「武具にしても」
「兎角です」
「それを運ぶ時に攻められるとだ」
 どうしてもというのだ。
「弱る」
「それが大軍の弱みですな」
「だから上様は荷駄隊を守らせた」
「常に兵を多く置き」
「道の左右の城や砦も手に入れてな」
 その様にしてというのだ。
「そうした、そこまで考えるとはな」
「まさにですね」
「甲斐の主が出来る証ですね」
「何といっても」
「左様ですね」
「資質はある、そして政がよく民が豊かであることからな」
 このことを見てもというのだ。
「性根もいい、ならな」
「それならですか」
「この度はですか」
「攻めますか」
「主と会い」
「そしてですか」
「その時に正式に処遇を決めるが」
 それでもというのだ。
「今の時点でな」
「かなり、ですね」
「決められていますね」
「左様ですね」
「そうだ、では会おう」
 こう言ってだった、英雄は甲斐の主である湯上に会った。湯上はでっぷりと太った口髭が八の字の男だった。
 その男が拝謁した後でだった、英雄は彼に色々問うた。その返事がどれも淀みがなくかつ確かなものであったので。
 英雄は彼にこう言った。
「お前はこのまま甲斐の主だ」
「ですがそれがしは」
「確かに俺と戦った」
「ですから」
「だが俺はそれだと思った者にだ」
 まさにというのだ。
「その相応しい地位に就ける」
「だからですか」
「お前はそのままだ」
 これまで通りにというのだ。
「甲斐の主だ」
「そうして頂けますか」
「その様にする、いいな」
「有り難きお言葉」
「お前はこれまで自分で甲斐を治めていたが」
 それがというのだ。
「これからは幕府の下でだ」
「この甲斐をですか」
「治めてもらう、民も頼む」
 甲斐の彼等もというのだ。
「いいな」
「それでは」
「そしてだ」
 英雄はさらに言った。
「甲斐の国人達のこともな」
「あの者達への仕置きもですか」
「これまで通りだ」
「その様にですか」
「任せる」 
 こう彼湯上に告げた。
「いいな」
「それでは」
「そしてだ」
 英雄は湯上にこうも言った。
「やがて東国に進む時にだ」
「この甲斐はですか」
「足掛かりにもなる」
 だからだというのだ。
「それでだ」
「この甲斐をですか」
「城も整えな」
「そして時が来れば」
「そちらでも存分に働いてもらう」
 戦でもというのだ。 
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