銀河転生伝説
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第18話 全ては俺の手の中で
ガイエスブルク要塞に集結した貴族連合軍は、その主戦力をガイエスブルク要塞に集中させる一方、シュターデン大将率いる別動隊16000隻が手薄となるであろう帝都オーディンを突こうとしていた。
これに対し、ラインハルトはミッターマイヤー艦隊14500隻をアルテナ星域方面に迎撃に向かわせる。
先に到着したミッターマイヤーは600万個もの機雷を敷設し、シュターデン艦隊の到着後はその機雷原を挟んで対峙することとなった。
――宇宙暦797/帝国暦488年 4月22日――
両軍が睨み合いを続けてから3日が経過した。
この緊張に先ず耐えきれなくなったヒルデスハイム伯爵など門閥貴族たちはシュターデンに詰め寄り、打って出るよう圧力を掛け始める。
そこへミッターマイヤー艦隊の通信を傍受したとの報告が入り、その内容は要約すると『ミッターマイヤー艦隊はラインハルト本体の到着を待っており、本体の到着後圧倒的な大軍を以って攻勢に出る』というものであった。
シュターデンは通信を簡単に傍受できたことから、これがミッターマイヤーの計略であると推測したが、ヒルデスハイム伯たちはシュターデンを優柔不断の臆病者として勝手に出撃しようとする。
結局、シュターデンは出撃することを了承し作戦を提示した。
それは、艦隊を2つに分け各々が左右から機雷原を迂回し、左翼部隊がミッターマイヤー艦隊と正面衝突する間に右翼部隊が背後に回り込んで後方と側面から機雷原に追い込むというものであった。
シュターデンは左翼部隊を自ら率いることとし、右翼部隊をヒルデスハイム伯以下門閥貴族たちに任せた。
「よろしいのですか?」
「よろしいわけあるか! だが、こうなっては仕方ない。ハプスブルク大公の話に乗るとしよう」
・・・・・
敵の後背を突くため悠々と進撃していたシュターデン艦隊の右翼部隊は、突如ミッターマイヤー艦隊の攻撃を受け、一方的に蹴散らされる。
右翼部隊を壊滅されたミッターマイヤーは、左翼部隊の背後を突こうと全速で移動したが、
シュターデンの左翼部隊は影も形もなかった。
「何!? シュターデンは何処へいった?」
その後も捜索を続けたものの、一向に見つかる気配はない。
結局、5時間が経過したところでミッターマイヤーは捜索を打ち切った。
戦果だけでみるならば、ミッターマイヤー艦隊は軽微な損害でシュターデン艦隊の半数を壊滅させ、大勝利と言えたのだが……何とも歯切れの悪い勝利であった。
* * *
歯切れが悪かろうが、後味が悪かろうが勝利は勝利であり、初戦の戦いに勝利したラインハルトはガイエスブルク要塞攻略の橋頭堡とするため、フレイヤ星域にあるレンテンベルク要塞の攻略にかかる。
ラインハルト軍は瞬く間に要塞周辺宙域における艦隊戦を制圧し、レンテンベルク要塞自体の攻略は中心部の核融合炉に通じる第六通路を守る装甲敵弾兵総監オフレッサー上級大将に白兵戦で苦戦させられたものの、罠を仕掛けて捕え、レンテンベルク要塞を陥落させた。
また、辺境星域を経略していたジークフリード・キルヒアイス中将も60回を超す戦闘にことごとく勝利し、占領した惑星を民衆の自治に委ねていった。
その頃、シャンタウ星域ではロイエンタール艦隊とメルカッツ艦隊が戦闘を繰り広げていた。
メルカッツは小型艇による近接戦闘により、ロイエンタール艦隊に強かな打撃を与えていく。
「敵の第三波、引きました」
「ほう、巧妙だな」
「以前と違って、行動に粘りと統一性が見られるようになりましたが」
その言葉を聞いたロイエンタールは顔を顰める。
「いよいよか……」
「は?」
「おそらく、メルカッツが前線に出てきたのだ。……となると数が少ない分こちらが不利だな。ここは引くか」
「しかし、ここで賊軍に形の上だけとはいえ勝利を与えると、敵味方の士気に与える影響が如何かと」
「ふむ……よし、ここは後退だ。このシャンタウ星域は多大の犠牲を払ってまで死守する価値のあるところではない。奪回するのはローエングラム侯にやっていただこう」
・・・・・
シャンタウ星域での戦いに勝利したメツカッツがガイエスブルクへ帰還すると、リッテンハイム候の一派の姿が見当たらず、艦影も随分と減っていた。
聞けば、リッテンハイム候はブラウンシュバイク公と仲違いし、50000隻の艦隊を率いて辺境星域の奪還に向かったのだという。
それを追って、ナトルプ上級大将とドロッセルマイヤー中将が30000隻を率いて辺境星域へ向かったとか。
メルカッツには、何故ナトルプほどの男がこのリップシュタット連合軍に参加しているのか以前から疑問だった。
自分と同じように人質でも取られたか……とも考えたが、あるいは、この行動にこそ彼の真意が隠されているのかもしれない。
いずれにせよ、この状況は良いものではい。
メツカッツはこの後の戦況を鑑み、深い溜息をついた。
* * *
辺境にあるキフォイザー星域。
ここで、リッテンハイム候率いる50000隻の艦隊と、キルヒアイス中将を総司令官とした40000隻の艦隊とで会戦が行われた。
原作とは違いキルヒアイスはこの艦隊の総司令官ではあるものの階級は中将でしかないため、原作のように僅か800隻で撹乱するとった戦法はとらなかったが、戦いの過程こそ違ったもののキルヒアイスたちの勝利という結果は動かなかった。
キルヒアイス艦隊が敗走するリッテンハイム侯爵の旗艦オストマルクを追って追撃を仕掛け、ルッツ、ワーレン艦隊もそれに続こうとした……その時。
「右方向に艦影、数…およそ30000!」
「30000隻!?」
「敵の艦影に、ヴィルヘルミナ級戦艦フェルゼンを確認」
「フェルゼンだと!? ということは、あれはグスタフ・フォン・ナトルプ上級大将の艦隊か。ならば、敵2個艦隊のもう片方はドロッセルマイヤー中将だな。彼は確かナトルプ上級大将の教え子だったはずだ」
「しかし、今になって何故………」
「おそらく、リッテンハイム候は囮だったのだろう。確実に我々を仕留めるためのな」
「…………」
「だが、簡単にやられてやるわけにもいかん。現時点では数において劣っているが、キルヒアイス中将が戻られれば数の差は逆転する。敵もおそらくそれは分かっていよう。短期決戦で来るはずだ」
・・・・・
「ドロッセルマイヤー、ルッツ艦隊を足止めしておいてくれ。私はワーレン艦隊を攻撃する」
「はっ、了解しました」
「ファイエル」
戦況は最初からルッツ、ワーレン艦隊に不利であった。
艦数は、彼らが各13000隻であるのに対し、ナトルプ、ドロッセルマイヤー艦隊は各15000隻と数の上で劣っており、しかもリッテンハイム侯の軍と一戦交えた後である。
しかも、相手は名将グスタフ・フォン・ナトルプである。
ミュッケンベルガーやメルカッツと同等の戦歴を誇り、腕も確かな歴戦の強者だ。
ラインハルトがいなければ、ミュッケンベルガー元帥の後任として宇宙艦隊司令長官に就任していたのではないかと噂されるほどであり、その長い戦歴の中で培われた手腕は、未だルッツやワーレンの及ぶところでは無い。
「よし、ハプスブルク大公から預かったこの新兵器を試してみるとしよう。ゲルマン砲、発射用意」
ゲルマン砲は、ハプスブルク領で建造されているとある艦の主砲の試作砲である。
移動用に推進装置が付けてあり、ある意味砲艦と呼ぶこともできるだろう。
その威力はハプスブルク大公も太鼓判を押しているほどなのだが、一撃放つと砲自体も吹き飛んでバラバラになってしまう欠点があった。
「照準、ワーレン艦隊中央。撃てぇー!」
ゲルマン砲から放たれたビームはワーレン艦隊を貫き、大きな打撃を与えた。
しかも、直後にナトルプ艦隊が急襲してきたことも混乱を助長させ、ワーレン艦隊は一方的に叩かれる展開となった。
このままいけばワーレン艦隊の敗北は確実であったが、リッテンハイム軍の追撃に当たっていたキルヒアイス艦隊が救援に駆け付けたことで、どうにか艦隊を立て直すことに成功した。
キルヒアイス艦隊が参戦したことで戦線は一時膠着したが、数の上では互角でも、連戦で武器弾薬が少なくなった彼らは消耗戦になると不利である。
また、リッテンハイム軍の残存艦艇が態勢を立て直す動きを見せたため、これ以上の継戦は不可能と判断したキルヒアイスはルッツ、ワーレンと共に撤退した。
「撤退したか、もう一門のゲルマン砲は使いそびれたな……まあ良いか。いずれまた使う機会もあろう」
残ったナトルプとドロッセルマイヤーは、リッテンハイム軍の残存艦艇32000隻を集め、ガルミッシュ要塞の人員(リッテンハイム候は原作と同様に死亡)を収容すると、何処かへ去って行った。
そして、彼らがガイエスブルク要塞に戻ってくることは無かった。
* * *
ガイエスブルク要塞ではラインハルト軍の挑発に堪えかねた貴族たちがメルカッツの制止を無視して出撃し、まんまと釣られた貴族たち(盟主であるブラウンシュバイク公含む)はラインハルト軍の総攻撃を受け壊滅寸前となったが、メルカッツの救援によってなんとか死地を脱した。
<アドルフ>
「計画は今のところ順調か………」
いくら原作知識があると言っても、ここまで上手くいくとは……。
シュトライトとフェルナーは此方側に取り込んだし、シュターデンは艦隊の半数8000隻を持ってこちらに合流。
リッテンハイム候の敗残部隊とガルミッシュ要塞駐在の人員の確保も成功した。
ナトルプとドロッセルマイヤーは良い仕事してくれたよ。
態々、貴族連合に付かせた甲斐があったな。
これで、兵力では完全にラインハルトを上回った。
人材面でも負けていない。
「あまり順当過ぎるとかえって不吉だな」
おっと、これは死亡フラグか?
今のナシ。
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