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レーヴァティン

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第百七十一話 見破った伏兵その十

「つまりだ」
「上様もですか」
「危うい」
「そうなりますか」
「流石に俺は討たれはしないがな」
 その腰の神器を見て言う。
「これがある限りな」
「如何に大軍といえど」
「それに囲まれようとも」
「それでもですね」
「戦い生きてみせるが」
 そうするがというのだ、自分自身は。
「しかしな」
「軍は敗れる」
「そうなってしまいますね」
「この軍勢は」
「そうなるからだ」
 だからだというのだ。
「俺としてもだ」
「それはですね」
「させないですね」
「絶対に」
「そうだ」
 何があってもというのだ。
「だからだ」
「この様にですね」
「敵に勝ちましたが」
「あえてすぐに追わず」
「夜も休みますね」
「用兵は迅速にだが」
 それに限るがというのだ。
「拙速は愚かだ」
「素早くとも慎重に」
「そうあるべきですね」
「用兵というものは」
「だからだ」
 それ故にというのだ。
「今はだ」
「あえて速く追わない」
「そうしますね」
「そのうえで甲府城に向かいますね」
「このまま」
「そうする、伏兵がいてもだ」
 それはわかっていてもというのだ。
「隙は見せない、そして来るならな」
「返り討ちにする」
「そうしますね」
「来たならば」
「そうする、では夜はだ」
 即ち今はというのだ。
「守りを固めておくぞ、そして順番でだ」
「寝ますね」
「そうしますね」
「そちらもですね」
「することだ、寝ないとだ」
 見張りも大事だがこのこともというのだ。
「かえって満足に戦えない」
「寝不足ではどうにもならないですね」
「腹が減ってもですが」
「やはり寝ないと」
「どうにもならないですね」
「だからそちらもだ」 
 睡眠もというのだ。
「いいな」
「はい、順番にです」
「皆寝かせます」
「そして我々も」
「そうすることだ、俺もだ」
 英雄自身もというのだ。
「寝る」
「そうされますね」
「上様も」
「今宵は」
「さもないと俺もな」
 英雄は自分のことをさらに話した。
「いざという時満足に働けない」
「上様といえどもですね」
「寝ないとですね」
「よくないのですね」
「そうだ、人間だからな」
 英雄は自らを決して神なぞとは言わない、常に自分を人間として考えそうして動いているのである。 
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