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戦国異伝供書

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第百四話 まずすることその二

「江戸城であるが」
「あの城ですか」
「随分酷い城ですな」
「まるで廃城です」
「うむ、しかしこの辺りは平地でじゃ」
 それでというのだ。
「川が多いな」
「だからですか」
「よい城になる」
「そうなのですか」
「そしてこの辺りはしかと政をすれば」
 そうすればというのだ。
「かなりよくなるかもな」
「左様ですか」
「今は何もない場所ですか」
「ただの沼と草原です」
「その集まりですが」
「町もよいものを築くことが出来てな」
 そしてというのだ。
「田畑もな」
「よいものが出来ますか」
「この辺りは」
「そうなのですか」
「武蔵全体がな」
 江戸の辺りだけでなくというのだ。
「そうなるかもな、だからな」
「それで、ですか」
「この辺りをですか」
「しかと治める」
「そうすべきですか」
「そうも思った、武蔵は相模や伊豆よりもよい国じゃ」
 だからだというのだ。
「じっくりと政をしたいな」
「そうですか、しかし江戸城はです」
「小さくあちこち壊れていてです」
「まさに廃城です」
「そうした城ですが」
「それでもな」 
 江戸城はというのだ。
「あの修繕をして大きくすればな」
「かなりの城になる」
「そうなりますか」
「あの城も」
「若しかしたら」
 氏康はその目を鋭くさせて言った。
「あの城は小田原城よりもじゃ」
「大きな城になる」
「そうなるかも知れませぬか」
「あの城は」
「うむ、だからな」
 それでというのだ。
「しっかりと築くべきやもな」
「左様ですか」
「それではですか」
「この辺りも治めていきますか」
「そうもしていきますか」
「そう考えておる、そして我等はこれからな」
 氏康は今度は武蔵の北西の方を見て家臣達に話した。
「河越じゃ」
「あの城ですな」
「あの城を手に入れて」
「そうしてですな」
「武蔵の覇を確かなものにすべきですな」
「そうじゃ、そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「武蔵を完全に手中に収め」
「そこから両上杉をさらに追い詰めますな」
「そうすべきじゃ、両上杉を倒し」
 そしてというのだ。
「武蔵にじゃ」
「上野ですな」
「あの国もですな」
「手中に収めていきますな」
「そこから下野等や常陸もとなるが」
 さらにというのだ。 
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