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転生したらまたしても猫娘だった件

作者:炎の剣製
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NO.011 外伝・ヴェルドラの観察日記1

 
前書き
更新します。 

 



我は暴風竜ヴェルドラ。
世界に四種しかいない竜の一種である。
色々と巡り合わせがあり、いまはこうしてリムルと友達になり、盟友となっておる。
リムルが我が封印されていた洞窟を出た後にゴブリン達の願いに応えて「守ってやる!」と答えたところまでは良かったともいうな。
そこにふらりとやってきた獣人がきてから我の勘が何やら悲鳴をあげだしおった。
ただの獣人になにを怯える事がある?と我の本意がそう語っておったが、

なんだ?この小娘から出ておる聖なる気配は!?

まるであの時の勇者を彷彿とさせるほどのものではないか!
リムルはリムルでこの小娘の気配にあんまり気づいていないのか呑気に、

「猫娘!? かあいいなー……」

とかほざいておる。
誰か我のこの気持ちを代弁してくれないであろうか。
なんというか……この小娘、魔素量がかなりあると思うのだが……。
いまのリムルを上回っているのは確かだな。
我を取り込んで魔素量がえげつなくなっているはずのリムルにせまるものがあるというのはどんだけであろうか?
それほどに我はこの小娘の事を警戒している。
はたして敵か?それとも味方か?
おそらくだが今のままであったらリムルは負けてしまうかもしれないと、我にしてもありえない感想だが浮かんできよる。

それで我は一人警戒していたのだが、
リムルはやはり大胆な性格なのだろう、

「俺、スライムのリムル。悪いスライムじゃないよ?」

と、普通に自己紹介をしておった。
するとその小娘はすぐに笑みを浮かべていた。
ふむ? どうやらリムルの反応がよかったのか、小娘とはすぐに打ち解けたようだな。
リムルもそれですぐに仲間になってほしそうな感情が窺い知れるが、我としてはまだ警戒態勢をしていようとするか。
なにもできないのが口惜しい。
そしてその小娘は言った。

『まだこの世界では名前は持っていない』
『いまはイズクと名乗ってる』

と。
意味合いとしては正しいが、自分で名を名乗るというのはこの世界の魔物にしては珍しいのではないか?
正式な名ではないらしいが、それはすでに名付けの範囲だと思うのだが。
まぁ、名乗っているだけならまだ力は上がっていないだろうよ。
それでもだ。
正式な名はないというのに、我が見ただけですでにこれほどの力を内包しているというのはすごいことであるな。




それからリムルとイズクはゴブリン達に村を案内されていき、そこで怪我人だらけが寝かされているテントに案内されて、リムルは事前に洞窟で作っていたのか回復薬を使って一匹のゴブリンを完全回復させていた。
すごい効果であるな。
おそらくこれはハイポーションではなく、フルポーションに近いものではないか?
さすがリムルだな。

しかし、次の瞬間にはまたこの小娘イズクに驚かされた。
リムルの薬と同等の治癒スキルで幾人もの怪我人の傷を瞬く間に塞ぎ追った。
それだけではない。
我の勘違いでなければ治癒のスキルを使うために使用したであろう魔素が減るどころか逆に増えておる。
これはどういうことであるか?
特殊なスキルを持っているという事なのか?
我の探求心が妙に騒ぎおる。
この小娘のスキルの事を知りたいと……。




それからリムルが先導して村の家に使われていた木材で柵を作って粘性や鋼製の糸などを使い、迎撃態勢を整えていく光景を見せられて、なるほど……こういう風にしてリムルだけが戦わずにゴブリン達にも戦わせるという事か。
リムルならおそらくは本気を出せばただの狼共などすぐに殲滅できようものぞ。
リムルは策士でもあるのだな。

しかし、いざ狼共が攻めてきたときには最初はうまくいっていたが、少ししてゴブリン共の悲鳴が聞こえてきてリムルは焦り出す。
どうやら別働隊がいたようであるな。
だが、それもあの小娘のおかげなのかなにやらひと際大きい叫び声が聞こえてくるとあちらの方で動いていた気配が一斉に途絶え追った。
殺してはいないのだろうが、それでも無力化したのであろう。
リムルもリムルで狼共のボスを打ち倒し、さらにはボスを吸収して擬態して威圧を放ち、てっきり逃げ出すものと思われた残りの狼共はなんとリムルに服従してしまった。
まこと魔物はこういう時は強き者に従うという習性があるが、うまいこと事が運んだようでよかったものだ。
しかし、その後になにやら小娘によってリムルはスキルの使用を制限されてしまった。
むー……なにやら面白くない展開であるな。
スキルは使ってこそのものなのに、あまり使うなというのはこれ如何に?
我としてもこの小娘に不満を感じ始めたぞ。



そう思っていた時も我にはあった。
その夜中の時にまた小娘がやってきて今度は何を話すと思ったら、なんとリムルに謝罪をしてきたではないか。
どのような心変わりをしたのかは知らないが、先ほどの発言も撤回してスキルも自由に使って構わないという。
なんぞ変化があったのか俄然我も興味が湧いてきた。
それでリムルは小娘にとあることを聞いた。

「でも。なんかイズクって年上な感じがするよな。ちょっと活発だけど冷静だし、牙狼族の奇襲も読んでいたみたいだし」
「まぁ。生前の勘って奴かな」
「生前? ってことはやっぱりイズクも!」
「ということはやっぱりリムルさんも?」
「「転生者!!」」

というやり取りを聞いていた我はさらに驚いた。
まさかこの小娘も異世界からの転生者だったとは。
こうも目新しい出来事が連続で続くと我も驚愕ものよ。

しかも、リムルとの会話に微妙なズレが生じているのを不思議がってリムルは小娘の世界について聞いていくとなんとまたしても面白いことが判明しおった。
なんと、リムルとは違う世界の出身らしく、世界総人口の8割が我らのスキルとは別物である『個性』と呼ばれるものを宿していてヒーローとヴィランに分かれて活動しているという不思議な世界であった。
その中でこの小娘……いや、もうイズクでよいか。
イズクの生い立ちを聞いていくうちに我も少し感傷に耽る気持ちになっていた。
無個性として生まれてしまい、社会から孤立しがちだったというが、フォウという猫と出会う事によってイズクの運命は一気に変化し、オールマイトという大物との出会いで個性を開花させてヒーロー社会に羽ばたいていく。
そしてフォウという猫の業をともに背負い、生涯を捧げて人助けを続けて天寿を全うしたと思ったら……この世界にもともと持っていた個性に、友人達からもらった個性も世界の言葉で統廃合されて、数々の強力なスキルとなっていまのイズクが出来上がっているという……。
それを聞いた我の感想は、一言でいうとすごいというしかなかった。
そして実感した。
イズクが放つ聖なる気配の正体を……。
これは生前の功績がその身に宿っているという事なのだな。
我、納得。
さらにはその中でも強力なスキルなのがスキルを新たに増やすことができる『妖術』に、イズクが成す事すべてに適応される無限に成長できるスキル『無限成長』。
え、なにそれ羨ましい……。
下手すると無限に魔素量も増やせるとかいうものではないか!
なんてえげつないスキルを持っておるのだ!
さっきに魔素が増えたのはこれが原因だったのか。
さらにはこの我をしても未知数であるスキル『仙術』。
我の予測では『治癒者〈イヤスモノ〉』として変化したフォウが教えてくれた使用方法以外にもとてつもない力を秘めているに違いない。
まだ名無しでこの状態なのだぞ?
もし、名前を得てしまったらどんな事が起きる事か……。

と、思っていたら突然の虚脱感!
リムル、もしや貴様!?
思った通りリムルはゴブリン達に名付けをしておる。
名付けというのはとても大変な行為なのだぞ!?
しかも我からも勝手に魔素をぶんどっておる。
それでなんとかそれを阻止しようと思って努力していたが、リムルの動きは止まらない。
それでおそらく牙狼族の息子に名付けをしようとしている時であった。
イズクがある提案をしてきた。
その内容とはイズクの魔素をリムルに渡すというもの。
え? それって名付け以上に自殺行為なのではないか?
いや、そうだ。『無限成長』でさらに倍になるのであった!
そこも計算しての発言か!
リムルもそれでお構いなく魔素を受け取っているし。
リムルの魔素も全快したし、魔素の上限も上がったので良かったことであろう。
しかし、そこでただならぬことが起きおった。
なんと!
我にまで作用したようで我の魔素も少し回復しただけならまだしも、リムルと我となにかしらの接続をしてしまい、リムルと同格の存在になりおった!?
いかん。いかんぞリムル。
こやつの成長はなぜかはしらんが将来的にマジで危険かもしれない!
と思ったらリムルはイズクに正式に『イズク』という名を与えた瞬間であった。
さっき回復したはずのリムルの魔素量が一気に全部持っていかれてスリープモードにまで追い込まれておった。
我も思わず意識を失うかと思ったわ。
イズクめ。こやつ本当にとんでもないぞ……。
さきほどのランガに使用した魔素量を比ではなかった。
我のも含めてその5倍くらい持っていきおった。
これはとんでもない進化をするぞ。
イズクの行動には今後も静観していかんとな。






それからリムル達はドワーフの国に向かうみたいだが、なにやら面白そうなものが起こりそうだな。楽しそうであるな。


 
 

 
後書き
箸休めです。
ヴェルドラ視点であらためてイズクの脅威度査察です。


それでは、ご意見・ご感想・誤字脱字報告をお待ちしております。
贅沢は言いません。ですので厳しい意見でも構いませんので感想を下さればそれだけやる気に繋がりますのでよろしくお願いします。 
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