提督はBarにいる。
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惚れた腫れたの話・2
「ほらほら、ワタシ話したんだから次は誰デース!?」
急に恥ずかしくなったのか、顔を赤くしながら次の話を急かす金剛さん。順番的に言えば金剛さんの右隣にいる私か、テーブルを挟んで反対側にいる飛龍さん辺りだろうか。
「あ、じゃあ私が」
そう言って手を挙げたのは飛龍さんだ。
「でもなぁ……失礼だけどニ航戦の二人は、ねぇ?」
「何となく、理由解っちゃいますよね」
「え?なになに、私と飛龍が提督に惚れた理由解っちうの?」
「「「「提督の料理が美味い」」」」
「「ちょっと!失礼過ぎない!?」」
「ハイハイ、声が大きいヨ2人共。静かに……ネ?」
「は~い」
「ごめんなさい……でも失礼しちゃう!」
蒼龍さんはまだぷんすこ怒っている。
「でも、幾らかは理由に含まれてますよね?」
「う~ん、まぁ、確かに……」
「理由の4割、いや、7割位は……」
「「「「やっぱり」」」」
やっぱり胃袋を掴まれたのが主な理由らしい。まぁ、解ってましたけど。
「あ、でもでも!決め手は顔だよ、顔!」
「え、顔?提督ってこう言っちゃあ失礼だけど、強面じゃない?」
「え~、そうかなぁ?男らしくて良いと思うけどなぁ」
と首を傾げる飛龍さん。その意見に頷いているのは金剛さんだけな辺りで察してほしい。
「あ~、この娘ファザコンで年上好きだから。提督なんかど真ん中ストライクだと思うよ?」
そう言ったのは蒼龍さん。でも私たちは艦娘だ、第二世代型の艦娘に明確な『親』は居ない。なのにファザコンとはこれいかに。
「あぁ、ファザコンって言うか好みのタイプが多聞丸だから」
「「「「あ~、そういう」」」」
蒼龍さんからの更なるフォローで皆納得。飛龍さんに縁深い多聞丸こと山口多聞提督が、飛龍さんの理想のタイプらしい。
「厳しいけど優しいし、ぐーたらしてそうに見えて実は勉強家だしね。そう言われると似てるかも」
「鬼教官で健啖家って所も似てますね、ねっ?」
「まぁ、女好きって所はちょっとアレだけど……」
「多聞丸は愛妻家だったもんねぇ」
「でもさ、提督のあの体力を一人で相手しきれる?」
「「「「「う~ん、無理!」」」」」
そこだけは満場一致だ。
「飛龍さんは解ったけど、蒼龍さんは?」
「え、私?私はねぇ……」
「あ~、この娘はもっと直線的よ。この娘こう見えて加賀さんに負けない位のムッツリスケベだから」
「ちょっと飛龍!?」
「ほほぅ?」
「それはそれは」
「是非とも聞かないとデスねぇ~w」
「うぅ……」
顔を真っ赤にして俯いてしまった蒼龍さんは、その可愛らしい童顔も相俟って大変に可愛らしい。思わず頬擦りしたくなる。そこに、あのもちぷにドスケベボディが付いているのだから反則だと思う。
「あ、あのね?提督のご飯が美味しいっていうのも凄く好きなポイントなんだけど……それよりも、『アレ』が凄く気持ちいいっていう所が私が惚れた所かな」
「ドスケベ」
「変態」
「性豪」
「うしちち」
「ひどっ!?」
まぁ、ある意味欲望に忠実っていうのはあの提督とは相性が良いのかも知れませんが。
「だってさ、凄くない?提督のテクニック」
「ま~、確かにね~」
「大変気持ちよくしてもらってます、ハイ」
「体力バカだからガンガン突いて来るだけかと思いきや、そんな事は無いからね」
「キスだけでイかされる時とかあるしね」
「ワタシ、毎回気絶させられマース……」
「うえっ!?それマジ?」
「マジもマジデース!毎回ぐちゃぐちゃデスよ……」
「うわぁ……何て言うか、うわぁ」
「御愁傷様、でいいのかなぁ?」
「まぁ、本妻には提督も手加減できないって事なのかな?」
「気絶するほど激しく……されてみたいような、されたくないような」
「とりあえず、蒼龍は胃袋もアッチも掴まれちゃったと」
「ちょっと表現が生々しくないかなぁ、飛龍さん!?」
その言葉をキッカケに、蒼龍さんと飛龍さんがじゃれつき始める。相変わらず仲の良いことで。
「じゃあ順番的に私です……よね?」
そう言って口を開いたのは由良さん。この面子の中ではケッコンしたのが比較的遅い方だ。
「提督って、仕事がデキる人じゃないですか。面倒臭がりながらテキパキ仕事をこなしていくあの後ろ姿がカッコイイなぁって……その」
「惚れちゃったと?」
私が尋ねると小さくコクリと頷く。耳まで真っ赤にして俯いてしまったその顔は、可愛らしいというより艶っぽい。
「あ~、でも解るかも」
「仕事のデキる男ってカッコイイよね」
「仕事してる時もいいけどさ、料理してる時もカッコ良くない?」
「「「「「「わかる」」」」」」
ちょっと表に出せない様な仕事をしている時もありますが、基本的に仕事をしている時って生き生きとしてるんですよね、提督って。
「じゃ~次は衣笠さんだね!って言っても、皆知ってるとは思うけどw」
そう、衣笠さんは昔から一目惚れだと公言していて積極的に提督にアプローチしていた娘だ。それが漸く念願叶って、最近ケッコンカッコカリを果たした。あの時は皆で祝福してあげたっけ。
「ねぇねぇ、提督の何処に一目惚れしちゃったワケ?」
「え~、わかんないよぉ。着任の挨拶に行って、その場でビビッと来て、その場で『付き合って下さい!』って言っちゃったんだもん」
「うわ~、大胆!ってかもう漫画とかドラマの世界だね!」
「その感覚は味わった事無いからなぁ……どんな感じなんだろう?」
「えぇとね、提督を見た瞬間に身体の中をビリビリって電気みたいのが走って、そこから心臓の鼓動が早くなってね?顔が熱くなってきて……」
「あ~、ゴメンゴメン。無理に言葉にしなくてもいいから……」
「まぁでも、一目惚れした初恋の相手と結ばれるってロマンチックだよね」
「確かに。恋愛らしい恋愛してる娘って私達の中には少ないからねぇ」
「鎮守府という環境が特殊ですから、仕方無いのでは?」
「まぁ、それもそうか。じゃあ最後に大淀さんね」
そう話を振られて、改めて考えてみる。どうして私は提督とケッコンカッコカリをしたのだろう?
鎮守府の中でも、提督との付き合いが一番長いのは私と明石、それに間宮さんの3人だ。間宮さんは大分前に自分から提督を襲って、既成事実からケッコンをもぎ取ったとかなり話題になっていた。本妻の金剛さんは提督の方からアプローチされてケッコンカッコカリどころか本物の結婚まで果たしている。それ以外でも、ほとんどのケッコン艦は提督に好意を抱いている。対して私は提督に明確な好意を示した事がない。好きか嫌いかと問われれば好ましい方ではある。付き合いが長いだけで、そこから恋に発展する様な事は無かったハズだ。
「……あれ?何で私、提督とケッコンしたんでしょう?」
「え~!?大淀さんボケてるの?」
「いやいや、違いますよ!でも私、提督の側にずっといただけで、提督に惚れたりとかそういうのは……」
「だから、それが答えなんじゃないデスか?」
「え?」
そう言って口を開いたのは金剛さん。
「darlingは凄く好き嫌いのハッキリした人デス。幾ら本土との繋ぎ役って仕事があっても、それは代わりが作れる役割デス。違いますか?」
言われてみれば確かにそうだ。初期の頃は人手不足もあって私がやっていたけれど、人手が増えてからも提督は私を事務系の仕事から外そうとはしなかった。
「でもそれは、私が仕事を出来るから……」
「それでも、darlingは嫌いな人とは仕事をしたがりませんヨ?つまりdarlingはよどっちの事を憎からず思っているのデース!それがLOVEなのかLIKEなのかは解らないけどね?」
「だね。仕事上の関係でも、長くいると側にいないのが変な感じになったりするし」
「職場恋愛とかその典型ですよね、ねっ?」
「よどちゃんはその辺どうなの?自分としては」
「私も……提督の側に居られないのは変な感じですね。かれこれ20年以上はお側でお仕事してますし」
「あ~、側に居るのが自然すぎて馴染んじゃったんだね」
「男女の前に仕事仲間が来ちゃってる感じか」
言葉にされると解る。確かに提督を異性として見るよりも、仕事の上司として見ている自分がいる。この薬指の指輪も、信頼の証として受け取ったような気がする。
「まぁ、人の恋路はそれぞれデス。スタートはバラバラでもゴールは一緒ですからネ」
そう言って金剛さんが紅茶を啜る。
「さて、仕事に戻りましょう」
時計を見れば既に午後4時。かれこれ1時間も休憩していた事になる。
「Oh!ちゃんと仕事しないとdarlingにお仕置きされちゃいマスね~」
「提督のお仕置き……ゴクリ」
「なんかやらし~ぃ」
「そういう意味じゃないデスからね!?」
ギャーギャーと喚く金剛さんとニ航戦の二人。まぁ、提督を取り合いになって内ゲバするよりは、このくらいの方が良いのかな。
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