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転生したらまたしても猫娘だった件

作者:炎の剣製
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NO.004 忠告と特訓

 
前書き
更新します。
訓練回ですね。 

 




それからトレイニーに案内されて結構神聖な場所へとやってきた出久はというと、

「おそらくですが、今のイズク様がジュラの森を普通に歩くのは魔物たちにとって悪影響になるかと思われるのです」
「どうしてですか? 魔力感知でもうあんまりオーラも漏れ出ていないとは思うんですけど……」
「いえ、まだ転生してきたのに一日も経過していません。ですからイズク様はまだこの世界の常識を知りません。わたくしが懸念をしているのは生前は人々を救い続けてきたイズク様が、弱者は淘汰され強者が睨みを利かせている魔物社会に適応できるかの心配をしているのです……一応聞きますが人を殺した経験などはないのでしょう?」
「うっ……はい。救いはしても人殺しをしないのはヒーローの条件でした。さもないとすぐにヴィランになってしまいますから」

そう、出久はその事を前の世界で嫌という程実感している。
ヒーローは人殺しを禁忌とされていてあくまで裁くのは警察の組織であり、半面ヴィランはそんなヒーローの常識を逆手にとって時には「ヒーローが人殺しをするのか?」と脅してそんな自分らは平然と人を陥れて殺す……。
そのくらいに世界は混沌に満ちていたのだ。
個性が出始める前の世界をお話で聞いたことがあるが、それでも人々は欲望を抑えてなんとか日本は比較的事件が少ない国だと言われていた。
だが、個性の出現とともに人々を縛る枷は壊れてしまい欲望が満ち溢れる世になった。
その時代を象徴するのはやはりオールフォーワン。

「ですので酷な話ですが信頼できる居場所ができるまではイズク様は森を出歩かないほうがよろしいと思うのです」
「お話はわかりました。ですけど、それだと僕はこれからどうすればいいんですか? その信頼できる人が来るまで待つのは別に構いません。でも、殻の中に籠るのもなにか違う気がするんです」
「わかっています。ですからまずはイズク様はご自身のスキルをしっかりと会得して、いつか来るであろう信頼できるお方が現れるまでに覚悟を決めておいてほしいのです」
「覚悟……」

覚悟とは……?

「それって、まさか……」
「はい。イズク様にとってとても辛いお話ですが、殺し殺される覚悟です。この世界はひとたび争いが起きればそこに法の秩序など存在しません。
あるのは勝てば正義、敗者は淘汰される……そしてジュラの大森林の周辺には様々な国がありますが、けっして一枚岩ではなく常に睨みを利かせているようなものです。
幸いジュラの大森林はいまは暴風竜ヴェルドラ様の加護がありますからかろうじて争いは起きていませんから大きな戦いに巻き込まれることはないでしょう。
それでも弱い魔物は狩りの対象にされることはよくあることです」
「…………」

出久は無言で決して誇張でも何でもないトレイニーの話をじっくりと聞いていた。
今後の役に少しでも立たせられるように。


「…………ここまで言えばもうイズク様も分かると思いますが、もうイズク様の元の世界の常識などこの世界では通用しません。当然話し合えば和解できることもあるでしょうが魔物達はそう簡単に話し合いに応じてくれることも稀でしょう。
イズク様のスキルで服従させればなんとかなるでしょうが、まずは腰を据えてこの世界を知る事から始めてみたらいかがでしょうか。幸いわたくしどももお力添えできますので、時間をかけて決心がつきましたらここをでて魔物達と共存していくのもありだと思います」
「そうです、ね……」
【イズクー、今は耐えの姿勢だね】

なんとか納得していた出久とフォウであったが、それはそれとしてトレイニーは出久に対してここまで過保護になっているのには理由があった。
トレイニーのかつての主に似て聖なる気配を持っている出久の事をどうしても放っておけず、そしてその聖なる光を今はまだ濁す行為はしたくないというのが本心でもあったからだ。
そんなトレイニーの思惑通り、出久はしばらくこの場でスキルの修練や世界について学ぶことに専念する事になった。
出久の力は下手したらどこかの国に目を付けられてしまうかもしれないくらいに貴重で強力だ。
だからまずは自覚してもらわないとトレイニーとしても出久をただで野放しにはできないという事であった。








―――――それから出久の修行が始まった。



スキル『仙術』を使い、雷雲を発生させて自らに落とすというある意味荒業。
普通ならショック死ものだが、上鳴の個性である『帯電』も能力はしっかりと残っているためにまずは貯蔵量を増やすという試みをしていた。
幸い『無限成長』で電気の蓄積量はどんどんと増えていくので「ウェーイ」という事にはならない。
さらには使えば使う程魔素量もどんどんと増えていくために本当の意味で一石二鳥を実現している。
上鳴の時の様に大容量バッテリーを使わずとも自家発電できるようになった出久はあらゆる意味で上鳴を上回っていた。

【イズクー。なんかスキル『帯電耐性』が身に着いたよ】
「まぁそりゃそうだよね……」
【他にも『氷雪耐性』に『炎熱耐性』、『水耐性』も身に着いたし、あとは風耐性とかも覚えたらいいかもねー。『妖術』で増やす?】
「いや、今はその場その場で増やしていこうと思う。やっぱり実戦で体験した事を教訓としてすみやかに対処した方が身に着くのが早くなると思うし」
【確かにねー】

出久は生前からの特訓の成果で個性『猫又』に関連するスキルに関しては大体すぐさまコントロールできる。
しかし、みんなからもらった個性の操作に関しては絆としてもらっただけで訓練などはしていないために、今から習得していくスタイルなのだ。
特に今は炎と氷のレーザーに関して考え込んでいる。
うまくすれば二つのレーザーを集束して大技を放つことも可能かもしれないからだ。
技が完成して命名するとすれば『ビッグ〇ン・アタック』だろうか……?
そしてさらにここに帯電している電気を合わせれば炎・氷・雷の三つの属性が合わさったレーザーが放てるかもしれない。
他にも『妖術』を使えばやりようはいくらでもあるので出久としては生前に書いていたヒーローノートの記憶をフォウから脳内に再現してもらって訓練法などを学んでいった。




…………そんな、出久の訓練している姿を遠目で見ていたトレイニーはというと、

「(まさか……イズク様はそのうち魔王にも匹敵するほどの魔素量と強さを獲得するのではないでしょうか……?)」

と、成長著しい出久に対してある意味で畏怖の念を抱いていたり。
同時に、

「(だからこそ、わたくしがしっかりと正しい道へと先導して差し上げないと……ッ!)」

と、この世界の知識を教える際にはしっかりとしないとと思っていた。
ただでさえ出久は真面目で勉強熱心な性格だから余計にトレイニーの教育者としての顔が出ているとの事。
……さらに付け加えると、出久の身体的成長は推定10歳くらいから全然伸びていないために小さい子供を育てている感じみたいで母性を刺激されるとかなんとか……。
ただ、トレイニーは出久の話を聞いているはずだから忘れていると思うのだが、出久は生前に子を産み親になって育てるなどしているために……子育て経験に関してはトレイニーよりあったりなかったりするのだ。
そこはもう本当に言わぬが花である。





…………それから出久は特訓を半年以上続けていたある時であった。

「ッ!?」

突然トレイニーの顔が驚愕に染められていた。

「トレイニーさん!? どうしましたか!!」
「あ、その……暴風竜ヴェルドラ様の気配が消えてしまったのです……」
「ヴェルドラ様って……世界に四種しかいない魔竜で今は洞窟に封印されているって話の……」
「はい。そのはずなのですが……なにかが起きたのかもしれません。イズク様、申し訳ありませんが教育に関してはここまでになりそうです。ヴェルドラ様という抑止力が消えたことによりジュラの大森林に生息する魔物達は動揺し、領地争いが起きるかもしれません。さらには……」
「諸外国や魔王達も動き出すかもしれない、と……」
「はい。よく学んでいますね。その通りです。ですからイズク様には申し訳ないのですがスキルの訓練もだいたい済んだでしょうし、視察の意味も込めて魔物の村などを見て周ってほしいのです。なにごとも経験ですね」
「わかりました」
「あ、ですがあまり大きな行動はなさらない様に……。目立てばそれだけ敵を生むことになるから」
「はい」
「そして、もしかしたらこのヴェルドラ様の消失はなんらかの力が働いていると思うのです。わたくしも姉妹達を集めて情報を集めますので、イズク様もくれぐれもお気を付けください」
「はい。トレイニーさん、今までお指導ありがとうございました」
「そんな……勤勉なイズク様だったからスムーズにできたのです。わたくしも貴重な経験が出来ましたのでお互いさまという事にしておきましょう」
「そうですね」

それで出久は神聖な森からでることになり、トレイニーに見送られながらもこれからの行動について考えるのであった。

【それじゃイズク! はりきっていこう!】
「そうだね、フォウ」




……そして、出久はのちほどにとあるスライムと出会う運命にある。
その結果、どう変化するかはまだ誰も分からない。


 
 

 
後書き
次回から原作に入りますかね。

現状は“まだ”ヴェルドラを吸収したリムルの方が魔素量は上ですかね。
技量に関しては出久にはおそらく手も及ばないですけど……。 
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