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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百八十三話 テストも終わってその九

「ですからどうかです」
「努力をしていくことですね」
「私はそれを願っています、何も努力しないでは」
「何にもならず」
「幸せにもです」
「なれないですね」
「ですから」
 それでというのだ。
「私もしているつもりですし」
「お料理にですね」
「家でもです」
 家庭でもというのだ。
「幸いにしてです」
「努力していますか」
「その機会を貰っていますので」
「機会ですか」
「結婚して子供が出来て」
 そうなってというのだ。
「その機会を得ていますので」
「家庭を持つことはですか」
「よき夫、優しき父になる機会をです」
「貰っていますか」
「神様から」
 まさにというのだ。
「そうしてもらっているとです」
「小野さんはお考えですか」
「左様です、結婚し父親となり子供達が成長するまで生きているのですから」
「生きている?」
「はい、人の一生程わからないものはありません」
 ここで小野さんの言葉はしんみりとしたものになった、そうしてそのうえで僕にこうもお話してくれた。
「今日元気でも明日はどうなるか」
「わからないものですね」
「義和様もそう思われていますね」
「明日の朝亡くなるとか」
 心臓麻痺で亡くなる人もいたりする、昨日まで元気だったのになんて言葉はその時に響いてしまうものだ。
「事故もありますね」
「人間五十年でもです」
「五十年生きられない人もいますね」
「はい、それも人生です」
「そうですね」
「あんないい人はいなかった」
 小野さんはこの言葉も出した。
「この言葉は亡くなった人に向けられるものですね」
「そう言われることは有り難いでしょうね」
「それだけ想われているということなので」
 言葉は過去形でも想うからこそ言う言葉だ。
「いい言葉ですが」
「そのことは確かですね」
「ですが言う方は残念に思う言葉です」
「死んだことを惜しむからこそ」
「はい、もっと長生きして欲しかったとです」
「思いますね」
「そしてこの言葉は往々にして」
 小野さんは次第に遠くを見る目になっていた、それは人生のそうした場面を見ている時の目だった。
「若くして亡くなった人にです」
「贈る言葉ですね」
「そうです、大往生していれば」
 つまり天寿を全うしてというのだ。
「こうした言葉は出しません」
「そうですね」
「はい、若くしてです」
「五十になっていないのに」
「確かに平民寿命は伸びましたが」
 それでもというのだ。
「人の一生ではです」
「わからないもので」
「五十にならないうちに世を去る」
「そうした人もいますね」
「その中で私は結婚したかったですが」
「結婚出来てですね」
「子供が欲しくてです」
 そしてというのだ。 
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