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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第二百八十一話 三人になってその十四

「それでも偏見は誰にもあるし」
「間違えることだってね」
「あるからね」
「そうよね」
「昔のカルフォルニアの知事さんとか」
 アール=ウォーレンという人だ。アメリカではかなり名高い人だ。
「日系人の収容に大賛成で自分からね」
「それを推し進めたのよね」
「絶対にカルフォルニアに戻させないって言ってね」
 しかもジャップという差別用語を公の場で使ってだ。
「色々根拠のない主張をしていたよ」
「日本軍とつながっているとか」
「そう言ってたけれど」
 日系人から見れば憎むべき相手でもだ。
「後で最高裁判事になって」
「キング牧師やマルコムエックスを助けたのよね」
「公民権運動でアフリカ系の分離を違憲としたんだ」
 そうして公民権運動を助けた、アフリカ系アメリカ人の権利拡大と人権の保護にキング牧師やマルコムエックスに匹敵する貢献を果たしたのだ。
「これは凄いことだよ」
「アメリカの歴史を変えたのよね」
「素晴らしい意味でね」
 この人によって多くのアフリカ系の人の未来が開けたのだ。
「そうなったよ」
「そうよね」
「けれどね」
「知事さんだった頃は」
「日系人を迫害していたんだ」
 それも自ら先頭に立ってだ。
「後でそれは間違いだったって言ってるよ」
「反省していたのね」
「それは口だけだったと言うには」
 どうしてもだ。
「ちょっとね」
「言えないわよね」
「そんな人が公民権運動に貢献しないから」
 キング牧師に匹敵するまでにだ。
「そう思うとね」
「人種差別主義者じゃなかったのね」
「そう思うよ、立派な人だったそうだから」
 人間としてもだ。
「それでもそんな人でもね」
「間違いを犯すのね」
「そう思うよ」 
 実際にだ。
「差別主義者に何をしてもいいのなら」
「その知事さんもよね」
「物凄い攻撃受けないといけないよ」
 公民権運動に貢献した人でもだ。
「攻撃受ける対象には思えなくても」
「昔の間違いのことで」
「そうした攻撃する人は手段選ばないから」
 どんな迫害を受けても文句を言えないと言うからにだ、それこそ極端に卑劣で残忍で陰湿なことも躊躇なく行える。
「その人を騙しても寝も歯もないこと言いふらしたりすることもね」
「するのね」
「うん、罪は消えないとか言って」
 そうしたタイプはこう言うのが常だ、僕が見る限り。
「そうするよ」
「そこまでいったらやり過ぎね」
「差別主義者じゃなくてその人の方が問題だよ」
 差別主義者を攻撃する人の方がだ。
「その人の罪を許さず徹底的に延々と攻撃するなら」
「そうした人の方が問題ね」
「この人も偏見あるよ」
 むしろ偏見の塊だ。
「差別主義者に対するね」
「そうするのね」
「だからね」
 それでだ。
「そうした人にならない」
「そのこともよね」
「心掛けておかないとね」
「やっぱり駄目よね」
「そう思うよ」
 実際にだ、そしてだった。
 僕はそうした話をしながら三人でカレーを食べた、カレーは美味しくてそのことでは満足した、けれど僕達が八条荘への帰路にとんでもないものを見た。


第二百八十一話   完


                 2020・4・23 
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