八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第二百八十一話 三人になってその八
「今日はね」
「そのカレーにしたんだね」
「そうなの、それで席空いてるけれど」
僕の右隣の席を見て言ってきた。
「そこ座っていい?」
「いいよ」
僕は香織さんに笑顔で答えた。
「それじゃあね」
「じゃあ三人でね」
「食べようね」
「それじゃあね」
僕は普通に答えた、けれど内面ではだった。
三人で一緒になって危ういものを感じていた、最近の詩織さんと香織さんの僕との距離から自然にだ。
だがその内面の考えを隠して三人で話すことにした、香織さんはここで僕に対してこうしたことを言ってきた。
「一体何のお話してたの?」
「神様、よね」
詩織さんが答えた。
「言うなら」
「そうだね」
僕も詩織さんに応えて香織さんに答えた。
「キリスト教の神様じゃないけれど」
「ええ、アッラーの神にね」
「日本の神様にね」
「そうした神様のことお話してたね」
「そうだったね」
「神様ね」
そう聞いてだ、香織さんはこう言った。もう野菜カレーを食べはじめている。
「クリスマスだから」
「うん、だからついついね」
太宰治の話とかはとりあえず置いて話した、そこまで戻るとややこしくなると思ってだ。
「色々な神様のお話したんだ」
「そうだったの」
「いや、しかしね」
「しかし?」
「テストが終わってからだからね」
クリスマスの話はだ。
「まだ先だね」
「それはね、ただね」
「ただ?」
「いや、クリスマスってね」
香織さんは僕に笑ってこう言ってきた。
「これが終わったらね」
「終わったらなんだ」
「もう後は大晦日まで一直線よね」
「ああ、一年も終わりだね」
「そう思うわよね」
「それはね」
実際にだ。
「そうだよね」
「そう思えるわね」
「一年で最後のお祭りかな」
大晦日は別にしてだ。
「クリスマスは」
「そうなるわね」
「うん、それで教会は」
「行かないわね」
「やっぱりそうだよね」
これは香織さんもだった。
「日本だとね」
「私今まで教会に行ったことないのよね」
クリスマスだけでなくてもというのだ。
「実は」
「そうなんだ」
「うん、この学校の中にもあるけれど」
「最近正教の教会も出来たよ」
最大宗派のロシア正教のものらしい。
「合わせて三つだね」
「カトリックにプロテスタントにね」
「それで三つあるけれど」
「キリスト教の教会にはね」
「行ったことがないんだ」
「ある場所は知っていても」
実際にこの学園の中にもあるしだ。
「それでもね」
「宗教が違うからじゃないよね」
「日本だからね」
「別にどの宗教でもいいしね」
宗派が違うお寺に行っても何も言われない国だ、だからだ。
「だからね」
「別にだね」
「そうしたこだわりはないつもりだけれど」
それでもというのだ。
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