銀河帝国革命
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二月革命
前書き
今回は世論型AARの参加者の許可を得て、AARのキャラをオリキャラとして登場させています。
ヴァルハラ星系惑星オーディン……かつて、ゴールデンバウム朝銀河帝国の首都星として繁栄を極めたこの星も、もはやその面影はなく、今や「辺境惑星や貴族領よりはマシ」と言われるレベルにまで衰退していた。そして帝国の中心である新無憂宮の帝国下院議事堂にて、食糧配給量削減法案の議論が行われていた。
「これ以上の削減なんか承諾できるか!現状でさえ辺境では餓死者で溢れかえっているんだぞ!」
「国家の大事だ仕方がないだろう。フェザーンへの債務返済は最優先事項だ。」
「既に各地で食料を求めて暴動が起こってるんだぞ!更なる混乱をもたらすのか!」
「多少の犠牲は覚悟の上だ。財政破綻は何としても避けなければならない。我々には外貨が必要なのだ。」
「他の星系と比較して恵まれているはずのここオーディンですら、一人当たり一日約1300㎉分の食糧しか配給されていないのですよ!これ以上の削減すれば、このオーディンでも餓死者で溢れかえることになり、民心はいよいよもって帝国を見放すでしょう!貴方たちは帝国騒乱事件の悲劇を繰り返すというのですか!そんなことをすれば、いよいよ民衆は帝国を見限りますよ!」
「……議長!議論は充分に尽くされたと判断する。速やかに採決を。」
「それでは本法件に対する採決へ移行する!」
「ふざけるな!」「こんな法案認められるか!」「廃案だ廃案!」
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「賛成多数と認める!よって本法案は可決とする!」
これにより食料配給削減法案を推進する与党「銀河帝政党」に対し、野党各派は必死に抵抗、特にベルティ・ビョークルンド代表幹事率いる「社会協同党」はフィリバスターや牛歩戦術など、警察が介入されないギリギリの議事妨害を実行するも、数には抗いきれず、最後は与党の賛成多数で可決のなったのである。
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帝国暦488年/宇宙暦797年2月23日、オーディンの中央広場にて、食料配給削減法案に対しての大規模な抗議集会が開催された。その数は25万人以上と言われ、オーディン史上最大の集会となった。
「政府はただでさえ少ない食糧配給を削減し、あろうことかそれを輸出に回すという!こんなことが許されて良いのだろうか!」
「政府の横暴を許すなー!」「このままでは俺達は死んでしまうぞー!」「俺達にパンをよこせー!」
「そうだ許されるはずがない!私達は明日をも知れぬ生活を送っているのに、政府は戦争の軍資金集めのために、私達の配給食糧を輸出しようとしているのだ!こんな理不尽はもうたくさんだ!」
「そうだー!」「俺達平和をー!」「もう戦争はコリゴリだ―!」
「我々は充分に耐えた!しかし政府は私達からまだ搾り取ろうと画策している!故に!私達は起ちあがらなくてはならない!政府が私達から生活を奪おうというなら、その理不尽に対し、我々は反撃をしなくてはならないのだ!」
「「「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」」」
「さあ起とう!人民にパンと平和を!」
「「「人民にパンと平和を!!!」」」
こうして抗議集会は暴動へと発展、暴徒の数は百万人以上に膨れ上がり、警察では対処しきれず、暴動は惑星全土に広がっていったのである。
この事態に対し、リヒテンラーデ首相は軍の動員を決断、オーディンは戒厳令が発令され、暴徒鎮圧の命令を下した。
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「閣下!ロマノフスキー閣下!既に政府では戒厳令が発令されました!我々第1師団にも出撃命令が出ています!」
「…………拒否する」
「は?」
「命令を拒否する。帝国軍の弾丸を、臣民に向けることなどできるか!」
「しかし閣下!?」
「我々帝国地上軍は帝国臣民を守るための軍隊であり、帝国臣民に発砲などできない!」
「……よろしいのですか?」
「あぁ、師団を緊急招集しろ。私自ら訓示する。」
「はっ!」
エミール・フォン・ロマノフスキー中将率いる帝国地上軍第1師団は軍上層部からの出動命令を拒否、中立を維持することを表明した。
だが中央通りでは、追い詰められた警官隊が遂に暴徒たちに発砲、多数の死傷者を出した。そしてこれがきっかけで軍の一部が反乱を開始、暴徒と合流を果たし、「暴動」は「反乱」へと姿を変えていった。
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「同志諸君!もはや我々の行動は暴動ではない!これは革命なのだ!過日の第一革命は帝国の無慈悲な暴力によって粉砕された!だが今回は違う!我々は力を手に入れた!故に我々は暴徒から革命勢力として組織化をしなくてはならない!もはや我々は無力ではないのだ!それを新無憂宮に引きこもってるバカどもに知らしめてやろうではないか!」
「「「おお、おおおおおおお!!!!!!!!!!」」」
「我々はここに、労働者と兵士たちによる評議会、【ソヴィエト】の再建を宣言する!!」
2月26日、オーディン・ソヴィエトが結成された。議長には第一革命でソヴィエト穏健派を率い、下院議員となっていたアレクサンドル・ケレンスキーが議長に選出され、政府と対峙する事を全会一致で決議した。
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「もう限界でしょうな。もはやオーディンは無法の都と化したと言っても過言ではありますまい……」
「どうやらそのようですな。だが我々にはこの無秩序を止める権限も手立てもありません。貴族で下院議員の地位を得ながら、情けない限りです……」
「まだ手段は残っていますよ。」
「どのような?」
「リヒテンラーデ首相の更迭と皇帝陛下の退位を求めましょう。もはや民心はゴールデンバウム朝を見放したのです。このうえは我々で事態を収拾し、新たな政府を立てるほかないでしょう。」
「しかしそれは……」
「できなければあのソヴィエトが政権を握るだけですぞ。そうなれば皇族は根絶やしにされ、我々は断頭台で処刑されることになるでしょう。旧時代の革命がどのような結果になったか知らないわけではありますまい?」
「……しかし宛はあるのですかな?」
「第1師団のロマノフスキー将軍とは昵懇の仲です。それに民衆受けの良いビョークルンド代表幹事にも協力を要請しましょう。彼ならソヴィエトのケレンスキー議長を説得できます。」
「わかりました。それでいきましょう。しかし……我々自身の手でゴールデンバウム朝を終わらせることになるとは……」
一連の騒乱について、議論を重ねた上院仮議長フランツ・フォン・マリーンドルフ伯爵と上院議員エーリッヒ=ヴァルデマー・グラーフ・フォン・エプレボリ伯爵は帝国の打倒を決断。
2月28日、ロマノフスキー中将、ビョークルンド代表幹事と共に12名の委員からなる国家臨時委員会を設置し政権の掌握を宣言、ソヴィエトに対し秩序を回復を呼びかけた。
3月1日、ケレンスキー議長提案に賛成、オーディン・ソヴィエトは臨時委員会に協力し、新政府樹立に参加することが決定された。もはやゴールデン朝銀河帝国は逃げ道を失ったのである。
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「陛下……」
「そう俯くな。黄金樹が倒れるという事はその程度の力だっただけのこと。」
「ですが!」
「もはや帝国の威光など何処にも存在しないのだ。敗北者は潔く舞台から降りるとしよう。」
「……かしこまりました。」
3月2日、国家臨時委員会とオーディン・ソヴィエトは帝政の廃止を宣言、リヒテンラーデ内閣の退陣と、皇帝フリードリヒ4世の退位を勧告した。勧告に応じた皇帝は退位を宣言、遂にルドルフ測位以来488年続いたゴールデンバウム朝銀河帝国は、ここに崩壊したのである。
後書き
ようやくここまで来たぞ……!
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