狒々の霊
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第四章
「たまたまそこのおっちゃんが来てな」
「憑いたの」
「そや、しかしわしはお姉ちゃんが好きなだけでな」
「つまり憑いただけなの」
「けどわしのやりたい気持ちがや」
「またあからさまな言葉ね」
「おっちゃんの性欲をめっちゃ刺激したらしくてな」
それでというのだ。
「お姉ちゃんにや」
「毎日ってなったのね」
「六回な」
「そういうことだったの」
「そや、わしは誓って言うけどな」
「私とはなのね」
「してたのはおっちゃんや」
そうだというのだ。
「そやからや」
「そこは安心していいのね」
「わしはお姉ちゃんとはやってないで」
「やってたのは旦那ね」
「身も心もな」
それこそというのだ。
「そやからな」
「安心していいのね」
「そや」
まさにというのだ。
「そこは安心するんや」
「ならいいけれど」
「しかしお守りで追い出されたならしゃあない」
狒々は晶にあらためて言った。
「もうここは潮時やろ」
「成仏するのね」
「そうしよか。そして生まれ変わって」
そうしてというのだ。
「奇麗なお姉ちゃん達とハーレム作って暮らそうか」
「精々感染症には気をつけなさいね」
「そうするわ」
こうしたことを言ってだった。
狒々は住吉大社に行ってそこで成仏してくると言って晶の家を後にした、すると夫は我に返ってこう言った。
「そのつもりだったがな」
「いいの」
「寝る前でいいよな」
こう言うのだった。
「それで」
「ええ、流石に今はね」
「そうだよな、じゃあまずは飯だな」
「それじゃあね」
「今日の飯は何だ?」
「ハヤシライスよ」
妻はメニューをそのまま話した。
「それよ」
「それか」
「あんた好きでしょ」
「ああ、かなりな」
「デザートには林檎もあるから」
「林檎か」
夫はこの果物の名前を聞いて目を輝かせた。
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