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レーヴァティン

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第百六十三話 治の仕組みその四

「だからだ」
「かなり苦しかったですね」
「非常にだ」
 その現実はというのだ。
「百六十年は苦しかったのも道理だ」
「吉宗公にしても」
「決して民を苦しめる将軍ではなかった」
「だからですね」
「幕府の取り分は引く定めた」
 その定免法でというのだ。
「あれは経済を安定させる」
「その為の政策ですね」
「そうだった、だが」
「それでもですね」
「悪く言おうと思えばだ」
「何とでも言えますね」
「マルクス主義か何か知らないが」
 それでもとだ、英雄はここでは忌々し気に言った。
「おかしなイデオロギーの下では馬鹿げた解釈も可能でだ」
「それで、ですね」
「吉宗公もそう言われる」
「左様ですね」
「だが事実はそうでだ」
 英雄はさらに言った。
「俺としては江戸幕府まで年貢の割合は下げられないが」
「財政が成り立たないので」
「だがだ」
 それでもというのだ。
「やはりな」
「低くはですね」
「したい、高いと本当にな」
 現実として、というのだ。
「景気も悪くなり民どころか国に活力もなくなる」
「それがわかってない奴も多かとね」
 香織は冷めた目で述べた。
「世の中は」
「この世界でもな」
「よく税金を高く取ってたい」
「自分だけが贅沢をする」
「そうしているとたい」
「国の活力がなくなる」
 英雄は香織にも答えた。
「まさにな」
「そうたいな」
「ルイ十四世もそこでしくじった」
 ブルボン王朝の王として有名なこのフランス王もというのだ。
「ベルサイユ宮殿を建ててだ」
「贅沢もしてたいな」
「そして戦争も多く行った」
「それで民にかけた税金は多くなったたいな」
「少なくとも日本より遥かに高くなった」
「それでたいな」
「その戦争とナント勅令の廃止もあったが」 
 前者で国費を浪費し後者で多くの経済的損失を生み出してしまったのだ、この二つはルイ十四世の失政として批判されている。
「税の高さもな」
「ありましたね」
「そしてだ」
「フランスは活力を弱めていき」
「次第にだ」
 ルイ十四世の後はというのだ。
「イギリスやオーストリアに押されていった」
「左様でしたね」
「だからだ」
 それ故にというのだ。
「重税はだ」
「しないですね」
「それは絶対にだ」
「民も苦しみますし」
「民を苦しめるとな」
「もうその時点で」
「この世界を救うことなぞだ」
 到底というのだ。 
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