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レーヴァティン

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第百六十一話 新兵器その十一

「老人ホームでなくな」
「精神病院ですね」
「そこに放り込んだら暫くして喚き散らして血管が切れて死んだらしい」
「そうでしたか」
「そして残ったもう一人の屑はな」
 その者のそれからのことも話した。
「教会にいられなくなって後ろ足で砂をかける様にして出て新聞の配達に住み込みで働いたが」
「そこでもですか」
「不満ばかり言って尊大で働かずな」
「いられなくなって」
「いなくなってだ」
「その後は」
「行方不明だが」
 それでもというのだ。
「俺はそうした人生を歩むつもりはない」
「だからですね」
「普通に生きたい」
「そのことを追い求めていますか」
「そういうことだ」 
 こう良太に話した。
「俺はな」
「平凡な様でいて」
 それでもとだ、智が言ってきた。海老の刺身をさらに食べながら。
「難しいでござるか」
「俺はそう思う」
「そうした人達の様にならないことは」
「まともな人間になること自体がな」 
 そもそもというだ、英雄は智にも話した。
「世の中よくある話だと思うわ」
「そうした母親や叔父さんのことは」
「幸い俺の親戚にはそこまで酷い奴はいないがな」
「それでもでござるな」
「そうした奴を見ているとな」
 どうしてもというのだ。
「俺もだ」
「実感したでござるか」
「そうなった、その知り合いの親戚には他にも腐った奴がいてだ」
「他にもでござるか」
「酒を飲んで奥さんや子供に暴力を振るう奴もだ」
「今度はDV男でござるか」
「そうした奴もいる、屑ばかりと言えばだ」
 まさにというのだ。
「そうなるかも知れないが」
「実際にでござるか」
「いてだ」
 それでというのだ。
「俺はそうした奴にもなりたくない」
「何もしないで出来なくても尊大な人にもで」
「屑を甘やかしヒスを起こす糞婆にもなりたくなくてな」 
 そしてというのだ。
「そうしてだ」
「DV男にもでござるな」
「絶対にだ」
「だから普通の人になりたいでござるか」
「そう思っている」
「そうでござるか、何か」
 どうしてもとだ、智はここまで聞いてしみじみとした口調で言った。そうしてそのうえで彼はさらにだった。
 飲みつつだ、こうも言った。
「英雄殿の深い気持ちが」
「あるか」
「感じられたでござる」
 実際にというのだ。
「まことに」
「俺が思うに普通に生きることはな」
「難しい」
「そう考えている」
 こう言ってだった、英雄は飲んでいく。そしてさらに言うがその話をする間も刺身も酒も口にしていた。


第百六十一話   完


                  2020・5・8 
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