鴉も家族に
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第三章
「何でもなくなったわ」
「そうなのね」
「ええ、もうね」
すっかりというのだ。
「そうなったから」
「だからなのね」
「随分楽になったわ」
「じゃあ後はおしっことうんちだけね」
「それは巣立つまでの我慢ね」
それしかないと言ってだ、そしてだった。
ソフィーは鴉を育て続けた、だが。
メアリーが次にソフィーの家に遊びに来た時に彼女の部屋に入ると鴉がいた、それで彼女はどうかという顔になって言った。
「もう大人になってるわね」
「なってるけれどね」
ソフィーはメアリーにくすりと笑って話した。
「それがね」
「出て行かなかったの」
「そう、窓を開けて旅立ったけれど」
「そうなったのね」
「そうなったけれど」
それでもというのだ。
「すぐに戻って来たの」
「そうしてきたの」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「今ここにいるの。それから窓を開けると外に飛びには行くけれど」
「すぐに戻るの」
「そうなの」
こうメアリーに話した。
「これがね」
「そうなのね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「今もずっと一緒に暮らしているの」
「そうしているのね」
「この子と一緒にね」
丁度足元にいたオリバーの背中を撫でて話した。
「そうしているわ」
「そうなのね」
「今じゃ名前も付けて」
そうしというのだ。
「一緒に暮らしてるわ」
「名前付けたの」
「もうすっかり私に懐いてくれたし」
ソフィーは笑顔で話した。
「完全に家族になったから」
「それでのね」
「鳴き声がミアって聞こえるから」
だからだというのだ。
「ミヤって名付けたの」
「カア」
「ミヤね」
メアリーはそのミヤの鳴き声を今聞いて言った、今彼は籠の中にいる。
「カアって聞こえるけれど」
「私にはミヤって聞こえるから」
「だからミヤなのね」
「そうなのよ」
「まあそこはそれぞれね、ただね」
「ただ?」
「鴉も人に懐くのね」
メアリーは今度はしみじみとした口調で話した。
「そうなのね」
「ええ、私もそのことがわかったわ」
ソフィーはメアリーに微笑んで話した。
「それで一緒にいると鴉も可愛いわよ」
「そうね、よく見たらね」
実際にとだ、メアリーもその鴉を見てソフィーに応えた。
「可愛いわね」
「もうすっかり家族よ」
「ええ、ただうんちのことは」
ミヤがするそれはとだ。メアリーはソフィーにこのことについてふと思って答えた。
「どうなったの?」
「そっちも籠の中とかお外に飛んでる時にしてくれる様になって」
「それでなのね」
「かなり助かったわ」
「それは何よりね」
「ええ、教えたら出来る様になったわ」
「鴉は賢いからね」
メアリーもそれならと納得して頷いた。
「そうなったのね」
「けれどその分退屈になったかも」
「うんちのことで困らなくなっただけに」
「そこは不満かしら」
少し苦笑いになって言うソフィーだった、そうしてだった。
メアリーと二人でミヤのことを話した、勿論ミヤのことも忘れておらず家族についての話は笑顔のまま続けられた。話をするソフィーの顔は幸せそのものであった。
鴉も家族に 完
2020・6・17
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