ホームレスと猫
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第三章
彼は自分とサムのことを書いた本を出版した、するとイギリスでもヒットし世界の多くの国で翻訳された。こうしてだった。
一人のしがないホームレスは忽ち一財産を持つ者になった、獣医はその話を聞いて我がことの様に喜びホーエンのところに言って話した。
「よかったですね」
「ええ、お陰で俺もサムとずっとです」
「安定してですね」
「暮らしていける様になりました」
「ニャア」
サムも鳴いて応えた、そのサムを見つつホーエンはさらに話した。
「よかったです、こいつが俺に幸せを運んでくれました」
「いえ、彼を助けたからですよ」
獣医はホーエンに彼が傷付いたサムを自分のところに連れて来た時のことを話した。
「だからですよ」
「それで、ですか」
「困っている猫を助ける様な人ですから」
だからだというのだ。
「神が幸せを下さったのです」
「神が、ですか」
「はい、そしてサムもです」
彼もというのだ。
「その幸せなのです」
「じゃあ俺はその幸せを自分で手に入れたんですね」
「そうなりますね」
「そうですか」
「私はそう考えました、それでこれからどうされますか」
獣医は今度はホーエンの今後のことを尋ねた。
「本が随分売れてホームレス復帰の雑誌のお仕事もされていますが」
「それはもう決まってます」
持っているギターを獣医に見せてだった、ホーエンは獣医に話した。
「俺はこれがありますから」
「音楽を続けられますか」
「俺は音楽が出来ればそれでいいです」
「そう言われますか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「これからもです」
「音楽をですね」
「こいつと一緒にやっていきます」
足元にいるサムを見て笑顔で話した、サムはその彼に顔を向けて嬉しそうに一声鳴いた、そうして彼は無二の親友であり家族でもあるサムと共に音楽を奏でにロンドンの街に出た。そうして共に音楽を聴いてもらった。
ホームレスと猫 完
2020・6.16
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