不良でも
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第一章
不良でも
平松涼花の外見は鋭い目に細い眉、鋭い顔つきに金髪に染めたロングヘアに紺色のブレザーと白いブラウス、ブレザーと同じ色のスカートと赤いネクタイの制服を着崩している。ネクタイはあまり締めずブラウスの襟元はボタンを外していてスカートは目一杯短くしている。見るからにそうした女子高生だ。
そして喧嘩っ早く口も悪い、八条学園農業科の娘では不良生徒と呼ばれている。その為生活指導部からも目をつけられているが。
生活指導部の田所慎吾は彼女についてこう言っていた。
「服装や口調は悪いがね」
「それでもですか」
「あの娘は」
「安心はしている」
こう言うのだった。
「すぐ怒るがね」
「そういえば手は出さないですね」
「いじめもしないですし」
「そうした話はないですね」
「カツアゲとか万引きの話も」
「それもないですね」
そうしたことは一切なかった、実際に。
「あと何だかんだで授業もちゃんと出てますし」
「遅刻も早退もないですね」
「無断でのそれは」
「部活も真面目に出てますし」
バスケ部のそちらもだ。
「課外も真面目で」
「そうしたことはないですね」
「ああした子はいいのだよ」
まだ、というのだ。
「やはり」
「あの服装でもですね」
「それで口は悪いですが」
「そうした娘でも」
「素行は問題ないなら」
それならとだ、田所は話した。髪の毛はすっかり薄くなっていて顔には皺が目立っている。外見だけで初老とわかる。腹も結構出ている。
「別に」
「ならですか」
「服装を注意するだけですか」
「彼女の場合は」
「それでいいですか」
「口調も悪いが」
それでもとだ、田所はさらに話した。
「別にな」
「ですか、じゃああの制服の着崩しだけですね」
「うちの制服は種類多いですが着崩しはあまり酷いと駄目ですし」
「実際あの娘の着崩しは悪いです」
「それで、ですね」
「それ位でいいな」
服装への批判程度でいいとだ、田所は決めた。そして実際に彼女に毎朝登校の時に服装チェックをして言った。
「平松、その服装は駄目だ」
「っせえな、いいだろ」
涼花はその田所にいつも怒った顔で返した。
「別に」
「よくない、服装の乱れは風紀の乱れだ」
「ちゃんと毎朝登校してるだろ」
「そういうことじゃない、ちゃんとした服をだな」
「うっせえよ、あたしはこれでいいんだよ」
こう言ってだった、涼花は田所の話を長くは聞かずさっさと下駄箱からクラスに向かうのが常だった。
そしてクラスでは普通にだった。
クラスメイト達とも普通に話していた、授業も真面目に受けている。
そしてしっかりと授業を聞いてノートも取っている。そうしてテストもだった。
「あんた赤点取らないわね」
「どの教科も」
「そんなに点数はよくないけれど」
「追試受けたことないわね」
「一応な」
涼花はクラスメイト達の問いにこう返した。
「授業受けてるしな」
「それで聞いてて」
「ノートも取ってるから」
「だからなのね」
「やることやらねえとな」
学生の本分、勉強をというのだ。
ページ上へ戻る