提督はBarにいる。
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春を味わう筍料理・3
「うむ、これはいい!歯応えとチーズの塩気が酒に合う。それに、この辛味が食欲を増させる」
ネルソンは気に入ったらしく、パクパクと口に放り込んではビールを煽る。ジャーヴィスもその隣から手を伸ばし、ネルソンには劣るペースだが食べ続けている。が、3人の中で食が進んでいないのが1人。
「どうしたジェーナス、あんまり美味しくなかったか?」
「ううん、美味しいわ!美味しいけど……少し辛くて」
そう言って舌を手で扇いでいるジェーナス。どうやらジェーナスは辛いのが苦手らしい。まぁ、酒飲みの舌に合わせて、味は濃い目だし辛味も強めに付けてあるからな。
「よし、ちょっと待ってな」
折角油が温まってる事だし、辛くない筍の揚げ物を作るとしよう。
《タルタルソースで頂く、エビと筍のフリッター》※分量:4人前
・筍(茹でてあるもの):200g
・エビ:8尾くらい
・卵:1個
・薄力粉:50g
・ベーキングパウダー:小さじ1/2
・パセリ(刻んだ物):大さじ1
・水:大さじ4
・塩:少々
(タルタルソース)
・マヨネーズ:大さじ7
・新玉ねぎ:1/2個
・茹で玉子:1個
・ピクルス(みじん切り):大さじ2※無ければらっきょうやしば漬けでも!
・塩:少々
・胡椒:少々
まずはタルタルソースから。玉ねぎ、ピクルス、茹で玉子をみじん切りにし、マヨネーズ、塩、胡椒と混ぜ合わせて冷蔵庫で冷やしておく。
お次は衣。卵を卵黄と卵白に分けて、卵黄と水を混ぜ合わせてから薄力粉、ベーキングパウダー、パセリと混ぜ合わせておく。この時、卵白は後で使うので捨てないように。作った衣も冷蔵庫で冷やしておく。
エビは殻を剥き、片栗粉(分量外)をまぶしてから水を入れてもみ洗いする。背ワタが残っていたら取り除き、クッキングペーパーで等でしっかりと水気を切っておく。筍は食べやすい大きさにカット。
お次は卵白を泡立てていくぞ。卵白に塩を加えて、角が立つくらいまで泡立てる。これを衣に合わせてサックリと混ぜ合わせる。このメレンゲを衣に加えることで、揚げた時にサックリと軽い食感に揚がるんだ。
さて、揚げていくぞ。エビと筍をそれぞれ衣に潜らせ、170℃に熱した油にダイブ。揚がったらしっかりと油を切って、作っておいたタルタルソースと器に盛れば完成。
「ジェーナス、こいつは『エビと筍のフリッター』だ。タルタルソースで召し上がれ」
勧められるがままにジェーナスがフリッターにフォークを突き刺し、タルタルソースの入った器に突っ込んだ。たっぷりと具沢山のソースを絡ませ、かぶりつく。サクリという軽い衣の食感と、コリコリした筍の食感。Wの食感にタルタルソースの中に入った玉ねぎとピクルスのザクザクという食感とマヨネーズの酸味と旨味、そしてコクがプラスされてその味を引き立てる。
「美味しい!」
「そりゃ良かった」
さっきの我慢して言っていた(様に見えた)『美味しい』よりも、心からそう言っている様に聞こえる。何より、顔が違う。にへらっ、と崩れた笑みが愛想笑いではない本当の笑顔だと物語る。
『やっぱ似てんだよなぁ』
なお、その笑顔がドラ○エのスライムの顔に似てると思ったのは内緒だ。
「さてと、アタシ達はそろそろ切り上げますかねぇ」
そう言って徐に立ち上がる飛龍。
「だねぇ。丁度ボトルも空になったし」
見れば、一升瓶で出してやったはずの『兼八』が既に空になっている。いやいや、42度あるんだぞ?ソレ。
「にしても今日は随分と早いな。いつもならテッペン回るまでは居座るクセに」
「いや~明日から西方海域の定期掃海任務だからさぁ」
「それに旗艦がながもんだから、寝坊したらおっかなそうだし」
定期掃海任務とは、シーレーンの安全を確保する為に敵の大小を問わずに兎に角数を減らす事を目的とした、言わば殲滅戦に近い任務だ。1週間から10日ほどかけて、航路上の補給基地等に立ち寄りながら朝から晩まで戦闘に明け暮れるという中々ハードな任務なのだが、それでも完全には根絶出来ずに輸送船が襲われる確率を下げる程度の効果しかないってのが悩みの種なんだが……やらないと被害が拡大するのでやらない訳にもいかないジレンマ。
「そうか、まぁ気を付けてな」
「ほいほ~い。んじゃネルソンさん、またね!」
「今度は朝まで飲もう!」
「うむ。明日からの任務……武運を祈る」
そう言って颯爽と去っていくニ航戦の2人。その後ろ姿には気負いも不安もなく、ただいつも通りの事だと雄弁に物語っていた。
「……あれ、今日は馬鹿に早いのねぇ蒼龍と飛龍」
去る者があればやって来る者があり。ニ航戦の2人とすれ違いにやって来たのは
「おぉ、ムツではないか!こっちに来い、共に飲もうではないか」
「あらネルソンさん、こんばんは♪」
先程の会話に出ていた長門の妹・陸奥だった。
「いらっしゃいませ。何をお飲みに?」
「う~んと……私のキープボトルって、まだあったわよね?」
「はい、『響 21年』ですね。どうしますか?」
「ロックで頂戴。加水はいらないわ」
「かしこましました」
手際よく、陸奥の酒を準備していく早霜。
「ツマミはどうする?」
「そうねぇ……今日は筍がオススメなんでしょう?」
「ああ」
「じゃあじゃあ、ウィスキーに合いそうな筍料理……お願いできるかしら?」
挑戦的な笑みを浮かべる陸奥。こいつはこうやってたまに俺を試そうというか、からかってこようとする。『出来るもんならやってみろ』という意思が駄々漏れだ。
「あいよ。任せときな」
《簡単!美味しい!筍のペペロンチーノ風》※分量:2人前
・筍(ゆでたもの):200g
・アスパラガス:4~5本
・ニンニク:1片
・唐辛子(乾燥):1本
・オリーブオイル:大さじ2
・塩、胡椒:少々
さ、手早く出来て尚且つ美味いのがこの料理のウリだ。ちゃっちゃと行こう。まずは野菜の下拵え。筍は食べやすい大きさにカット。手早く炒めるから、あんまり厚くなりすぎないようにな。アスパラガスは根元の方の皮をピーラーで剥き、固めに茹でてから適当な長さに切り揃える。ニンニクはみじん切り、唐辛子は小口切りにする。辛いのが苦手なら、種は入念に取っておく。
フライパンにオリーブオイルを引いて熱し、ニンニクと唐辛子を弱火で炒めていく。香りが立ってきたら筍とアスパラガスを入れて、火を強めて炒めていく。筍にうっすらと焼き色が付いたら塩、胡椒で味付けをして出来上がり。
「ほら出来たぞ、『筍のペペロンチーノ風』だ」
「う~ん……」
早速出来た料理を陸奥に出してやるが、何処と無く陸奥が不満げに見える。実際、うんうん唸っている。
「どうした?もしかしてニンニクがまずかったか」
「え?ううん、普通に美味しいわよ?ニンニクも好きだし」
ニンニクは美味いんだが、やはり食べた後の口臭が気になって避ける奴はウチの艦娘連中にも少なからずいる。だが、陸奥は前々から好んで食べてたしな。なら何が不満だというのか。
「なんていうか、こう……もっとガツンと来るようなのが食べたかったのよね。今日の気分的に」
「要するに、ボリューム不足って事か」
「そう!そういう事よ」
「なら話は早いや。少し時間が掛かるが……ボリュームたっぷりの筍料理、食わしてやるよ」
「あらあら、楽しみにしてるわ♪」
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