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夢幻水滸伝

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第百三十三話 高度を下げてその十一

「回復もします」
「術とか自然に」
「八岐大蛇は生命力もかなりです」
「そういえば頭を全部切られてもでし」 
 郁は起きた世界でも読書家だ、それで日本の神話のことも知っている。その知識から八岐大蛇のことを話した。
「尻尾が動いていたでし」
「そうでしたね」
「八つの尻尾が」
「そうした生命力なので」
「回復していくんだね」
 陳はまた言った。
「僕の神具を受けても」
「直撃でも」
「ほな大蛇を倒すことも」
「かなり難しいですよ」
「ほなこうしたどや」
 緑麗も会話に加わってきた。
「陳が撃って私も突っ込んで」
「星の人が幾人も向かってですね」
「そうしたらどや」
「そうすれば流石の大蛇も難しくなるでしょうが」
「それでもかいな」
「星の人をあまり大蛇ひいては紫さんにだけ割くと」
 そうすればというのだ。
「まずいのでは」
「おら達中国の星のモンは二十二人」
 金はその数を話した。
「ほな」
「はい、わたくし達はやはり」
「軍勢同士の戦に加わるべきで」
「紫さんに集中しましと」
「あかんと」
「そうかと。もう軍勢同士の戦を数で押し切って」
 そうしてというのだ。
「勝つべきかと」
「そうなるか」
「はい、この度は」
「じゃあ今からやるか」
「そうしましょう」
 莫は気弱な態度だったがそれでもだった。
 彼なりに覚悟を決めて今まさにはじまろうとしている戦に向かった、中国軍六百四十万は大砲と鉄砲、そして術を日本軍に向けて。
 日本軍の移動要塞である蓬莱から見て北西彼等から見て南東の方角高度二百の距離から攻撃を仕掛けんとした、高所を取ったうえで数も使えた。
 勝てる、将兵達の殆どは確信した。だが。
 羅は自身の神具麒麟既に空に上がっている彼にこう言われた。
「日本の星のモンが少ないで」
「?そういえば」
 羅も言われて日本軍を見て気付いた。
「綾乃ちゃんはおるが」
「中里の旦那と芥川の兄さんはおらんで」
「あの二人がおらんか」
「それだけやないな」
 今度は施の神具である白澤が言ってきた、施を背に乗せて彼も空に上がっている。高いところから軍勢全体を見て采配を執る為に二人は今そこにいるのだ。
「気配もせん」
「どういうことや、いや」
 施は白澤の言葉にすぐにはっとなった。
「日本の最大の武器は星のモンや」
「そやな」
「その星のモンを全員戦の場に出さんとな」
「勝てへんな」
「それで出さへんとかない」
「ということはや」
「伏兵か」
 施は苦い顔になって述べた。
「ここは」
「雲の中に気配はない」
 黒麒麟は周りのそれを探って言った。
「一切」
「斥候に雲の中も徹底的に調べさせた」
 周りにある雲達のとだ、羅は麒麟に答えた。
「どの高度のな」
「そうしたな」
「そうしたがおらんかった」
 それも一切というのだ。 
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