銀河帝国革命
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コミューン崩壊と革命の失敗
前書き
今回はなんと3000字を超えてしまいましたが、これでコミューン編の最終話という事で分割せずに投稿します。もっとうまく文章を纏めたかったな……
帝国暦485年/宇宙暦794年6月24日、シリウス星域会戦でテールマン率いる人民革命軍艦隊を撃破した帝国軍は、コミューンの本拠地である惑星ロンドリーナへの侵攻を開始した。ロンドリーナの対空防衛網は革命の際、一部設備に被害が出ており、その復旧が成されておらず、帝国軍の大気圏突入を阻止するに至らなかった。
大気圏突入に成功した帝国軍地上部隊はロンドリーナ宇宙港に降下、僅かな抵抗を排除し宇宙港を確保、橋頭堡の構築に成功する。
この報を受けたコミューン評議会は対応策を協議するが、即時反撃に出るか、ラグラン鉱山での籠城をするかで評議会は分裂し紛糾する。その結果、強硬に反撃を主張するサンディカリスム派の一部議員が民兵を扇動し無断で出撃、帝国軍に夜襲を敢行した。しかし、仮にも正規の軍隊である帝国軍に対し、少数の民兵が勝てるわけもなく早々に撃退され、数少ない物資を無駄に浪費しただけの徒労に終わったのであった。
深刻な状況を受けてコミューン評議会議長のハンソンは、『コミューンの危機』から脱するための臨時的な独裁機構として『公安委員会』の設立を提言、無政府主義派などの一部の反対を押し切って提案は可決、これにより公安委員会が正式に設立され、評議会及び全ての執行機関が委員会の傘下に置かれることになった。
その後評議会の選出を受けて公安委員会委員長には、提案者であるハンソンが就任した。ハンソンは公安委員会による『革命的民主主義的独裁』を宣言し戒厳令を布告、更には無断出撃を扇動した挙句逃げ帰ってきた議員達や、混乱に乗じて略奪や暴動を起こした人民、破壊工作を図ったスパイを片っ端から粛清し、崩壊寸前のコミューンの統制を回復させた。
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「シュターデン司令、潜入した工作員より報告が届いております。どうやら叛徒どもの内部でクーデターが起こったようです。」
「それは確かな情報なのか?」
「はい。報告によりますと、叛徒どもの首魁であるハンソンなる者が公安委員会なる組織を設立し権力を掌握、これに反発した叛徒どもや大勢の市民が粛清され、また潜入した工作員も多くが犠牲になったとのことです。」
「そうか……奴等も追い込まれている証拠だな。」
「司令、これは我々にとって好機では?」
「卿の言う通りだなミッターマイヤー参謀長。装甲擲弾兵部隊を率いて直ちに出撃してくれ。『拙速は巧遅に勝る』と古代のある戦術家が言ったそうだが、正にこの状況にピッタリな言葉と言えるだろうな。」
「承知しました。直ちに出撃します。」
コミューンの混乱を好機を見た帝国軍は、装甲擲弾兵部隊を中心とした2万の軍勢を以って出撃、ミッターマイヤー大佐指揮の下、コミューンの本拠地であるロンドリーナ中心地の旧代官府へ進撃を開始した。
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「遂に帝国軍が動き出したか……」
「どうするのです?」
「言うまでもない。当初の予定通り、ラグラン市へ撤退するぞ。首尾はどうだ?」
「既に完了しております。残りは我々だけです。」
「皮肉なことだが、我々が少数であることが好材料となったな……よし、我らは引き上げるぞ。」
ハンソンは事前に帝国軍の来襲を予想し、苛烈ともいえる粛清を行い帝国軍工作員の目を欺いた裏で、残存戦力をラグラン市の鉱山地帯へ撤退させていたのであった。
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6月30日、もぬけの殻の旧代官府を無血占領した帝国軍は、コミューン軍が立て籠もっているラグラン鉱山へ進撃を再開した。同日、ラグラン市に到着した先遣部隊がラグラン鉱山に攻撃を開始、一気に撃破を目論むも、ハンソン指導の下コミューン軍は奮戦、被害を被るも地形を巧みに利用し、帝国軍先遣部隊の撃退に成功する。
報告を受けたミッターマイヤー大佐は、部隊をラグラン市へ急行させ先遣部隊と合流、統制を回復させラグラン鉱山を包囲した。その後シュターデン少将も1万の軍勢と共に合流させた。総勢3万人の帝国軍に対し、コミューン軍は僅か5000人未満となっていた。その後両軍は睨み合いを2週間ほど続けた。
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「厄介なことになったな。」
「はい。我々の勝ちはゆるぎないですが、このまま攻め込んでは敵は窮鼠となって必死に抵抗するでしょう。そうなれば我らにも多数の損害がでます。」
「慎重過ぎて時間を掛けるのもあまり良くはないが……下手に総攻撃をかけて損害が出るのも良くはない。はてさて、ここはどうすべきか……」
「司令、ここは降伏勧告を行ってはどうでしょう?」
「叛徒どもの首魁であるハンソンなる者は、あの『帝国騒乱事件』(帝国第一革命の別名)の首謀者であったと聞く。降伏勧告を行っても無駄ではないか?」
「奴とその一派だけならその通りでしょうが、現在ラグラン鉱山には大勢のラグラン市民も立て籠もっているとの報告を受けています。」
「なるほど……叛徒どもが降伏勧告を拒否すれば、少なくとも市民の反感を買うことになり、連中の結束を乱せるということか。」
「それに叛徒どものの大義が『人民主義』である以上、市民の支持を失うことを連中は何よりも恐れるでしょう。市民の生命を保障してやれば叛徒どももNOとは言えないはずです。」
「ふむ……分かった。叛徒どもに降伏勧告を送るとしよう。」
この決定により、帝国軍からコミューンに対し降伏勧告が送られることとなった。
「敵将に告ぐ、卿らは我が軍の完全な包囲下にある。退路は既に失われた。これ以上の抗戦は無意味である。速やかに降伏されたし。皇帝陛下は卿らの勇戦に対し、寛大なる処遇を以って報われるであろう。重ねて申し込む。降伏されたし。」
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「降伏だと?ふざけるな!」
「我々はまだ戦える!」
「この際華々しく散って帝国主義者どもに我らの意地を見せてやろうではないか!」
「その通りだ!」
帝国軍の降伏勧告に対し、公安委員会は対応を協議したが、断固拒否の意見が多数であった。しかしいつもなら会議を主導するハンソンが、今回は口をつぐんでいた。
「同志委員長はどのような意見で?」
いつもと様子の違うハンソンが気になった委員の一人が、ハンソンに意見を聞いた。ハンソンは神妙な顔をしながら立ち上がり、口を開いた。
「同志諸君、我らがコミューンを守る戦いを始めて間もなく1か月になる。帝国の大軍相手によくぞここまで戦い抜いてくれた。しかし残念ながら、我らの力もここまでだ。既に勝敗は決した。これ以上の犠牲は無駄死にである。よって、このカール・ハンソンは、断腸の思いで次の事を決定した。」
ハンソンはそう言うと、深呼吸をして話を続けた。
「我らは明日、降伏する。」
委員たちはざわついた。
「同志!?」
「本当に降伏するのですか!?」
委員の一人が泣きながらハンソンに縋り付いて言った。
「我々はまだまだ戦えます!なんで・・・帝国の狗どもなんかに降伏しなきゃならないんですか!?」
「同志ハンソン!最後まで戦いましょう!」
委員たちは立ち上がりハンソンに迫った。
「同志達……お前らなぁんか勘違いしとりゃせんか? あ?」
ハンソンが怒気を発しながら話を始めると委員たちは黙った。
「ワシらの死に場所を作るの為にコミューンはあるんじゃねぇ。人民の真の幸福の為にコミューンはあるんだ。ワシらの勝ち目は最早なくなった。なら後は如何にして人民を救えるかを考えるべきだろうが。」
ハンソンは怒気を潜め、笑いながら続けた。
「それにな同志諸君、死のうと思えばいつでも死ねる。だから今は降伏と洒落込もうではないか!がっはっはっは!!!」
7月17日、結局ハンソンの宣言通り公安委員会は降伏勧告の受諾を決定、帝国軍に降伏の旨を通達し翌18日、ハンソン自ら帝国軍の前に出頭しラグラン鉱山は開城。鉱山内にいたコミューン軍民兵約5000名が降伏し、その日のうちに武装解除も完了した。
これにより、帝国暦485年/宇宙暦794年1月6日より始まったロンドリーナ・コミューン革命は、失敗に終わったのであった。
後書き
途中から人民革命軍からコミューン軍となっていますが、これは前回のシリウス星域会戦で人民革命軍が壊滅し、組織として体裁を保てなくなっているからです。
ようやくコミューン革命編が終了しました。本当はもっと短いはずだったんですけどね、これでとりあえず一区切りは着きました。
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