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森の城

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第七章

 オベローンとティターニャは自分達の国に戻った、そうしてパック達に実にいい旅であると話した。しかし。
 老夫婦のことが気になった、それでオベローンはティターニャに言った。
「日本の書を読むか」
「あのお年寄りの二人のことについてなのね」
「書いてあるからも知れない」
「だからなのね」
「そうだ、何故二人は夜に月を常に見ていた」
「そのこはね」
 ティターニャはオベローンに答えた。
「私も気になっているわ」
「そうだな、ではな」
「日本の書を読んで」
「調べるか」
「私も気になるし」
「二人でな」
「読んでいきましょう」 
 こう話してだった。
 二人はパック達に日本の書を集めさせて読んでいった、主に妖精やそうした存在にまつわる者達のことを。
 そしてだった、ある書を共に読んでだった。
 オベローンはティターニャに言った。
「間違いないな」
「そうね」
 ティターニャもその言葉に頷いた。
「あのお二人はね」
「この人達だな」
「竹取りの翁と老婆ね」
「そうだな」
「誰かと思ったけれど」
「あの二人はこの書にあるだ」
 竹取物語、この書の中にいる。
「翁と老婆だ」
「そして何故月を見ていたか」
「わかったな」
「完全にね」
「二人が育てた娘はな」
「かぐや姫は」
「月に帰ってしまった」 
 そうなってしまったとだ、書にはあった。
「竹林で出会い育ててきたが」
「二人にとっては慈しい娘だったけれど」
「その娘を今でもいとおしく思っている」
「だから夜になるとなのね」
 月が出る、その時にだ。
「ああしてなのね」
「月を見ていたな」
「そうね、そう考えると」
 ティターニャはオベローンに考える目で述べた。
「二人のことがわかったわ」
「全くだ、悲しい話だな」
「それでいてとても奇麗ね」
「そうした話だな、何故コノートにいるか」
「それはコノートで見える月が一番奇麗ではないからではないかしら」
 ティターニャはオベローンにこう話した。
「だからではないかしら」
「月がか」
「娘さん、かぐや姫がいる」
「その月がこの世で一番美しいからか」
「来たのではないかしら」
「そうなのか、成程な」 
 オベローンは妻のその言葉に頷いた。
「そういうことか」
「私が思うにね」
「おそらくそうだろうな、あの城にはまた行こう」
 実にいい場所だった、それでだ。
「必ずな、しかしだ」
「このことについては」
「言わないでおく」
 こう言うのだった。
「人も妖精でも心にはな」
「入るべきでないから」
「そうする、だが」
 ここでだ、オベローンはこうも言った。
「月といえば」
「どうしたの?」
「いや、ドリトル先生という人が月に行ったという」
 このことをここで話した。
「月から来た者に会ってな」
「では」
「ドリトル先生に話を聞いてな」
「月から来た人のことを聞いて」
「若しかしたらだ」
 オベローンはティターニャにさらに話した。
「あの二人もな」
「月に行くことが出来るかも知れない」
「幸いドリトル先生はイギリスにいるという」
「では」
「少しその人のところに行って話を聞いてみるか」
 オベローンは決めた、そしてだった。
 実際にドリトル先生のところに行き月から来た人のこと、月への行き方そして月の話を聞いてそれをそっと森の城の老夫婦のところに匿名の手紙の形で送った。そして風の噂で二人が月に行ったことを聞いた。その時彼はティターニャと共に静かに微笑んだ。


森の城   完


                 2019・12・21 
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