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七人同行

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第四章

 難を逃れんとした、そうして道から離れた場所で江川に問うた。
「どうであるか」
「はい、七人同行はそのまま道を進んでいき道の角に当たると姿を消しました」
「そうであるか」
「その間我等を見ることはありませんでした」
「やはりな、あの者達は祟りじゃ」
 容堂は確かな声で言った。
「怨霊の類か何かであろう」
「怨霊ですか」
「化けものならばものか獣の姿をしておる」
 容堂は江川に確かな声で話した。
「しかしあの者達は人の姿をしてじゃ」
「そしてですか」
「死に装束に死相であった」
「だから怨霊ですか」
「そうじゃ、怨霊であるならな」
 容堂はさらに話した。
「どうすべきかは決まっておる」
「それでは」
「すぐにこの道に確かな僧侶か神主を呼び」
 容堂は今度は東洋に話した。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですか」
「祓うなり念仏を唱えるなりさせてな」
「怨霊を鎮めますか」
「そうしようぞ、すぐにじゃ」
 容堂の言葉は確かなものだった。
「その様にするぞ」
「それでは」
「城に戻り確かな僧なり神主をここに行かせる」
 こう言ってだった。
 容堂は東洋と江川を連れて城への帰路につき途中農家に牛を返してからだった。
 城に戻るとすぐに道に土佐で一番の僧に道で念仏を何度も唱えさせて七人同行達を鎮めた。これでだった。
 道で急に死ぬ者はいなくなった、容堂はその結果を聞いて満足した。
「うむ、これでじゃ」
「よいですな」
「民百姓といえどもな」
 武士より下でもとだ、容堂は東洋に話した。
「人は人でじゃ」
「民百姓を守ってこそです」
「武士であり藩主や」
「その通りです」
「これ位のことをせねば」
 それこそとだ、容堂は酒を飲みながら言うのだった。
「わしもここにおる資格はない」
「その通りです」
「ではこのことはそれでよし」
「それではですな」
「藩のことを考えていくか」
「そのことですが」 
 ここで東洋は容堂に話した。
「江戸のことで」
「井伊殿か」
「そうです、井伊様につきましては」
「やり過ぎであるな」
 容堂は苦い顔で述べた。
「どうも」
「あれではです」
「そのうちじゃな」
「凶事もです」
「招きかねぬか」
「出来れば今は」
 井伊直弼、彼についてはというのだ。
「離れられるべきです」
「迂闊に近寄るとわしも藩もじゃな」
「いらぬ難儀を受けるやも知れぬ」
「ではな」
「そのこともお考えを」
「思い切ったことも考えるか」
 容堂は袖の中で腕を組んで述べた、七人同行のことを終わらせてから。
 坂本龍馬を主人公にした作品では時として傲岸不遜にして人の命なぞ何とも思わぬ極悪人として描かれる山内容堂であるがこうしたこともしていた様である、傲慢であっても人を見ることをして彼なりに藩そして日本のことは考えていた様である。その彼の一面をこの逸話から知ってもらえれば幸いである。


七人同行   完


                  2019・11・14 
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