ロックマンゼロ~救世主達~
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SS:緑色の風
前書き
オメガ戦後のハルピュイア
オメガとの戦いの後、ハルピュイアはレジスタンスベースで修理を受けていた。
まさか再びレジスタンスベースで修理を受けることになるとは思ってもいなかったが、ネオ・アルカディアと敵対することになったことで最早、ここしかまともに修理を受けられる場所がない。
特にオメガとの戦いでハルピュイアの戦闘の要である飛行用ユニットが大破してしまったのは痛手であり、レヴィアタンも水中用の推進器に異常が出てしまったので、ここでメンテナンスを受けていた。
レジスタンスにはルインのデータがあるために、飛行用ユニットのノウハウがあるのは助かった。
「…そろそろ飛んでみるか…だが…」
しかし、途中で飛行用ユニットが機能停止して地面に激突するのは避けたい。
しかしこれは必要なことなのは確かなのでどうしたものかと頭を悩ませた時であった。
「私が付き合おうか?」
「っ!は、母上…」
突然現れたルインにハルピュイアは肩を震わせて振り返る。
母上と呼ばれたルインはくすぐったそうに、そして嬉しそうに笑った。
「ふふ、ハルピュイアが私のことをお母さんって呼んでくれた…嬉しいよ…それにしてもお花やお菓子が結構あるね」
隠すように置かれているお菓子と花はきっとアルエットからのお見舞いの品だろう。
「あの子供が俺にと…」
「そっか…子供って時々凄いって思うよ。大人になるとどうしても後先のことを考えちゃうから」
良く考えてみればきっとハルピュイアがレジスタンスに心を開くきっかけになってくれたのはアルエットだ。
親として、個人として後でお菓子を作ってあげようと思うルインであった。
早速屋上に出ようとした頃、ファーブニルと鉢合わせした。
「よう、お袋。これからソドムとゴモラの試し撃ちに行くんだけどよ。お袋、俺の相手をしてくれよ」
ファーブニルに誘われたルインは嬉しいと思ったが、即座に真面目な表情になってスケジュールを確認し直す。
「今からハルピュイアの飛行練習、その後はシエル達の食事作り、アルエットちゃん達のおやつ作りに、ゼロとのトレーニング…武器の自己メンテナンス…それから」
ブツブツと今日のスケジュールを次々と述べるルイン。
「ごめん、今日は無理そう。明日なら予定が空くよ。明日の午前八時から三十分くらい」
少しして申し訳なさそうに両手を合わせて謝罪するルインにファーブニルは頬を掻く仕草をする。
「いや、別に良いけどよ。それにしてもさっきのお袋、スケジュールを纏める時のハルピュイアにそっくりだったぜ。こいつの無駄に細かいとこはお袋似かぁ?」
からかうようなファーブニルの言葉に表情を顰めるハルピュイア。
「寧ろ母上くらいが普通だろう。母上はかつてエックス様と同じくイレギュラーハンターであり、精鋭部隊の隊員の一人だ。これくらいのことは普通に出来て当たり前だ。大体お前は無計画過ぎる」
「別に良いじゃねえか。おめえみてえにギッチギチに予定詰め込んでその通りに動くなんざ俺の性には合わねえ」
「お前と言う奴は…!母上の前で情けないと思わないのか!!」
「ああ!?お袋は関係ねえだろ!大体おめえは細けえことをネチネチネチネチ言いやがって!!」
「ふわあ…」
初めて見る二人の口喧嘩にルインは呆然としている。
「あーあー、またキザ坊やと戦闘馬鹿がじゃれあってる。本当に子供なんだから。お母さん、こいつらのことは気にしなくていいわよ。いつものことだから」
「へー、いつものこと…仲良しなんだねぇ」
のほほんと言ってのけるルインにレヴィアタンは苦笑した。
「お母さんって時々凄いなって思うわ」
「そう?ありがとねレヴィアタン。二人共ー、仲良しなのは良いけどハルピュイアはそろそろ練習しないといけないよ。」
「っ!も、申し訳ありません母上」
「良いよ、気にしなくて良いから。」
頭を下げるハルピュイアにルインはのほほんと言う。
そしてファーブニルに振り返ると笑顔を浮かべた。
「ファーブニル、明日は一緒に何かやろうね。今日付き合えなかったからトレーニングでも何でも付き合うよ」
「ホントか!?約束だぜお袋!」
「勿論、それじゃあファーブニル、レヴィアタン。またね」
「おう」
「キザ坊や~頭から地面に激突しないようにね~お母さん、キザ坊やをよろしく~」
「誰がするか!!」
レヴィアタンのからかいの言葉にハルピュイアは怒鳴りながらルインと共に屋上へ向かう。
「ふふ、ファーブニルもレヴィアタンも元気になって良かったよ」
「見苦しいものをお見せして、申し訳ありません母上…」
「そんなことないよ、ああいう風に本音を叩き合えるのはとても素敵なことだと思う。私はゼロがお兄ちゃん代わりだったけど、やっぱり他人だからどうしても一線引いちゃうんだよねぇ…ハルピュイア達は本当の兄弟なんだよ?さっきの喧嘩も君達の会話の一つなんだと思うから…」
HXアーマーに換装しながらルインは微笑ましげにハルピュイアを見つめる。
「いつか、私達がいなくなっても君達がいる。私やエックスやゼロも結構長生きだしね。色々なことが片付いたらそろそろ引退しないといけない…年寄りを邪険に扱うのもあれだけど、年寄りがでしゃばり過ぎるのも良くないもんね」
「母上…」
「私達みたいな古い風はもう世界には必要ない、今必要なのは…君達みたいな若い風…全てが片付いたら、君達やシエル達が世界を引っ張っていくのを見守っていきたいな…多分エックスもゼロも同じだと思う……さて、真面目な話は終了!一緒に飛ぼう!!」
「…ええ、よろしくお願いします母上」
ルインとハルピュイアが地面を蹴ると、二つの緑の風がレジスタンスベースの屋上に吹いた。
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