ロックマンゼロ~救世主達~
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SS:シエル達の一日
前書き
料理風景
アルエットは目の前で起きていることに瞳をキラキラさせながら見つめていた。
目の前にあるのはじゃがいもと言う野菜で、人間が食べる物だ。
それをシエルと…レプリロイドのルインが皮を剥いているが、少し実が付いているシエルに対してルインはほとんど皮だけだ。
彼女が少し指を動かすだけでスルスルと皮が剥かれていく光景はアルエットからすれば魔法に見えた。
「~♪~~♪」
調子が出てきたのか歌まで軽く歌い始めたルイン。
初めて彼女が歌を軽く披露した時、ゼロや自分を除いて誰もが驚愕したのは記憶に新しい。
レプリロイドは基本的に歌えないからだ。
歌のように聞こえているのも、結局は記録した音声をただ再生しているだけで、彼女のように心に響かせるようなことは出来ない。
更に驚いたのはルインに続いてゼロも歌を口ずさんだことだ。
ゼロの歌もアルエットの心に響くような感じを覚え、どうやらルインとゼロは人間と同じように歌えるようだ。
後から聞いたら二百年前に遊び半分で作った歌らしく、暇がある時にゼロやエックスに聴かせていたようで、題名は“Clover”と言うらしい。
ゼロは何となくだが歌を覚えていたようで、それだけ大切な思い出の一つだったのだろう。
ルインとゼロ、エックスの三人しか知らない特別な歌を聴けたことをアルエットはとても喜んだ。
「ねえ、ルインお姉ちゃん」
「何?」
「今日は何を作るの?」
「今日は野菜たっぷりのスープだよ。今日は少し寒いしね」
他の野菜の人参、玉ねぎ、ブロッコリー、茸をテキパキと処理していくルイン。
「ふわあ……」
「ルインって本当に戦闘用…なのよね?」
シエルの何倍も早く調理するルインにアルエットは感嘆し、シエルは複雑そうに見つめる。
「昔…私を拾ってくれたケイン博士って人がいてね。その人は私を拾った時点で高齢だったからさ。栄養満点で美味しい物を食べて元気に長生きして欲しかったんだ。私に親に相当する人と言ったら多分ケイン博士だろうし…多分エックスやゼロにとっても、ケイン博士は親代わりだったと思う」
「あなたやエックスとゼロの親代わりだった人…」
「子供っぽい人だったけど、誰よりも人間とレプリロイドのために頑張ってた人だった。あの人の最期を看取れなかったのは心残りだな……」
ルインは思い出す。
ケインと過ごしたたくさんの思い出を。
今の自分があるのは間違いなく、彼の存在もあってのことだ。
「正直、今の世界状況を見たらケイン博士は確実に嘆くね」
これだけは確信出来た。
誰よりも人間とレプリロイドの共存のために努力してきた人間の彼ならきっと今の不当な理由でレプリロイドがイレギュラー認定される現状は悲しむだろう。
「……ごめんなさい」
今の人間優位のネオ・アルカディアはシエルが造ったコピーエックスのせいだ。
だから彼女は罪悪感を抱いていたのだが、ルインはそんな彼女の頭を軽く叩いた。
「はいはい、そんなことで謝らない。シエルはみんなのためを思ってやっただけでしょ、会ったことはないけどコピーエックスがそうなったのはシエルのせいじゃないよ」
恐らくは、コピーエックスを引き取り育てた連中…ネオ・アルカディアの上層部辺りが原因だろう。
生まれてほやほやの何も知らない子供がネオ・アルカディアの統治者となったのだ。
周囲がちやほやするうちに、己を弁えずに思い上がるのは当然だろうし、人間達も自分達の都合の良いように圧力や影響を与えたのだ。
「ゼロからコピーエックスの話は聞いたけどさ、私も子供って印象しか抱けなかったな。私の知っているオリジナルのエックスはいつも悩んでいた。悩み続ける先に答えを見出していた。現状のままで本当に良いのかって…“悩む”ことを知らない時点でエックスには程遠いよね…まあ、ネオ・アルカディアの上層部からすればそっちの方が都合が良かったんでしょ」
「ルイン……」
「一人で背負い込まないでね?ゼロも私もネオ・アルカディアに簡単に負けたりはしないし、何があっても必ずみんなのところに」
スープをかき混ぜながら不敵に微笑むルインにシエルは不思議な安心感を得た。
「ええ、ありがとう…そろそろ良いかしら?」
「うん、そうだね…ゼロ、味見してよ」
「………何故俺なんだ?」
離れた場所で三人を見守っていたゼロにスープを一口分入れた小皿を差し出すと、ゼロが訝しげな表情を浮かべた。
「そりゃあ、味見はゼロの役目だからね。私とエックスが料理した時もそうだったし」
意外かもしれないがルイン、エックス、ゼロの三人の中で最も味覚が鋭いのはゼロだったので、自然とゼロが味見役になっていた。
ルインから渡された小皿を受け取り、スープを飲む。
「………悪くない」
「よし、ならOKだね」
ゼロと言うレプリロイドの性格は熟知しているルインは、ゼロなりのスープの評価にガッツポーズをすると、三人で食べる用意をする。
「良いなーシエルお姉ちゃん達…私もお料理食べたい……」
それを聞いたシエルはゼロに目配せする。
「何だ?」
「ねえ、ゼロ…後で私の部屋に来てくれないかしら?」
「…構わんが、どうした?」
「アルエットが食べたそうにしてるから……あの子にも食べさせてあげたいの…お願い、ゼロの味覚の機能と食べ物のエネルギー変換機構を調べさせて」
「……仕方がないな」
心を許した相手には多少甘いゼロであった。
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