GATE ショッカー 彼の地にて、斯く戦えり
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第6話 それぞれの思惑
前書き
オリジナル怪人募集します!!
ショッカー怪人に限らず、獣人でも、ドーパントでも、ロイミュードでも、アナザーライダーでも何でもあり!!
能力や姿などを記載の上、感想欄またはメッセージでお書きください!
ショッカーと接触したことを日本が公表すると日本世界の国々はショッカーの世界の数々のオーバーテクノロジーに驚愕した。
そして大抵の国々はショッカーを非難する声明を発表した。
というのもショッカーによって自分達の国が支配されることを恐れたからだ。ショッカー世界はショッカーによって統一されており、他に国家がない。もしかすると『門』の仕組みを解析して自分の国に攻めてくるかもしれない。
そんな恐怖が現実としてあったのだ。
しかし数ヶ国だけは少し違った反応をしていた。
アメリカ合衆国 ホワイトハウス
「特地とショッカー。この二つをアメリカの市場とする為にも、ショッカーとは
協調しなければならない。」
「その通りです。間違っても彼らと対立するようなことは避けなければなりませんね。」
大統領執務室でショッカーとの協調路線を語った大統領デュレルに対して黒人の補佐官が答える。
「対立だけは絶対に避けるべきだな。
何しろ連中の技術力は我々より圧倒的に勝っている上に世界まで統一しているというじゃないか。変に対立するよりも市場として利用する方がいい。」
世界の警察として、世界最強の国という立ち位置を我が物としているアメリカでも『ショッカー』は当初、自国の国際的な地位を脅かしかねない存在としてホワイトハウスでも脅威論が唱えられたが、泥沼化する中東情勢や中国との経済戦争などを加味した結果、対立するよりも市場として利用する協調論がジワジワと勢力を伸ばしていた。
「チャイナやロシアの様子はどうだ?」
「はっ、大統領。チャイナは依然、銀座に開いた『門』の国際的な管理を要求し続けております。また、日本の尖閣諸島への領海侵犯を繰り返しており、注意が必要です。
ロシアに関しては不気味なほど静かですね。」
「ロシアの動きも気になるところだがまずはチャイナだ。奴ら、『門』の奥の権益を全て奪う気だぞ。チャイナを牽制しつつ、先を越されないように日本にショッカーとの国交樹立を急がせろ!」
デュレルは自衛隊の後方支援を強化し、日本とショッカーとの国交開設を後押しすることを決めた。
ロシア連邦 クレムリン
「ヤポンスキー(日本人)共はショッカーと共闘すると言っているがそんなことは実際にできるのか?」
ホワイトハウスとは打って変わってクレムリンの執務室ではロシア大統領のジュガノフがウォッカを片手に工作員からの報告書を読んでいた。
特地の自衛隊に潜り込ませた工作員の情報でショッカーのことが少しずつではあるが分かってきた。
ショッカー世界はショッカーによる独裁政治が続いていること。
優秀な「カイゾーニンゲン」なる身体能力を人為的に強化した兵士がいるというし、「セントーイン」という人造人間も軍用に実用化しているそうだ。
つまり技術進歩と倫理観がこの世界と異なる訳だ。ジュガノフはこんな世界と国交を持っても後々、とんでもないデメリットを招くだけだと考えていた。
ジュガノフとしては『門』が開いた当初、資源輸出国の自国の発言力低下を恐れたがある意味覇権的ともいえるショッカーの行動に安心感をおぼえていた。万が一、日本が特地に根を下ろそうとすればショッカーは当然、抗議するだろう。そうなれば日本は特地を巡ってショッカーと対立し、特地の資源開発どころではない。
「まぁ変にショッカーと我が連邦が対立してもメリットはないしな。我が連邦は静観させてもらおうか……。特地よりチェチェンやウクライナの方がよっぽど我が連邦にとってやっかいだ。」
ジュガノフは空になったグラスにもう1度、ウォッカを注ぎ始めた。
中華人民共和国 北京
北京の道路を一台のベンツが走っている。その車内では眼鏡を掛けた大柄な男とその秘書が話をしていた。
「全く、ショッカーのせいで当初『門』に関る工作を全て白紙に戻さなくてはいけなくなったじゃないか。」
「腹立たしい限りです。薹徳愁主席。」
その男、中国国家主席である薹徳愁は不満を漏らしていた。彼の思惑としては国内の膨れ上がった人口とエネルギー需要に対応するために可能ならば、移民を特地に送り出し、第二の中国を作りたいと考えていた。だがショッカーという、日本、帝国と続く、第三の勢力があらわれたことによって状況は一変する。
仮に国連や日本が特地に中国移民を送ることを賛成してもショッカーが反対すれば意味がない。ショッカーは中国移民がくる前にこちら側の『門』を破壊するだけで済むのだ。
「ともかく、日本とショッカーが友好ムードを築くのはマズい。日本にはショッカーとの共闘を制限するように工作したまえ。そしてあわよくば、我が国がショッカーの進んだ技術を獲得し、この世界で独占するのだ。」
その後、中国政府は秘密裏に日本のマスコミや自衛隊に送る工作員の数を倍に増やした。
ドイツ連邦 ベルリン 連邦首相府
「一体いつまで続くのよ!!」
ドイツ初の女性首相のメロケルは余りの事態に焦り、部下に問いただす。
3日ほど前からベルリンを含むドイツ国内のあちこちで暴動が発生していたからだ。
「メロケル首相!ベルリンの機動隊から救援要請!!」
「だから!!何でこうも安々と機動隊が負けるのよ!?」
「暴徒の人数が多すぎるからですよ!」
これだけに留まらず、首相の元に各地からも応援・救援要請が立て続けに舞い込んでくる。
「ミュンヘンから応援要請です!ミュンヘンの難民施設の前で暴動が発生し、火災により建物が焼け落ちました!!重症者多数!!」
「ヤルタからも!!!」
少し前から国内ではネオナチによる反移民運動が活発になっていた。
現在のドイツには一年間に十万人ものアラブ・アフリカ系移民が押し寄せており、治安は悪化。
警察も事件の容疑者が移民となると捜査を消極的に行い、メディアも容疑者を守る。さらに移民に対してあらゆる福祉や雇用が優先されるため、子供や老人に至るまで貧しく、失業者に溢れ、おまけに出生率はまるで地を這うようにまでなってしまった。
そんな状態が続き、国民は民主主義に限界を感じていた。いわゆる政治不信だ。
それに加えてベルリンで移民によるテロ事件が起きたことで国民の怒りはピークを越えていた。
ただでさえ、マズいその状況は自衛隊が『門』に踏み入れ、ショッカーと接触したことで悪化する。
見るからににナチ式敬礼そっくりなショッカー式敬礼。
一部の軍人が着ている軍服が旧ドイツ国防軍そっくりであるなど世界中の誰が見てもショッカーをナチス・ドイツの末裔だと答えるだろう。
それもそのはずショッカー自体、ナチス・ドイツ (それと一部の過激な旧日本軍関係者)の残党が世界の覇権を握るべく組織した秘密結社なのだから仕方がない。だがそんなことはこの世界では知られてはいなかった。ショッカーがあえて隠していたからだ。
日本が公表したショッカー世界の情報によるとショッカー世界は世界統一政府が実現しており、民族間の紛争は無く、教育や医療などの福祉サービスは誰もが平等なのだという。
これを聞いたドイツ国民の反応は様々であったが大半のものはショッカーとの国交樹立を望むものだった。
それらの中には「ナチズムは間違ってなかった」という極端なものまで見られるようになった。
ネオナチ団体はこういった世論を大いに利用した。こうしてデモという名の暴動が幕を開けたのだった。
連日、連邦首相府を取り囲むように覆面を被った市民がデモを行っている。
しかし、日本で行われるような「平和デモ」と違うのは参加者からは明らかに殺気がこもっていることだ。
ベルリンでは首相官邸に至るまでの通りにある商店のガラスは全て割られ、炎と煙が立ち上り、先程まで車が行き来していた道路にはバリケードが築かれていた。
デモ隊員は鉄パイプや火炎瓶、拳銃を持って機動隊を攻撃していた。中にはどこから手に入れて来たのか手榴弾を投げつける者までいて機動隊員の被害は拡大する一方だった。
昼夜を問わず怒号が響き、アスファルトは鮮血で染まる。ベルリンの中心地を怒号や悲鳴、銃声が支配する様は正に修羅場だった。
彼らは行進しながら口々に主張する。
「移民ではなく国民に権利を!!!」
「移民共を故郷に送り返せ!!」
「ゲルマン人の為だけの国家建設を!」
「異世界の同志との国交開設を!」
その様子を首相官邸のバルコニーから遠目に見ていたメロケルは歯ぎしりしながらデモ隊を睨みつけていた。
「ヤーパン(日本)がショッカーと接触さえしなければこんなことには……!!おのれヤーパン!!」
ドイツは国家非常事態宣言を発令。暴動鎮圧の為に軍の出動を要請。その5日後、双方に多くの犠牲者を出しながらも暴動を鎮圧した。
しかし、ドイツ国民は軍や警察が国民に銃を向けたことを恨んだ。政府は自分達、国民より移民の方を守るのかと……。
これが後に大きな火種となるとはこの時はまだ誰も知る由も無かった。
日本国 首相官邸 総理執務室
日本国総理大臣 本位慎三と各省大臣らは『特地』に関して会合を行っていた。
先に口を開いたのは防衛大臣である嘉納太郎だった。
「防衛省としてはショッカーと共闘するのに賛成だ。万が一、彼らと戦えば自衛隊に勝ち目はない。それなら帝国という共通に対して共闘する方がよっぽどいいと思うぜ。」
外務大臣も手を上げて発言する。
「外務省としても同意見です。世界からの批判はありますが、ショッカーとは協調すべきです。そのせいで国連や諸外国が反発したとしても無視すべきと思います。それにアメリカからは国交開設を応援するとのコメントが来ております。」
本位は頭を抱えた。
アメリカが国交開設に賛成なのだけが救いだった。これまで中国や韓国、北朝鮮だけが公式に反対を表明をしていた。
しかしつい先日、それだけに留まらず国連も国交開設に反対する旨を日本政府に通告してきた。中国や韓国などの近隣諸国の反発はまだ無視できるが流石に国連の反発は無視できない。
本位は「特地」と「ショッカー」に国連を敵にまわしてまで得られるメリットがあるのかを考える。
そして結論が出た。
「ある」
特地は宝の山である。公害や汚れのない手つかずの自然、世界経済をひっくり返しかねない膨大な地下資源。
これらが少しでも手に入れば日本は資源大国になれる。
ショッカー世界は未知の技術の宝庫である。未だ構想の域を出ていない「ナノマシン技術」、動植物の特性を活かした人体強化技術「改造人間」。
さらに自衛隊の報告では彼らは炎龍との戦闘に生物を怪物にする「小箱」や重機関銃サイズのレールガンを使用したという。レールガンは現在、米軍が開発中だがそれでも駆逐艦の艦砲と同じぐらいだ。
それら技術の僅かでも彼らの技術を独占できれば日本の世界的な影響力は確実に高まる。
「あと外務省からもう1つ。ショッカーとの国交開設交渉ですが……。」
外務大臣の報告に本位が注意して聞く。
ショッカーとの国交開設は何としてもしなければならない事案だからだ。
日本とショッカーの国交開設交渉は難航していた。ショッカーとして今後の人口問題解決の布石として日本とはなんとしても国交を持ちたいのだが、日本としては国内からの反発や近隣諸国、国連からの反発もあって中々、国交樹立に関してハッキリとした回答ができていなかった。
ショッカーからすればそれらの日本の対応は想定内だった。
そこで国交樹立の対価にある物を提示した。
それは……………
「ショッカーはエイズの特効薬とナノマシン技術の一部を輸出すると言ってきました。」
「「「何だと!?!?」」」
ショッカーは日本世界に送った工作員からの情報で日本国内だけでなく諸外国までも国交樹立に反対していることを知った。そこでエイズの特効薬とナノマシン技術の出番なのである。エイズの特効薬はショッカー世界では1980年代に、ナノマシンの方は世界統一後すぐに開発された技術だ。
つまりショッカー世界からすれば当たり前どころか旧式の技術であるが日本世界ではどちらも開発には至っていない。
この2つは日本国民のみならず諸外国も喉から手が出る程欲しいはずなので、表立った批判はしなくなるだろうとショッカーは考えたのだ。
「エイズ特効薬とナノマシンですか……。これはショッカーに関する内外の世論が大きく変わりそうですね。」
会合は終了して本位を残して大臣達は退室する。会議室が静まり返る。
「世論か……変わってくれるといいが………。」
本位が椅子から立ち上がり、カーテンをめくって窓の外を見る。
今日も首相官邸を取り囲むように数千人もの活動家がデモを行っていた。
彼らは大声でシュプレヒコールを叫び、プラカードを掲げていた。
「本井政権の横暴を許すなー!」
「極右総理は退陣しろー!!!」
「ヘイト総理は異世界侵略をやめろ!」
「ショッカーとの国交開設に反対!」
公安からの情報で彼らが中韓北の工作員から支援を受けてデモを行っていることは判明している。しかしデモという形をとっているために彼らを逮捕することは出来ない。
野放しするしかないのである。
「どうしたものか………。」
本位は彼らを見つめながら日本の将来を憂えた。
一方、ショッカー世界では……。
某市 某アパート
やや暗いアパートの1室では窓から当たる夕陽に赤く染まった畳の上で数名の男女達が身を寄せ合って会合を行っていた。
「征服者達は日本と国交を結ぶつもりらしいな……。」
「そのようね、ショッカーの無い平和な世界にまで魔の手を伸ばそうだなんて…征服欲の塊ね。」
「それを防ぐ為にも俺達は行動を起こさねばならない。」
男達は反ショッカー組織、アンチショッカー同盟日本支部のメンバーだった。
日本支部のメンバーの総数も激減し、今では日本中に数百人ほどしかいない。これは長年に渡るショッカー警察や防衛軍による掃討作戦、一斉検挙のせいであった。
「2052年の4・13闘争では我々、アンチショッカー同盟は多くの同志を失ったが、輝かしい勝利も手に入れた。今度もやれるさ。」
「今度の計画は世界各地の同志達も賛同してくれている。俺達が世界を解放するんだ!」
そして男達は次なるテロを計画する。
「いいか……まず、政府機関をハッキングし、同時に発電施設とテレビ局に奇襲をかけて……」
リーダー格の男が地図を取り出して、ペンで攻撃地点を指していると玄関のドアが乱暴に開け放たれて、慌てた様子で仲間が入ってくる。
「大変だ!ショッカー警察が来るぞ!」
「何だと!?」
その瞬間、ショッカー警察が来ることを告げた仲間は頭を押さえて苦痛の表情を浮かべ、その場にうずくまった。
何事かと仲間達の視線が仲間から玄関のドアの方に集まる。
すると、拳銃を逆さに持ったスーツ姿の男が玄関先に立っていた。このスーツ男が拳銃のグリップで仲間を殴りつけたのだろうと彼らには容易に想像出来た。
男は警察手帳を広げた。
「ショッカー警察だ!貴様らには不穏分子の疑いがある!抵抗するなよ!」
するとスーツ姿の男が警察手帳から拳銃に持ち替え、ライオットシールドを持った武装警察官を引き連れてせまい室内になだれ込む。
「検挙ーーー!!!」
アンチショッカー同盟のメンバーは武装警察官に殴られ、蹴られ、電磁手錠をかけられていく。
「離せ!離せーー!!」
「この!クタバレ、独裁者の犬共め!」
メンバーは武装警察官に引きずられる形で外に停めてある囚人護送車に連行される。外にはマイクを持ったリポーターやテレビカメラを持った集団が集まっていた。ある記者はカメラを構えて、不規則にフラッシュを焚いていた。
「えー、只今、ショッカー警察により
テロリストの隠れ家の検挙が行われたようです!あ、容疑者が出てきました!」
「不穏分子こと、アンチショッカー同盟は2052年の沢芽市バイオテロ事件で組織の9代目指導者、南光太郎が逮捕されたことで、組織は瓦解。今回、検挙されたのは地下で活動を続ける残党の一部と見られております。」
そしてその場にたまたま通りかかった市民達はアンチショッカー同盟の逮捕者に地面にあった石を拾って投げつける。
「この悪のテロリストめ!!」
「ショッカーは正義だ!お前らは昔からずっと人を殺してばかりじゃないか!」
「ち、違う!それは悪のショッカーから世界を解放する為に………」
「ええい、黙れ!!」
弁明しようとする男の頬に巡査の1人が
平手打ちを食らわせて黙らせる。
「さっさと乗れ!」
そうやって護送車の車内にメンバーを押し込んで座らせると警察署に向けて発進した。
別の場所ではショッカー警察の刑事が記者達のインタビューに答えていた。
「今回の逮捕者達はまだテロ集団残党の一部に過ぎません。奴らはショッカーの掲げる新世界秩序建設を妨害する恐ろしい悪の秘密結社です!
今後も不穏分子は1匹残らず逮捕していく所存ですので目撃次第、通報ください!貴方の通報が世界を救うんです!」
拍手喝采。その場にいた記者や市民の
中には涙を浮かべて「ショッカー万歳!」、「偉大なる大首領様万歳!」
と叫ぶ者もいた。
その後、ショッカー警察が発表した情報によると逮捕者全員が取り調べ中に隠し持っていた青酸カリで自殺したという。
ショッカー世界のメディアはこぞってこれを「狂信的な不穏分子の自害」と報道し、世界に不穏分子の恐ろしさを改めて認識させる結果となった。
だが逮捕者の遺体は自殺にしては傷跡が多く、本当の死因が警察の拷問によるものであることは明白だった。
しかし政府による検閲済みの新聞やニュースサイト、テレビなどのメディアが報じることはなかった。
後書き
次回予告
コダ村の避難民を受け入れたショッカー防衛軍は避難民の自立を目的に翼竜の鱗を商業都市イタリカに売りに行く。だが千堂らには別の目的があるようで……。
ページ上へ戻る