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GATE ショッカー 彼の地にて、斯く戦えり

作者:日本男児
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第4話 共同偵察

 
前書き
オリジナル怪人募集します!!

ショッカー怪人に限らず何でもあり!!
※能力と容姿を書いてください。

オリジナル怪人のアイデアは感想又はメッセージでお願いします。 

 
2台の軍用トラックがオ・ンドゥルゴ北東の村に入る。
そしてそのトラックは村の中央にある広場に停車すると、荷台から次々に骸骨戦闘員と軍服姿の兵士を吐き出していく。

ショッカーは既にオ・ンドゥルゴの丘から出て、付近の街や村の占領を開始していた。

ある戦闘員は広場に掲揚台から帝国国旗を下ろして、黒を基調とした地球儀を掴んだ鷲の旗を掲げた。

「住民をこの広場に集めなさい!」

ナチス風の将校服を着た隊長とおぼしき、狐目の女性が戦闘員と兵士に指示すると、トラックの荷台に積んであったスピーカーから予め、異世界語で録音された放送を流す。 

「我々はショッカー。ここは完全に我々に占領された。住民に告ぐ、武器は捨てて広場に集合せよ。繰り返す――。」


戦闘員と兵士達は家々の戸を叩いて住民を引っ張り出し、広場に集める。

「これはどういうことじゃ!?」

広場に集められ、座らされた村人の中から村長とおぼしき老人が出てきた。

「ん?貴方はこの村の村長ですか?
ひょっとして帝国と我々、ショッカーが戦争状態にあることをご存じない?」

「それは知っているが……まさかここまで来るとは……。」

「この村は我々が接収しました。貴方方、村人は大人しくしていればショッカーの立派な構成員としてその生命と財産を尊重するつもりです!」
 
村人達は絶句した。この世界の常識からすれば、占領下の住民は奴隷となるか、その場で殺されるかの選択肢しかないからだ。しかし、異世界軍であるショッカーは「生命と財産を尊重する」と言った。住民はショッカーの隊長の言葉に束の間の安心感をおぼえた。


ショッカーが恐れていたのは占領地の住民がレジスタンスとして、防衛軍に盾突くことであった。
異世界である以上、ショッカーの知らない未知の技術があるかもしれないし、ガイアメモリやアストロスイッチのように非戦闘員すら怪人となる機械があるかもしれない。
そんな不安がショッカーにはあった。
また、ショッカー世界からすれば魔族であるファントムしか使えないはずの「魔法」を人間が使えること、エルフやキャットピープルなどの創作物でしか見ることがなかった種族がいるなどの数々の不確定要素もショッカーの占領政策を慎重にさせていた。

さらに慎重になる理由にショッカー世界の歴史も関係していた。
1991年から1993年の間に発生したショッカー初の対外戦争、「ショッカー・ブラッド戦争」である。これは火星や水星などの太陽系惑星の開発に乗り出したショッカーと「星狩り族」ことブラッド星人との間に発生した全面戦争のことである。

最初こそ、ショッカーはブラッド星の改造人間「スマッシュ」を使役するブラッド軍の奇襲攻撃を受け、地球のゲルダム州の一部を占領されてしまうが、その前年にグロンギ族やアンノウン、アンデッドなどの異種族がショッカーの傘下となっていたことで彼らと共闘して、ブラッド星地球侵攻軍を撃退した。その後は彼らの占領下となっていた太陽系惑星も『解放』し、ブラッド星国王 キルバスとの最終決戦でキルバスを処刑。戦争は終結する。
ちなみにキルバスこと仮面ライダーキルバスとの闘いでショッカーライダー部隊が奮戦したのはまた別の話。

しかしブラッド星本土侵攻の際、占領地でブラッド星人とスマッシュによるゲリラ攻撃が発生し、少なくない損害を被っていた。
さらに国王が死亡したことで治安が急激に悪化。中には我こそがブラッド星国王の次期後継者だと騒ぐ者まで出始めた。

結局、ブラッド星はショッカーにとってお荷物となったことで、防衛軍はブラッド星から撤退、クライス要塞による飽和攻撃で同星を滅ぼした。

この経験から占領地では一番に人心掌握と宣伝工作を行ってショッカーとの敵対意識を削ぐこと、不必要に敵の元首を殺害しないことが、防衛軍の中では暗黙の了解となっていた。




オ・ンドゥルゴ 防衛軍基地 司令室


「司令官、報告書です。」

「ここ、オ・ンドゥルゴの近隣の村は全て占領しました。これで近隣の村々がここ、オ・ンドゥルゴ奪還の帝国軍のゲリラの拠点となる心配は消えました。」


「うむ、そうだな。」

「我がショッカーが次に占領するならイタリカでしょう。」 

地方都市イタリカ この都市は帝国の交易の中心地であり、この都市を占領すれば帝国の物流に大打撃を与えることができ、戦争終結に一歩近づく。

「しかし……。」

司令官は地図を見てため息をつく。

イタリカはアルヌスと帝都の直線上のド真ん中にあったのだ。自衛隊と共闘関係にある以上、彼らに敵対行動と取られないように行動する必要がある。
ここでイタリカを占領すれば自衛隊に警戒され、ショッカーと日本国との国交樹立交渉に水をさすことになる。

「とりあえず、上層部に相談だな。」

司令官はこの件の判断を上層部に委ねることにした。




帝都 皇城 謁見の間

「皇帝陛下、諸王国軍の損害は死者、行方不明合わせ、数十万に達する見込みです。」

謁見の間では皇帝が玉座に座り、内務相であるマルクス伯から報告を受けていた。


「ほう、想像以上の被害が出たな。」

アルヌスの自衛隊だけでなくオ・ンドゥルゴのショッカー防衛軍とも戦ったため、連合諸王国軍の損害は非常に多かった。 

「さらに敗残兵は統率を失い、散り散りに帰途についたようです。」


「まあ、これで周辺諸国が我が帝国に反旗を翻す心配は失せたな。」

マルクスはその後の敵に対する対策をどうすべきかを聞いた。

「しかし陛下、『門』より出でた2つの敵の動向が気になります。
アルヌスの敵は丘から一歩も出ておりませんが、オ・ンドゥルゴの敵は周辺の村々を占領しております。」

「たかだか地方の村々の心配をするとはそなたもいささか神経質じゃな。
マルクス内務相。」

「は……。生来のもの故………。」

モルトは座っている姿勢を整えるとマルクスに指示した。

「よかろう。はらば股肱(ここう)の民を安堵させてやるとしよう。
アルヌスとオ・ンドゥルゴの占領地より帝都に至る全ての街・村を焼き払い、井戸には毒を撒け。食糧・家畜は全て運び出すように命じよ。さすればいかなる軍勢でも立ち往生しよう。そこに付け入るのだ。」

「……焦土作戦でございますか。
……しばし税収が低下しそうですな。」

「致し方あるまい。園遊会をいくつか取りやめ、離宮の建設を延期すればよかろう。」

モルトは勘違いしていた。確かに防衛軍と自衛隊が中世ヨーロッパの軍隊のように占領地での略奪で物資の補給を賄っていればモルトの思惑通り、立ち往生していただろう。
しかし、ショッカーと日本国には兵站の概念があり、いくら焦土作戦を行おうと意味がない。焦土作戦など行っても民から恨まれ、帝国に対する愛国心や敵に対する戦意を奪うだけである。そもそも彼らは異世界軍の現代軍であり、この世界の戦争の常識は通用しないのだった。

マルクスがモルトに小さく発言する。

「しかし、焦土作戦はカーゼル侯あたりがうるさいかと存じますが……。」

モルトは唐突にカーゼル侯爵の名前が出たことが意外で、マルクスに尋ねる。

「なぜ余がカーゼル侯にまで気を配らねばならぬのか?」

「は……怖れ多きことながら、陛下罷免の為の非常事態勧告を発動させようとする動きが見られます。」

「ふむ、おもしろい。元老院にはしばし、好きにやらせておけ。
枢密院には"よきにはからえ"とな。」

「はっ……。」

(このあたりで元老院を整理せねばなるまい。)

モルトがそう考えていると……。


「陛下!!!」

謁見の間の扉を派手に開け、赤毛の女性がズカズカと入ってくる。
モルトの娘であり、帝国第3皇女のピニャ・コ・ラーダであった。


「ピニャ・コ・ラーダどうしたのか?」

ピニャはひざまずき、頭を垂れて言う。

「陛下は帝国が危機的状況にある今、何をなされているのか!?
耄碌(もうろく)なされたか!?」

マルクスはピニャの暴言とも取れる発言に驚き、たじろぐ。

「で、殿下!いったいなにを―。」

「無論、アルヌスとオ・ンドゥルゴの丘のことだ!」

「マルクス。そなた、陛下にありのままを申し上げたか?」

「も、勿論ですとも!
異世界の蛮族共は諸王国軍の猛攻撃で一歩も外には―。」 

「この佞臣(ねいしん)め!
それはアルヌスの敵の話だろう!
オ・ンドゥルゴの敵は既に幾つかの村を占領しているのだぞ!!」
         
「現在、両方の丘を奪還するため軍の再建を急ぎ―。」

「何年かかると思っておるのだ!
そんな悠長なことではさらなる敵の侵攻を招くだけ…。」

「ピニャよ、もうよい。」

モルトがマルクスを責めるピニャを制止する。

「なるほど、悠長にかまえてはおれん。丁度よい。そなたの『騎士団』、あれと共に双方の丘に(たむろ)する敵を見てきてくれぬか? そなたのしていることが兵隊ごっこでなければ……な。」 

そして最後にモルトは威厳を込めた目付きでピニャを睨むと「よいか?」と付け加えた。

「……確かに承りました。では行って参ります―――父上。」

「うむ、成果を期待しておるぞ。」

そうしてピニャは退室し、アルヌスとオ・ンドゥルゴ偵察の支度に取り掛かった。




アルヌスでのショッカーと日本国の外交交渉以来、日本国はショッカーと対立を恐れ、諸外国や野党からの反発を抑え、共闘を申し出た。

その時、自衛隊はまだ『門』を越えたばかりで異世界…「特地」の情勢や文化、地理などの情報を把握しておらず、偵察を行い、現地の住民との交流を通して情報収集を行うことから始めようとしていた。
ショッカーとしてもアルヌス付近の詳しい状況を知るため、自衛隊と共同作戦を展開する方針を日本政府に提案した。
お互いに友好的な印象を与えることができ、ショッカー側の軍事力の一端を知れる。日本政府はこれを快諾し、自衛隊の偵察隊とショッカー防衛軍の偵察隊とで合同偵察隊が4つ編成された。

また、ショッカー側は異世界の住民と体内ナノマシンによる自動翻訳による意思疎通がとれることから、この共同作戦では防衛軍の偵察隊は自衛隊と住民の通訳も務めることとなっている。


「ショッカー防衛陸軍少佐 千堂印一です。日本国陸上自衛隊第3偵察隊の皆様、よろしくお願いします。」

「日本国陸上自衛隊2等陸尉の伊丹耀司です。こちらこそよろしくお願いします。」


そしてお互いの偵察隊のメンバーが正面を向いて整列し、敬礼する。

(うわぁ、まんまナチスドイツだよ。)

伊丹は千堂の軍服とショッカー式敬礼を見て、心の中で呟く。

防衛軍は右手を空に掲げる独自の敬礼をする以上、どう見てもナチス式敬礼に見えてしまうし、何より軍服のデザインがモロそのまんまなのである。

今回の合同偵察隊に骸骨戦闘員はいない。…というのも住民との意思疎通による情報収集であるため、強力な敵との戦闘や粛清を目的に養成された存在である骸骨戦闘員をメンバーにいれる必要はないという上層部の判断である。
もし、この場に骸骨戦闘員がいたら伊丹は余りのシュールさに笑ってしまっていただろう。


千堂は自衛隊の車両に乗り、伊丹達と交流を兼ねた異世界語のレクチャーをしていた。ショッカーの体内翻訳装置を駆使して、伊丹が異世界語を話して、おかしければ千堂が訂正するという方法をとっていた。

「サヴァール(こんにちは) ハルウグルゥー(ご機嫌いかが)。」

「そうそう、その感じです。棒読みなのが気になりますが発音は問題ありませんよ。」

(ショッカーの翻訳装置ってすごすぎるんだよぁ。俺ら自衛官が現地の言葉を覚えるのに苦労してるってのに…。)

伊丹はショッカーの科学力の高さを改めて痛感した。

「あなた方の世界は便利ですね。未知の言語にも対応可能な万能翻訳装置があるなんて。」

「いやいや、これもまだ改良の余地があります。」

千堂は伊丹の羨望に謙遜で返す。
ここで千堂は話題を変えた。

「それにしても、まだエルフやドワーフの様な異世界定番の異種族は見かけないですね。」

千堂がエルフ、ドワーフなどの異種族を「定番」と言ったことに驚き、伊丹が反応した。

「おっ、詳しいですね。向こうでもサブカルチャーは盛んなんですか?」

「ええ、我が世界、とりわけ日本エリアはアニメや漫画で有名ですね。
その中でも異世界モノは人気ジャンルの1つです。」

「それはいいですね。国交樹立したら行ってみたいものです。」

傍から見て一見、堅物そうな千堂も例外ではなかった。人並みに漫画やアニメを観て育ち、成人した今でも私物の飛電ライズフォンのマンガアプリで異世界モノをたまに読んでいた。尤もここ数ヶ月は「リアル」で異世界で戦争をしているので異世界モノの漫画を読む気にもなれなかったが。



一方、ショッカー側の車列の先頭車には女性自衛官の栗林と黒川が乗っていた。

栗林と黒川はショッカーの兵士達と話をして交流を深めていた。


「おもしろいものを見せましょう。」

赤を中心とした派手な色合いをしたオウムの入った鳥籠を助手席から持ってきて栗林達に見せる。

「コンニチハ!コンニチハ!」

「わぁー!可愛いオウム!」

「コンゴウオウムですね。加頭少尉のペットですか?」

装甲車の運転席にいた加頭はオウムの方をチラッと見ると笑いながら答えた。

「いえ、我が小隊の切り札です。」

(切り札?こんなオウムが?
おかしいな。ショッカー世界ではペットのことを切り札っていうのかなぁ。)

「名前は何ていうんですか?」

すると加頭は困ったような顔をして、少し考えこんで栗林に言った。

「……オーちゃんです。」

「…それってオウムだからオーちゃんなんですか?」

「そうです。…オウムだからオーちゃんです。小隊長がつけたんです。」

小型犬にチビ、猫にタマと名付けるぐらい安直な千堂のネーミングセンスに自衛隊員は吹き出しそうになっていた。




やがて伊丹と千堂が向かうはずの村のある森が見えたがそこは黒煙が立ち上り燃え、伊丹達は停車する。

その森を双眼鏡で覗いて、詳しく状況を確認しようとすると、そこでは赤いドラゴンが火炎を吐いて、木々を焼き払っていた。


「伊丹中尉……いえ、2等陸尉、あのドラゴンですが、何もない森を焼き払う習性があると思いますか?」

「いえ、千堂大尉。あのドラゴンは明らか何かを狙って火を吐いてますね。」

伊丹と千堂は分かっていた。ドラゴンが何に対して火炎を吐いているのかを。


「では適当な所に隠れて、ドラゴンがいなくなったら生存者の確認の為に森に入りましょう。」

「ええ、そうしましょう。」

翌朝になってドラゴンが去り、千堂達はドラゴンが焼き払っていた森に入り、生存者の捜索を開始した。

「これで生存者がいたら奇跡っすよ。」

自衛官の1人である倉田が心の中で思ったままをぼやく。
しばらく歩き、やっと村らしき集落についたかと思えばそこも焼け焦げた残骸の山と化しており、水分が抜けきってミイラ化した焼け焦げた死体が辺りには複数、転がっていた。

「伊丹隊長、これって……。」

「倉田、言うなよ。
うへ……吐きそう……。」

自衛官達が意気消沈する中、千堂ら防衛軍の兵士達は力強く進んでいく。

千堂達の所属する防衛軍はショッカーに対する不穏分子、いわばテロリストと戦うことも多く、第1小隊のほぼ全員が実戦経験のある者達であった。ましてや、千堂は不穏分子検挙・掃討の任務を任されることが多く、ミンチ状態の死体を見てもその場でハンバーガーを食べられるくらいに馴れてしまっていた。

「二手に別れましょう。その方が効率的ですし。」

千堂は伊丹に提案し、焼け野原となった村の西側をショッカー、東側を自衛隊と二手に別れ、歩いていく。


結局、千堂の捜索していた東側に生存者は見つからなかった。千堂達が捜索を打ち切ろうとしていたその時―。


「生存者!生存者がいたぞー!!」

自衛隊のいた西側から声が聞こえた。

「何!?生存者が!?」



第1偵察隊が声のした方に駆けつけるとそこには――


気を失って倒れたエルフの少女がいた。



 
 

 
後書き
次回予告

接触したコダ村の村人との逃避行が始まる。
そんな中、自衛隊第3偵察隊とショッカー第1偵察隊に炎龍が迫り、ショッカーは切り札を発動する。


乞うご期待!!
 
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