戦国異伝供書
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第八十二話 本山城へその五
「弓矢で撃つ」
「そうしてですな」
「敵を近寄せぬ」
「そうしますな」
「若し攻めて来るなら槍衾と矢の雨でじゃ」
この二つでというのだ。
「長曾我部の軍勢を倒すぞ」
「わかり申した」
「そうしてですな」
「近寄らぬならそれでよし」
「攻めてくれば倒しますな」
「そうじゃ、時は我等の味方じゃ」
親茂は兵達にこうも言った。
「戦に負けず待っておるとな」
「それで、ですな」
「後は安芸家が動いてくれる」
「そして長曾我部家は北にも東にも敵を持ってしまい」
「その分追い詰められますな」
「そして我等は助かる、だからじゃ」
今はというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「今はですな」
「槍と弓矢で守る」
「そうしますな」
「長曾我部殿はかつてこの二つで我等を破った」
親茂はこの話もした。
「ならばな」
「この度は、ですな」
「我等がこの二つで破る」
「槍と矢で」
「異種返しをしますな」
「数で優っていようとも強い相手は強い」
親茂がこれまでの戦でわかってきたことだ、元親とのそれで。
「その戦の仕方を学びじゃ」
「そして勝つ」
「それが戦ですな」
「だからこそですな」
「この度は」
「こうして戦う」
こう言ってだ、そしてだった。
親茂はこの布陣で何としても勝つつもりだった、すくなくとも負けることはないと思っていた。だが。
四角にした方陣の縦と横、そのつなぎ目の斜めのところにだった。
元親は軍勢を攻め込ませた、まさにそこはだったのだ。
「敵の槍も矢も少ないな」
「はい、縦と横に比べて」
「ほぼないに等しいです」
「正面も横も堅固ですが」
「斜めは」
「そうじゃ、だからその斜めをじゃ」
まさにそこをというのだ。
「攻める、それもじゃ」
「兵を二手に分けて」
「そしてですか」
「それぞれの方角から攻めて」
「突き破りますか」
「これが円形ならかえって攻め辛かった」
若し本山家つまり親茂がその布陣ならというのだ。
「そうであった」
「円形ならばですか」
「敵陣がそれならば」
「むしろですか」
「円形ならどう攻めても対することが出来る、若しくは斜めに櫓でも置かれてもまずかったが戦の急の布陣であるからな」
だからだというのだ。
「そこまでは出来なかったか、しかしな」
「今の敵陣ならですか」
「斜めを攻めればですか」
「崩せますか」
「一気に突っ込み堀は持っている土を入れた袋で塞いでいき」
そしてというのだ。
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