ほのぼの巫女の推理

　　　　　　　　　　　　　　　　ほのぼの巫女の推理
　井東愛奈は八条大社の巫女をしている、アルバイトであるがあることで常にかなりの評判になっていた。
「凄く可愛い巫女さんがいるな」
「ああ、胸も大きいしな」
「あのおさげをツインテールにしたのがいいよな」
「柔らかい感じのおさげでな」
「眼鏡も似合ってるし」
「滅茶苦茶可愛いな」
　それで多くの男がよく神社に来てさきを観ている、愛奈はそんな彼等を見て穏やかな声でこう言うのだった。
「皆神様のところに来てるのね」
「ちげーーよ、お姉」
　愛奈と一緒にアルバイトで巫女をしている妹のはるかが言った。やや切れ長の強い視線を持つ目に顎が少し尖った面長の顔に姉と同じ色だが直毛の赤毛を左右でおさげにしている。胸はあまりないが手足は長い。
「皆お姉を観に来てるんだよ」
「そうなの」
「そうだよ、その胸と顔をな」
　姉の自分のものとは比べものにならない九〇はある巨乳と穏やかで可愛らしい感じの顔を見つつ話した。
「観に来てるんだよ」
「そうなの」
「というか気付けよ」
　はるかは姉にこうも言った。
「人の視線の先位」
「そう言われてもね」
「お姉は呑気過ぎるんだよ、というかな」
「というか？」
「お姉も大学生になったろ」
「八条大学文学部に入ったわ」
　この春無事に進学した、尚はるかは八条学園高等部商業科の二年生である。彼氏はいないが特に気にしていない。
「よかったわ」
「大学生になったら男の一人や二人な」
「別にそんな話は」
「気付いてねえだけだろ、お姉が」
　妹にはこのことがよくわかった、それで言うのだ。
「ただ単に」
「そうなの」
「そうだよ、っていうかな」
　二人で境内の渡り廊下のところを掃き掃除をしつつ話した。
「お姉って呑気過ぎるんだよ、外は悪い奴も多いだろ」
「ヤクザ屋さんとか」
「そんなのもいるからな」
「気をつけないといけないのよね」
「そうだよ、そりゃお姉に悪い虫がついたらいけないからな」
　それでとだ、はるかは愛奈にこうも言った。
「あたしがいつもガードしてるけれどな」
「有り難うね」
　はるかは昔から気が強くかつ腕も立つ、小学校の時からマーシャルアーツをしていてかなりの腕だ。尚愛奈は愛奈で合気道二段であったりする。格闘技好きな二人の父親が通わせて護身に身に着けさせたのだ。
「私も頑張るけれど」
「まあお姉も合気道やってるしな」
「いざって時はね」
「ちょっとやそっとの奴だとな」
　例えそれが悪意を持った者でもというのだ。
「大丈夫だろうけれどな」
「それでもなのね」
「ああ、あたしがいるし」
　はるかはさらに話した。
「合気道で大丈夫にしても」
「念には念を入れて」
「そのうえでな」
「生きていかないと駄目なのね」
「そんなに呑気だとな」
　妹は姉を心から気遣って話した。
「本当に危ないぜ、例えば猫にしてもな」
「可愛いわよね」
「ひょっとしたら狂犬病かも知れないだろ」
「もう日本にないんじゃ」
「それでも億とか兆が一ってことあるしな」
「それでなのね」
「何でも気をつけないとな」
「駄目なのね」
「ああ、そこは頼むぜ」
　心からとだ、はるかは姉と一緒に掃除をしつつ話した。そしてだった。