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学園黙示録 Highschool Of The Dead ~壊れた世界と紅の狼~

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イレギュラーだからこそ出来る行為

 
前書き
三か月ぶりの投稿、申し訳ありませんでした。

ちょっと腰の方をやり掛けまして、医者の判断ではヘルニア一歩手前だったそうです。
・・・・・あぶねぇ。

そして、あと五日で新年ですね。
出来れば、今年中にもう一話投稿したいところですが、それは出来ればなので高望みはしないでください。 

 
~真紅狼side~
俺達は高城の親父さんに頼まれて、避難者の説得にあたったがこれまた現実逃避者ばっかで話にならねぇ。
すると、高城が墓穴を掘る一言をうっかりと言ってしまった。


「―――どうすればいいかは、パパが教えてくれたでしょ」
「あ、バカ!!」


俺が声を上げた時には既に遅く、説得されていた一人の女性が何かに気がついたように大声で避難者達に言い聞かせる。


「―――皆さん、聞いてください! この娘は殺人を肯定する男の娘で、私達にも殺人者になれと言っているんです!!」


あちゃ~、やっちまった。
俺は軽く頭を抱えた。
説得している者がここの所縁の家ではないとバレなければ、うまく説得がいってたんだがなぁ………バレたらこうなることは予想できたのにミスったな。
現実逃避者達は、俺達を“子供”扱いしその場から拒絶し、“大人”である自分達のみで話し合いを勝手に進めていった。


「……めんどくなってきたし、俺がやるか」
「「えっ!?」」


孝と平野は、驚いた表情で視線をこちらに向ける。
なんだ、その目は………?


「「蒼騎/真紅狼が………説得するのか?」」
「そうだよ。安心しろ、御別橋と違ってただ宣言するだけだから。あのような行動には出ねぇよ。………ということで、高城、ちょっとどいてくれ」
「わかったわ」


高城を後ろに下がらせた後、俺は注目させる為に真紅の執行者を抜いて、上に二、三発撃った。


ダ、ダダンッ!


「ハイ、ココに居る人達、ちゅう~~も~~く!!」
「なっ、あ、アンタ誰よ!!?」
「よく聞けよ~? 一度しか言わないから。―――アンタ等が現実を理解しないこともアレを『人間』だと認識することはよく分かった。だからこそ、言わせてもらおう。俺は以後永久に、貴様等が<奴等>に襲われようが、助けを求めようが絶対に助けない。勝手に喰われて野垂れ死ね。―――以上だ」


俺は指を突き付けて、宣言した。
すると、喚き始める現実逃避者達。言われたことが理解出来したのか、一人の男が「ふざけるな!」と言って俺の胸倉を掴み上げようとしたので、俺はその腕を弾いて左手で殴り飛ばした。


「がっ………!」
「ふざけるな。だと? なら、現実を認めろよ!! それが出来なきゃ死ね!! いつまでも甘ったれるのもいい加減にしろ!! もう平穏だった日常は戻って来ねぇんだよ! すでに世界は壊れて、新しい世界に俺達は居るんだ。それを認識しろって言ってんだ。だが、アンタ等は目を背けた。そして<奴等>をいまだに『人間』と………“病気にかかった人間”だと認識している。だから、俺は助けないって言った。事実から目を背けている奴等を助ける義理なんかどこにある? ………どうせ、この話が終わってもアンタ等は認識を変えないだろうよ。だから、宣言したんだ。俺はココでアンタ等を斬って捨てることをな」


俺は冷酷に別れの宣言を言い放った後、そこから去った。
高城達も少し距離を置いてから、ついてくる。
平野が高城を労っていて、自分の経験談を語る。
「自分も過去に同じ行為をしたことがある」と語って、孝がそれに頷きながら「勉強になるなぁ」と口に出していた。
雑談している孝達を置いていき、俺は再び薬を塗っている麗達の元に向かった。


「うぃ、麗。塗り終わったか?」
「あ、真紅狼~助けてぇ~~!!」
「静香、塗り終わったのか?」
「んーん、まだよ~。これから~」


静香は特製の塗り薬を手に塗りつけて広げていく。
その仕種に麗は小さく「ひっ」と怯えた声を上げていた。


「しょうがない………俺が塗ってやる」
「え!!?」
「静香、薬貸してくれ」
「はい、これ。私はお邪魔だから出て行くわね~~」
「いや、静香もここに居てくれ」


静香の腕を掴む。


「………真紅狼は複数プレイがお好みなの?」
「違うわ。………いや、そうかもしれん」


よくよく考えてみれば、前の世界でも複数で………………んなことは置いといて!
麗は腰を強く打ったと言っても、重点的にどの辺りをやればいいか、俺には分からないから指示してもらわないと困るんだよね。


「そうじゃなくて、静香から見て重点的にやるべきところを教えてもらわないと、変な所に薬を塗って意味がなかったら、無駄じゃん? だから、居て欲しいんだよ」
「そーいうことね~」
「そういうことだ。そんじゃあ、麗」
「な、なに?」
「背中ちょっと触れさせてもらうぞ?」
「う、うん」


顔を真っ赤にしてる麗。
ヤバイ、可愛くて襲いたくなる!
が、今は我慢だ。
俺は上着を脱いで、薬を手に付ける。


「いくぞ~」
「くぅぅぅ~~染みるぅぅぅ~~(涙目)」
「……っと、この辺か? 静香?」
「うん、そこそこ。打った所を中心的に広げていって。ちゃんと塗っておかないと長引いちゃうからね」


俺は麗の腰辺りを滑るように塗る。
麗はさっきよりも大きな声で叫ぶことは無く、小さな声で我慢していた。


「ほい、終わり!」
「うぅ~~」


俺は桶に溜めていた水の中で手を洗って、塗り薬を洗い落し、再び麗の寝転がっているベッドに戻る。


「あんまり怪我するなよ、麗」
「だって、今回はしょうがないじゃない。あんな所にワイヤーが張られているとは思わなかったんだもん」
「あたしも気がつかなかったわ~」


静香は、全然気がつかなかったような声を上げながら俺の方に寄りかかって来る。
麗も同時に寄りかかってきた。


「どうした、お二人さん?」
「んー、ちょっと抱きつきたくなっちゃった」
「私も」
「何故に?」


訊ねると二人は声を揃えて教えてくれた。


「「真紅狼に女の子のルールを教えてアゲル」」
「ルール?」
「そう、ルール。女の子が好きなのは、“可愛い男”と“可愛がってくれる男”なのよ」


麗が猫のようにひときり身を寄せてくる。


「俺はどっちも当てはまらないぞ。掠りもしてねぇじゃん」
「そうよ。でも、真紅狼は例外。貴方は私達を支える為に必要な男よ。私は貴方になら何をされてもいいわ……………だって、護ってくれるんでしょ?」


静香は上目遣いで聞いてくる。


「そりゃもちろん。“護る”と決めた以上、命が続く限り護ってやるよ」
「………じゃあ、その証に私達二人にキスして………?」


静香は顔を近づけてくるので、俺も流れに乗ってキスする。
最初は唇だけだったが、止まらず舌を絡ませる。


「ぅん………ぷはぁ………あぁん………」


静香が息を吸う度に襲いたくなる衝動を抑え込む。
俺は空いている左手を胸に当てる。
服の上から揉むが、我慢出来ずに服の中に手を突っ込み、ブラを退けて、手の痕が付くぐらい強く揉む。


「あんっ」
「すげぇ重量感、何センチ?」
「………104cm」
「デカっ!(ゴクリ」


こんな爆乳で挟まれたら………………興奮すんなぁ。


「………もうちょっと人がいない所だったら、やってもいいわよ?」
「その言葉、覚えとけよ静香。………次は麗だな。おいで、麗」
「うん♪」


麗とも唇を合わせるが、やっぱり舌を絡ませた。
ある程度、舌を絡ませたところで俺は麗の舌をしゃぶった。
そのことに麗はビックリして、喘ぎ声を上げる。


「んんっ」


体が震え、息も荒くなっていくのを感じ取った俺は、ギリギリのところで止めた。


「はぁ………はぁ………。 なにゃんで、やめるのぉ?」
「蕩け過ぎだぞ、麗。静香が言っていたように、人が多いからな。俺の家だったらそのまま続けてもいいんだけどな。また今度だ」
「今度は続きをちゃんとしてね?」
「オーライ。お姫様方」


俺は立ち上がり、上着を着直す。
もちろん、静香も麗も着衣の乱れがない様に直して孝達と合流することにした。
~真紅狼side out~


~麗side~
私達が下に降りると玄関先で孝がリュックサックを担いで、私達の両親を救出する為に準備していた。


「………孝、行くの?」
「ああ、高城の親父さんと話して、『好きにすると言い』と言われたからな、行くつもりだよ」


そういうと、廊下の方から毒島先輩が現れる。
その姿は、男性陣から色めき立つ声が湧きあがる服装であり、腰には日本刀が収まっていた。


「私も行こう」
「毒島先輩もですか?」
「ああ、君達の御両親を助け出した時の前衛がいなければ、キツイだろうしね」


私達は、取り敢えず高城のお父さんが孝に用意してくれる“足”というモノを見に行こうと外に出ると視界に二度と見ることは無い人物が目に映り、私は手に持ってる銃剣でその男に迫った。


『―――いやはや、さすがは紫藤議員の御子息で有られる。生徒さん達を救出してここまで連れてこられるとは………』
『いいえ。今の私は一介の教師でしかありませんよ。私の事はよろしいので、せめて、助け出した生徒達だけでも引き取ってはもらえませんか?』


よくもまあ、そんな台詞が吐けるわね。この外道!


「………なかなかに立派じゃない、紫藤せ・ん・せ・い?」
「み、宮本さん………?」


様子に気が付いた真紅狼達がこちらにやってくる。
すると………


「んー? 一人足らないな。……ああ! 自分の駒に成り損ねたから、殺したな?」
「何を聞き捨てならない事をいうんですか、蒼騎君」
「動揺が隠せてないぜ、小者先生。隠すならもっと、はっきりやることだな」


事実を叩きつけられた紫藤の表情は、憎々しい視線で真紅狼を睨みつける。
私はこの男が置かれている立場を分からせる為に、銃剣を頬に付けて、薄らと血が滲み出るように押しつける。


「………私がなんで銃槍術が強いのかは、貴方知ってるわよね? 父が県内の大会でいつも優勝しているから! 父は、どんなことにも屈しなかったのに、その父が私に対して謝って来たのよ!! 『自分のせいで、私に迷惑をかけた』と泣いて謝って来たわ!」


さらに私はもっと押しつける。
その動作に紫藤は絞るように声を出す。


「さ、殺人を犯すつもりですか………? 刑事の娘が?」
「アンタにだけは言われたくは無いわよ!!」
『ならば、殺すがいい!!』


その大声に私は振りかえった。
そこには、高城のお父さんがこちらにやってきていた。


「そこの男の父親とは幾つかの関わりがあるが今となってはどうでもいい。キミが殺したいのであれば、殺せ」


竦ませるような声音で宣言すると、さきほど真紅狼達が説得しに行った避難者の一部が抗議の声を上げたが、それを視線と声だけで黙らせる。


「ちょっ、そんなk……………!」
「無論、私もそうする!!!!」


すると、試度も開き直った様に両手を大きく広げて芝居がかったように発言する。


「いいでしょう! 殺しなさい! ですが、貴女は私を殺した罪と罪悪感を背負っていくことになります。その事を私の命で教えられることが出来るなら、これも私からの最高の“教育”です!!」


私は、真紅狼を皆にはバレない様に見ると真紅狼だけはその視線に気が付いたのか、穏やかな表情をしていた。
そして口元が動き、『か………ち………が………な……い…ぞ………?』となんとか読み取ることが出来た。
そうね………こんな奴に躓いてられないし、私には真紅狼が居るものね。
真紅狼も………他の皆も私が“生きている人間”を殺す所なんて見たくないだろうし、なにより真紅狼の言う通り―――殺す価値がない。
私は、銃剣を降ろして真紅狼達の元に戻る途中で、訊ねられた。


「それがキミの答えかね?」
「………殺す価値も無い存在なので!」
「ハッハッハッハ!! それもよかろう!!」
「おかえり、麗」


真紅狼は、今まで見た事のない笑顔で私を抱き寄せてくる。
私は、そのことがとても嬉しくなって答えた。


「うん、ただいま!」


私も同じように真紅狼に抱き付く。
真紅狼の体温……………凄い落ち着く………………。


「………そんじゃ、今度は俺の番かねぇ」


真紅狼が不意に言葉を発すると、「ちょっと離れててくれ」と言い、私は真紅狼から離れると真紅狼は紫藤の前に立った。
~麗side out~


~真紅狼side~
俺は、紫藤のある単語に反応した。


『―――貴女は私を殺した罪と罪悪感を背負っていくことになります―――』


“罪”に“罪悪感”ね………。
そんなモノ、とうに忘れたな。
それに俺の(れい)にナニ、説教垂れた事言ってんの?
俺に喧嘩売ってんのと同意義だってことだぞ、カス野郎。


「………そんじゃ、今度は俺の番かねぇ」


名残惜しいが麗との抱き付きをやめて、俺は紫藤の前に立つ。


「よう、小者先生」
「雌ガキにクソガキがァ………私がどんな………」


雌ガキ………だと?
俺はその単語を聞き取った瞬間、次の言葉を紫藤が発す前に俺は右手を振りかざし、そのウザったい面を殴り倒した。


バキィ………!!


「がっ………?!」


殴られた紫藤は、状況を読み込めずにいた。
俺はそのままマウントポジションを取りながら胸倉を掴み上げた。


「誰の女に対して、侮辱してやがる? 俺の女だぞ? “雌ガキ”じゃねぇーんだよ、小僧。それとな、アンタさっき罪とか罪悪感とか言ったけどな、誰もがそんなモノを背負って生きてねぇんだぜ? 俺なんか、人を殺しても罪悪感すら感じない。ただただ、殺したいから殺す。それだけだ」
「なら、キミはここで殺せますか!? 人を!! この大勢の前で!!」
「ああ、殺せるよ」


俺は真紅の執行者を取り、こいつと共に行動していた元クラスメイトで、二人で一緒に居た女子を平然と頭を撃ち抜いた。


ダンッ………ダンッ………!!


「ほら、殺せた。だが、女子二人ではなく、片方は角田にすればよかったな。バスの一件があったし、ここで死んでおく方が“人間”として幸せだったしな。ま、テメェのくだらん教えに染まっている連中だ。娼婦のように堕ちた二人だし、殺しても問題はねぇか」
「キミには、人間としての感情はないのですか!」
「あるよ? ただし、俺が大切だと思う者達に対してだけね? 後は殺す感情しか持ってないけど………」


俺は人を殺した人間とは思えないほどににこやかに答える。
その表情に怯える紫藤。


「さぁーて、俺もスッキリしたし、高城の親父さん、どうぞ勝手に裁いちゃってください」
「………貴様は去れ! そこの居る者達も同じように! 本来なら、その腐った根性を叩き直してやってもいいが、我々には時間がない。乗ってきたバスで追い払え!!」


マイクロバスに追いやられていく紫藤一派の中で、角田と紫藤が俺の横を通り過ぎた時ぼそり………と呟いた。


「………いつか必ずテメェをぶっ殺してやる」
「………キミには、必ず絶望と後悔を与えてあげましょう」
「やってみろ、カス共。女漁りするしか能がねぇカスと三流にもなれない小者がやれるか………実に愉しみだよ」


その言葉に二人は表情を一変させていたが、マイクロバスに押し込められて高城邸を追いだされていった。
俺は、麗の元に戻る途中で高城会長に呼び止められた。


「待て、蒼騎君」
「なんですか?」
「………キミは何(の信念)を持って生きている?」
「俺はいつだって“大切なモノを護る為に”生きてますよ。今回は、その大切なモノが傷ついたので、連中に警告兼脅迫をしたんです。―――『次やったら命は無い』って意味を込めて………ね」
「………そうか、君の信念が見失わないことを祈ろう」
「大丈夫ですよ。俺がその事からブレることはあり得ないし。そもそも―――――――――――ですし。では、失礼します」


高城会長に礼をしてから、麗の元に向かう。
会長はこちらをずっと見ていたが、俺は気にせず歩いていく。すると、一人立ちつくしている麗に孝が何か声を掛けようとしたが、その場の空気を感じ取ったのか、もしくはかける言葉が見当たらず麗から発している雰囲気に怯えて口を噤んだ。


「………麗」
「真紅狼………」
「気にするな。お前が気に病む事じゃない。連中は俺が気にいらないらしいし、いずれくだらん餌を持って俺の前に現れるから、その時にブチのめせばいい。大義名分さえ作っちまえば、後はこっちのモンだ」
「あはは………、相変わらず包み隠さず本音を話すわね」
「ストレートに言った方が話が進むだろ?」
「それもそうかもしれないわね」


麗の顔に再び笑顔が戻ってた時、孝達の方ではどうやら静香の親友の携帯番号を思い出し、今電話をかけていた。
ここまで来たとなると………この後、戦闘だな。
ヒャッハー!! ストレス解消戦だーーーーー!!!!
………スマン、ちょっとテンションがハイになってた。
テンションを高めながら空を見上げるとその数分後、案の定、空で爆発が起きた。


「そろそろ、アップし始めるか」
「??? ……どうしたの、真紅狼?」
「いやなに、そろそろ事が動くからな、面倒事がここにやってくる前にアップし始めようかと思ってよ」
「………っていうことは、何かしらの出来事が起きるのね?」
「ま、そうだな。本来なら、ここで別れ道なんだがちょっとだけ手を加えて、少しだけ先に延ばしてやるよ」


俺が麗の疑問に答えると、周りで聞いていた高城達が訊ねてくる。


「何が起きるのかしら、蒼騎?」
「先程、空で爆発があったろ? アレ、ガンマ線でよ、電子機器が完璧にイカれたんだわ。一部を除いてな」
「え、じゃあ、ケータイ使えないの?!」
「そうなるな。車も当然ダメだな、ケーブルがアウトだ」
「蒼騎君、先程、君は一部を除いてと言ったが、その言いようだと安全な場所を知ってるみたいに聞こえるのだが?」
「ええ、知ってますよ」
「それはどこかね?」
「―――――俺の家です。家の中は荒らされていませんし、侵入もされて無い。さらには、絶対に入られない理由があるんです」
「………ここから………『ダンッ!!』………むっ!?」


突然の発砲音で全員がそちらに気が向く中、俺だけは手すりに背中を預けて、再度声を発す。


「発砲音ってことは、どこからか<奴等>が侵入したから、防衛している誰かが発砲したんでしょうな。直に<奴等>がココに辿り着くのも時間の問題だし、ここを捨てて俺の家に向かいません? 食糧や安全、さらには電気などと言ったモノも確保できてますので、電子機器が使えない現状況の中ではもっとも安全だな」
「ここから、近いかね?」
「ちょっと距離がありますが、今、鋼糸で最短ルート上にいる<奴等>を排除してますので、今から出発できるのであればほぼ安全は確保出来てますよ?」


会長は悩む。
だが、すぐに決断した。


「全員聞け! これより我々はここを捨てて蒼騎君の家に向かう!! 戦う気概がある者は前に出て、戦え!! 女、子供はその後ろに着いて来い! 」


上から叫ぶと、会長の部下達は忙しく動き始め、武器やらなにやらと準備をし始めた。


「蒼騎君、道案内を頼めるかね?」
「会長達はどうします?」
「我々はここに残り、引きつけてから別ルートで君の家に向かう」


ああ、やっぱり、この人達の事だ。そう来ると思ったよ。
だが、もうしばらく生きてもらうぜ。


「ちょっとママ、それって………!! 『悪いがそうはいかねぇぜ』………蒼騎?」
「今からやってくるのは“団体”じゃねぇ、“軍団”だ。その中で喧嘩売って生き残れる保証はねぇ。例え、刀の腕がいくら凄かろうがな。だが、俺なら生き残れるし、上手くやりゃここら一帯の<奴等>を纏めて殲滅出来る。だから、必然的に俺が残らなければならない」
「だが、君にはここの者達を無事に送り届けなければならない義務がある!!」
「ああ、それなら安心しろ。今、俺の家までの道が光るように仕掛けが作動した。それを辿れば、俺の家の手前に着く」
「手前って、どういうことよ?!」
「高城、一々甲高い声を出すな。俺の家の周りには魔術結界を張り巡らせていてな、同時に防御結界も張り巡らせているんだよ。特定の対象者が結界を越えようとすると反応して、真空の刃がその対象者を襲うようにな。それを解除するには俺のあるモノが必要で、新鮮なモノじゃないと受け付けない様にしてあるから、手前で止まって欲しいんだよ」
「なら、アンタも一緒に来ればいいじゃない!」
「そうすると、<奴等>が追ってくる形で移動しなければならないんだぞ? 俺がいくら強かろうが、キツイものがある。全員が全員のように行動すると思うか? 恐怖で動けない者も出てくれば、勝手に逃げだそうとする奴も出てくる。そいつらには護りの対象に入らんぞ? ま、安心しろ、一応護衛も出すし、お前等が辿り着く時間を見計らって俺もそちらに向かう。待つ必要はない」
「………君一人で本当に出来るのか?」
「ああ、ド派手に暴れてやるよ」
「なら、君の提案に乗ろう。―――吉岡!! 急いで準備をしろ! 避難者達には最低限の荷物だけ持たせるのだ! それと得物を持ってこい!!」
「はい!」


俺は庭が一望できる場所に立つ。
そして、<奴等>の先頭を視界に捉えた後、自分の横に艦隊殺しの大槍を出現させて暴れる刻を待った
慌ただしく高城会長の部下達が動きまわる最中、ついに移動の準備が出来たと同時に<奴等>が高城邸の目の前まで迫って来ていた。


「――会長! 準備が出来ました!」
「うむ。では、蒼騎君」
「分かりました。――――――赤原猟犬(フルンディング)ッ!!!」


俺はバビロンからフルンディングを取り出す様に命じる。
財宝(なか)から飛び出た。刀身が歪んだ剣は、俺の目の前で赤い猟犬の姿となって止まった。


「フルンディング、これより高城の親父さん達を俺の家に移動させる。その間、お前は道中の安全を確保しろ。侵入してくる<奴等>を喰らえ」


俺がそう命じると猟犬は一際赤く光る。
そして、先行し先にルートに向かった。


「―――では、行ってください」
「………あの光っている道を進めばいいのだな?」
「そうです」


高城会長は麗達を眺めてから俺達に言った。


「キミ達は……挨拶ぐらいしてから向かうといい。我々は先に行く」
「では、会長。………後ほど」


高城会長は無言だったが、背中で語っていたので俺は何も言わなかった。


「真紅狼………」
「まぁ、安心しろ、麗。すぐに追い付く。ちょっと軽い殲滅戦を行うだけだからよ」
「絶対に追いかけてきてね?」


麗の声は心配していると言う気持ちが声にとても含まれていた。
その気持ちを和らげるために俺は麗に抱き付き、耳元で囁いてやった。


「(………絶対に帰って来てやるから、その代わり何か“御褒美”をくれ)」
「(“御褒美”?)」
「(そ、“御褒美”。その内容によってはメッチャやる気だして、速攻で終わらせるから)」
「(じゃ、じゃあ、さっき『続きをして』って言ったけど、真紅狼のしたい様に蹂躙していいよ)」
「(メッチャやる気出た)」
「(現金だなぁ、もう!)」


よし! さっさと終わらせるぞ!
宝具は、カラド、レーヴァテイン、デュランダルでいいか。
抱き付くのを名残惜しみながら離れると同時に邸内に<奴等>が遂に侵入し、大量に雪崩れ込んできた。
俺は、麗達に早く行くように命じる。


「来やがったか、早く行け!」


麗達は最後まで俺の姿を見ようとしたが、孝達に手を引っ張られながら裏口から高城邸を脱出し、俺の家に向かって行った。
俺も麗達の姿が見えなくなるまで見送り、完全に視認できなくなったのを確認した後、眼前に群がる生きる屍軍団を見下ろし、雄叫びを上げながら突っ込む。


「うぉおおおおおおおおおおおおおっっ!!」


艦隊殺しを<奴等>ごと地面に突き刺し、圧殺する。
その瞬間、肉と骨の潰れる音が無数に響き渡る。
ここに麗達が残っていたら、目を背けるだろうが今ここに居るのは、俺のみ。
故に、どんなに醜悪で無残で残虐な殺戮劇を行っても怯えられる事は無い。
地面に突き刺した碇をすかさず周りに振りまわして、引き裂き、薙ぎ潰す。辺り一帯は<奴等>だらけなので、血の噴水のように至るところから血が飛び出る。当然、俺は数分で全身血だらけになるが一向に構いやしない。
今の攻撃だけで五、六十人は屠ったがそれでも数は減らず、むしろ増加を辿る。
俺は、出入り口となっている門に“偽・螺旋剣(カラドボルグ)”を全力で放つ。
もちろん、真名解放しているので放たれた瞬間、吹き荒れる暴風が<奴等>ごと周囲を抉りながら飛んでいき、大幅に数を減らす。
次の宝具を扱うまでにも<奴等>は襲ってくるが、俺はそれを右脚を軸として円運動で捌いていく。
入口を一時的に殲滅し終えた後は、麗達の後を追おうとする連中を対応した。
“王の財宝”から取り出したのは、炎によって創られた剣。
俺はそれを居合いの様に構えて、真名を解放しながら振るう。


「統べてを焼き尽くす(レーヴァ)………………終末の獄炎(テイン)ッッ!!!」


振るった瞬間、摂氏一万度を超える炎が光の速さで奔り、一瞬で<奴等>を炎が捉えて焼き尽くす。
普通の炎では奴等は物ともしないが、この炎はかの有名な北欧神話にて神々の世界を焼き尽くした終末の炎である。神々や神々の世界を燃やす程の威力を誇る炎の前には、奴等とて耐えきる物ではない。
炎に包みこまれた奴等は肉は炭となり、骨は灰となって文字通り焼却された。
そこからは、ただただ目の前の獲物を喰らおうとする奴等が終末の獄炎に突っ込み消えていくと言う消化試合となった。



十分後・・・



炎も消えて高城邸に入り込んだ<奴等>は、全て焼却された。
血の海となる筈だった庭園も炎が蒸発させ、更地となっている。残っている爪痕と言えばカラドボルグによって抉れた地面だけである。


「さて、あらかた殲滅出来たし、後は……………」


俺は再び高城邸の前に伸びている通路を見ると、未だにたくさんの<奴等>が群がりこちらにやってきていた。
俺はキリがないと判断し、道そのモノを封鎖することにした。
もう一度だけ、“王の財宝”に命じて大剣(クレイモア)を取り出した。
そのクレイモアは、澄みわたった刀身で極寒の冷気に包まれていて、持つだけ手が凍りそうだった。
その大剣を両手で持ち、上まで振りかざし…………そして地面に叩き付けた。


「凍てつく極寒の氷檄(デュランダル)


振り下ろされた瞬間、今度は獄炎とは真逆の極寒となって周囲全てを凍らせた。
通路ごとぶ厚い氷壁が出来上がり奴等の進入を阻ませることに成功し、取り敢えずこれで追われるという心配は無くなった。
カラドボルグを回収し、俺はさっさと麗達の後を追う為にヴィマーナを取り出し、飛んでいった。
~真紅狼side out~


うぉー、猛暑と極寒が半々で体調が崩れそうだ。 
 

 
後書き
今回出てきた宝具の技と真名は、こちらのオリジナルです。

r-18に変えときます。
近々、そういう話を創るんで。 
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