戦国異伝供書
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第七十九話 初陣その三
「はじまりじゃ」
「左様ですな」
「だからこそな」
「初陣の後もですな」
「学問と武芸に励むという今の返事こそがじゃ」
まさにそれがというのだ。
「お主の器じゃ」
「そうなのですな」
「その器、必ずわかる時が来る。お主は姫ではない」
その様な弱々しい者ではないというのだ、国親は嘘偽りのない心からの言葉で我が子に対して述べるのだった。
「決してな」
「強いとですな」
「左様じゃ、ではこれからも励め」
「わかり申した」
「どの様な珠も磨かねば珠とならぬが」
それでもとだ、国親はさらに話した。
「珠は磨けば磨く程じゃ」
「輝きますな」
「そうじゃ、お主はな」
「その珠ですな」
「磨きに磨かれ続けておるな」
「だからこれからも」
「己を磨け、そもそも石も磨けば珠になる」
石、即ち何でもないものでもというのだ。
「どの様な石もな」
「よくなりますな」
「そしてその石からの珠も磨けばな」
「さらによくなりますな」
「何もせぬと何にもなれぬが」
「何かすれば」
「必ず何かになるのじゃ」
そういうものだというのだ。
「磨けばそうなるしな」
「孟子にもありますな」
「そうじゃ、磨き続ければな」
「必ずよくなりますな」
「何をしても駄目ということはない」
「鍛錬を続けていけば」
「それでよくなる」
そうなるというのだ。
「それをわからぬ者達も多いが」
「それがしは違いまする」
「そうじゃな、ではな」
「はい、死ぬまで学問と武芸は続けます」
「そうせよ、ただな」
「ただ、といいますと」
「後々安芸の毛利家と付き合うことになるやも知れぬが」
それでもというのだ。
「毛利殿には注意せよ」
「あの御仁は、ですか」
「うむ、謀神というがな」
「その謀がですな」
「戦国の世でもあってもな」
戦だけでなく謀もまた常である今であってもというのだ。
「あまりにも酷い」
「確かに、あれは」
「謀は見事でもな」
「周りからですな」
「信を得られずな」
それでというのだ。
「よくない」
「その通りですな」
「内には違うが」
「民には慕われているとか」
「そちらの政はいいのでな」
その為にというのだ。
「それはよいが」
「それでもですな」
「やはりあの様な謀はな」
「あまりにも過ぎますな」
「だからじゃ」
「毛利殿は真似してはならぬ」
「謀は程々にじゃ」
そうして収めよというのだ。
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