戦国異伝供書
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第七十八話 紺から紫へその九
「大丈夫か」
「そう思うしかないわ」
「全く以てな」
「あの方が家を継がれたなら」
「当家は滅ぶのではないか」
「土佐は多くの家が殺し合う国じゃ」
「そうした国じゃ」
それが今の土佐だというのだ。
「そうした国にあってな」
「ああした頼りない方が主では」
「我等は滅ぶのではないのか」
「遂にな」
「大殿の時は何とか盛り返したが」
「今度こそじゃ」
「滅ぶのではないか」
こう言って不安を覚えていた、そう覚えざるを得なかった。そうしたことを話してそのうえでだった。
長曾我部家の将来を憂いていた、だが。
遠く尾張にあってだ、織田信長が家臣達に話した。
「長曾我部家の嫡男であるが」
「はい、あのですな」
「姫若子と呼ばれている」
「あの御仁ですな」
「殿とお歳が近く」
「そろそろ元服されるとか」
「世の者はあの者を頼りないと言っておるが」
それでもとだ、信長は述べた。
「それは違うな」
「と、いいますと」
「あの御仁もですか」
「天下の傑物ですか」
「そうなのですか」
「あの者もな」
信長は笑ってこうも言った。
「やがてはな」
「殿の家臣にですか」
「そうされたいのですか」
「いずれは」
「わしは欲が深い」
笑ったままだ、信長はこうしたことも言った。
「だから優れた者はだ」
「誰でもですな」
「家臣に迎えたい」
「そうなのですな」
「お主達の様にな」
家臣達にも言った。
「そうしたい、だからな」
「長曾我部殿も」
「そうしてですか」
「そしてそのうえで」
「天下統一、その後の政の柱の一人に」
「そうされたいですか」
「うむ、姫若子というが」
その実はというのだ。
「まだその真の姿を知られておらぬだけじゃ」
「弱くはない」
「頼りなくはない」
「そうした御仁ですか」
「姫どころか鬼になるわ」
やがてはというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「やがては」
「殿の家臣に」
「そうされたいですな」
「上洛してじゃ」
そのうえでというのだ。
「四国も手に入れればな」
「その時は土佐もですな」
「あの国も手に入れる」
「それならばですな」
「長曾我部家もとなるので」
「そうしたい、あとじゃ」
信長はさらに話した。
「土佐という国じゃが」
「はい、あの国ですな」
「四国の南にあり」
「南は海で」
「三方は山ですな」
「そちらに囲まれていますな」
「そうした国で行き来は不便であるが」
それでもというのだ。
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