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ちょっとズル

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第七章

「お菓子を差し上げて」
「妹さんもなの」
「味方につけて」
「妹さんとも仲がいいのね」
「完全に私に懐いてくれて」
 友樹の妹はアリスにすっかりそうなっているのだ。
「そして」
「彼にもなのね」
「色々私のことをよくお話してくれてお家にも」
「呼んでくれているのね」
「それで妹さんの方からも」
 そのルートからもというのだ。
「お付き合いをです」
「してもらっているのね」
「はい、そうしたこともしてデートの時も」
 その時もというのだ。
「調べたことを活かして」
「やっていってるの」
「そうしたことを思いますと」
「悪いことをしたと」
「ズルを」
 こう言うのだった。
「思います」
「それ位ならな」
「そうですね」
 娘の話をここまで聞いてだ、父も母もお互いで話した。
「いいですね」
「そうだな、悪いことじゃないだろう」
「ズルといっても」
「許されるな」
「それ位だな」
「そうですね、アリスは悪いことはしていないです」
「お友達にケーキを奢って彼の妹さんにもよくしているし」 
 実際にアリスは友樹の妹を心から可愛がっている、その妹は実際にアリスをお姉ちゃんとまで呼んで甘えている程だ。
「彼にもな」
「心から尽くしていますし」
「事前に調べてるのは悪くない」
「確かに妹さんに近付いた理由は不純かも知れないですが」
「心から接して可愛がっているしな」
「悪いことではないですね」
「そうだな」
 父も言うのだった。
「特に」
「そうですよね」
「では」
 アリスは両親の言葉を聞いて言った。
「私がしたことは」
「ズルもあったかも知れないけれどな」
 それでもとだ、父は娘に話した。
「それでも少しだ」
「少しですか」
「それだけのな」
「そうですか」
「それに彼のことは大事なんだろう?」
「何よりも」
 正直もっと言えば思い詰めている様にだ、アリスは父に答えた。
「そう思っています」
「それならだ」
「いいですか」
「そうだ、ズルは確かによくないが」
「私がしたこと位はですか」
「事前の準備と言っていいしな」
 彼の妹を利用した、このことも含めてというのだ。
「将を射るには馬からとも言うしな」
「諺ですね」
「ああ、それで妹さんも大事にしているな」
「年齢は離れていますが大切な友達です」 
 そうした相手だとだ、アリスはまた真剣に答えた。
「そう思っています」
「ならいい、じゃあ今度は彼と」
 父は娘に微笑んで話した。
「その彼の妹さんもな」
「お家にですか」
「呼んでくれるか」
「わかりました」
 アリスは父に笑顔で答えた、そうしてだった。
 父そして母に友樹そして彼の妹のことを話していった、そこには何の疚しいこともなく実に澄んだものがあった。


ちょっとズル   完


                2019・12・17 
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