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レーヴァティン

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第百四十三話 皇帝の降伏勧告その四

「手を出さないんだよ」
「筋は通してるの」
「伊藤博文さんにならってるらしいな」
「あの人確かある人の奥さんに」
「それ嘘らしいな」
 久志は伊藤博文についてのこの悪い噂のことを否定した。
「当時のマスコミに書かれてそんなことはしないって怒ったらしいぜ」
「そうだったの」
「確かに洒落にならない女好きだったけれどな」 
 その艶福家ぶりを明治帝に窘められたこともあるという、とかくその女好きはかなりのものだったらしい。
「それでもな」
「筋は弁えていて」
「そんなことはしない、無理強いもな」
「しない人だったのね」
「そうみたいだぜ」
「じゃあ私の誤解だったのね」
「それであいつもな」
 英雄、彼もというのだ。
「女好きでもな」
「相手がいる人には手を出さないのね」
「あっちで側室の人も大勢抱えてな」
「正室さんと一緒になのね」
「毎晩らしいぜ」
「そうなのね」
「けれど俺は違うからな」
 久志はあらためて断った。
「相手は一人だよ」
「ハンナさんね」
「ああ、彼女だけだよ」
 このことは断るのだった。
「何があってもな」
「そこは守るのね」
「というか俺だって女の子は好きだぜ」
 久志にしてもだった、このことは彼も否定しなかった。
「けれどな」
「それでもなのね」
「ハンナがいたらな」
 皇后となった彼女がというのだ。
「俺はいいさ」
「それでいいのね」
「というか女差し出すってのもな」
「下卑ているっていうのね」
「そんな気がしてな」
 だからだというのだ。
「俺としてはな」
「断るのね」
「ハニートラップの可能性もあるしな」
「それね、この世界でもあるしね」
「美女で篭絡するってな」
「これは案外普通にあるから」
「その意味でもな」
 篭絡される、そうならない為にもというのだ。
「俺は性別関わらずな」
「人はいいのね」
「ものでいいさ、それも多少でな」
 多くてなく、というのだ。
「それも民に出させないでな」
「あくまでその勢力の心ね」
「それを見せてくれたら充分さ」
「無欲と言っていいかしら」
「それならそれでいいさ、とにかく降る勢力が多くてな」
 話を戻してだ、久志は笑って述べた。
「有り難いな」
「うん、あと他の勢力のことは事前に調べたし」
 これまで諜報に専念していた淳二が言ってきた。
「それぞれの領主の性格や好みまでね」
「わかってるし」
「だよな、話もしやすいしな」
「まずは相手を知る」
 淳二は明るい声で話した。
「そこからだからね」
「それで説得できそうな奴を使者に送ったしな」
「こっちもね」
「それでも降らない奴いるけれどな」
「だから完璧にはね」
「いかないものか」
「世の中完全に思い通りにいくか」
 それはとだ、淳二は久志に話した。 
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