レーヴァティン

「本当に無傷でな」
「手に入れたいな」
「戦で攻め取るよりもな」
「その考えはうちも同じや、百戦百勝してもな」
「こっちも傷付いてな」
「相手も傷付く」
「そうなるしな、だから今回もな」
　セビーリャについてもというのだ。
「出来るだけ無傷で手に入れたいな」
「ほんまにな」
「攻めずにな」
　攻めればどうしてもこちらに損害が出て街も傷付く、それでというのだ。久志は真剣な顔でさらに話した。
「手に入れたいな」
「ましてでござるな」
　進太も言ってきた。
「セビーリャはこれから我等の拠点となる」
「そうした街だからな」
「尚更でござるな」
「何とか無傷で手に入れたいな」
「では、でござるな」
「ああ、ここはな」
　まさにとだ、久志は言った。
「降る様にな」
「街に勧めるでござるな」
「権益は今まで通り保証してな、税率もな」
　こちらもというのだ。
「これまで通りにしてな」
「これまでの生活を約束する」
「そうしてな」
　そのうえでというのだ。
「降る様に言うか」
「そうするでござるな」
「ああ、やっぱり戦はな」
　これはというのだった。
「しないに限るな」
「戦わずして勝つでござるな」
「そういうことだな、じゃあ街を囲んでな」　
　湖と陸、その二方向からというのだ。
「川の方も抑えて」
「そうして完全に囲んで」
「そしてな」
　そのうえでというのだ。
「降る様に言うか」
「それでは」
「まずは囲むな」
　久志は湖から囲みそうしてだった。
　軍勢を街の周りに上陸させてそのうえで囲んだ、勿論川も抑えた。そうしてからこれまで通りの権益や生活を約束してだった。
　降る様に言おうとしたがここでだった。
　美奈代が久志にこう申し出た。
「うちが行くな」
「ああ、お前セビーリャに馴染みあるからな」
「それでな」
「伊達にここで商売してた訳じゃないな」
「知り合いもおるし市長もな」
　街を治める彼もというのだ。
「知ってる人や」
「だから話が出来るか」
「基本真面目で確かな人やが」
「何かあるのか？」
「困ったところが一つあってな」
　その市長にはというのだ。
「女癖が悪いんや、しょっちゅう娼館に行ってる」
「そっちか」
「奥さんおってな、それで最近病気になってるんや」
「そっちの病気かよ」
「いや、遊び過ぎでな」　
　そのせいでというのだ。
「疲れてな」
「それでか」
「それでも遊びたいんや」
「本当に女好きなんだな」
「それで強精薬をプレゼントすれば」
「賄賂になるか？」
「まあこれ位はええやろ、これをプレゼントしたらな」
　それでというのだ。