仮面ライダーの力を得て転生したったwwwww
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第4話
翌日。
少し肌寒い今日、朝日の光を浴び重い瞼を開けると、琴音は昨日のことなど何も無かったかのように、笑みを浮かべて俺に話しかける。
「おはよ、アラタ」
「・・・・・・おはよう」
「もしかしてアラタって、朝弱め?」
「かもしれない」
「じゃあ、温かいの入れてあげるね。えーと・・・・・・」
眠気を覚ますように目を擦りながら、飲み物を入れている彼女の背中を見つめていると、玄関から音が聞こえてくる。誰かが来たのだろうかと、鍵を開けると・・・・・・昨日宿探しでお尋ねした八百屋のおばさんがせっせと入ってくる。
「あれ、あの時の?」
「あ!? 昨日のあんちゃん? て、そんな場合じゃないよ! 琴音ちゃん大変さ!!」
「お、おばさん!? どうしたんですか!?」
慌ただしく入ってきたおばさんに、琴音も慌ただしく玄関へと足を運ぶ。おばさんは息を整えると、彼女に取っても、俺にとっても最悪の情報が伝えられる。
「化け物が・・・・・・化け物が街の皆を襲ってるんさ」
「・・・・・・まさか!!」
「え!? ・・・・・・あ、アラタ君!?」
すっと血の気が引いてく。重かった瞼も眠気も、一瞬にして覚醒していく。
その言葉を聞いた俺は、すぐさま部屋へと戻ってアナザーライドウォッチの入ったパーカーを羽織ると玄関先にいた彼女達を押し退けて走っていく。
「嘘だ・・・! そんな訳が・・・・・・!!」
ーーー
ただひたすらに走りながら、悲鳴の上がった場所へと辿り着くと、アナザービルドが見せしめのように男の首をへし折り、地面へと投げ捨てる。アナザービルドは俺を捉えるや、愉快そうに話し掛けてくる。
『久しぶりだな、オマエ』
「お前・・・・・・! 何でここに・・・・・・」
ここまで、俺は奴に自分の足取りがつかないよう細心の注意を払ったつもりだった。証拠は残さないようにしてきたし、この街に来るのにもそれを考慮してわざわざ危険を賭して砂漠の地帯を歩いた筈なのだから。
アナザービルドは尚も、嘲嗤うような態度を取りながら、俺の問いに答えた。
『アナザーライダーは、アナザーライダー同士惹かれ合う 』
惹かれ合う?
『お前が幾ら身を隠そうと、アナザーライダーである限りオレ達には筒抜けという事だ』
奴の言っている意味が、最初は分からなかった。だけど、その特性が持っていることを、この王座を掛けた争いを始めた奴等は言っていた。
じゃあ、この光景は何だ??
この街の日常を、人を壊し、殺したのは奴じゃなく・・・・・・俺?
俺が?
俺が・・・・・・?
俺の存在が、罪のない人の命を奪った?
「うわぁぁぁああああっっっ!!」
錯乱した俺には、最早アナザーライドウォッチを取り出す余裕すら無く、生身のままアナザービルドへと走り、拳を振るう。その拳をアナザービルドは簡単に受け止め、俺の腕を捻る。関節から悲鳴が上がり、俺の表情も段々と苦痛に歪む。
その光景は、変身しなければただの無力な人間であると思い知らされる。
「ァッ、がっ・・・・・・!!」
『あぁ、最高ッッダ!! お前の絶望が拳からひしひしと伝わってくるゾ・・・・・・!!』
そしてアナザービルドは、空いたもう片方の拳が俺の脇腹を抉る。
「・・・・・・ァッ」
俺は宙を舞って、地面に何度か身体を打ち付け、壁にぶつかってようやく止まる。それと同時に、口から血を吐く。呼吸が浅くなっていくのが自分でもよく分かる。正直、生きてるのが不思議な位だ。
『フン・・・・・・以前の減らず口はどこに行ったァ? この糞ガキが・・・!!』
「ぐぁああああぁあ!??」
薄れていこうとする意識。しかしアナザービルドは俺の身体を踏みつける事で留められてしまう。最後まで苦痛を味合わせてから、じっくり殺す気なのだろうか。
痛い。
苦しい。
楽に・・・・・・なりたい。
そう認識した瞬間に、俺は戦う意志を失った。心が、ポッキリと折れてしまった。
いや、やっと折れたんだ。
刻一刻と近づいてくる己の死を、俺はどこか望んでいたんだ。思えば、この世界に来てから何一ついい事なんてなかった。助けた人間達からも拒絶され。俺も自然と誰かを助ける事も忘れ。
残った物は、死者たちの呪詛と死体の丘。
そう言えば、琴音はちゃんと逃げてるのだろうか・・・・・・。昨日出会ったばかりの少女の顔が、一枚の写真に切り取られては頭をよぎってくる。
でも、今度はもうちょっと・・・・・・
『死ね』
アナザービルドの拳が振るわれる。
「マシな形で出会いてぇな・・・・・・」
俺は目を閉じ、数秒後に訪れる己の最期の瞬間を待つ。
5秒。
10秒。
ここで俺は、ようやく異変が起きている事に気づいて、瞼を開ける。アナザービルドが先程まで俺を殺そうとしていたのは知っている。しかしアナザービルドは俺へのトドメを刺さず、視線を別の方へと向けていた。俺はアナザービルドの向いた方向へと向けて・・・・・・
「・・・なん、で?」
そこには、今朝共に過ごした琴音が立っていた。両手には、先端が折れ曲がった鉄パイプをアナザービルドへと向けている。そこで俺は、ギリギリの所で彼女に助けられた事に気づいた。でも、どうして?
『・・・・・・何だキサマ?』
アナザービルドは殴られた頭部を摩り、怒気を隠すことなく琴音にぶつける。
「私は、その人の友達だから・・・・・・だから、その人を離して!」
「何やってんだ・・・・・・俺の事はいいから、逃げろ!」
「イヤ! もう嫌なの! 誰かが死ぬのは!」
琴音は俺の必死の叫びも無視して尚アナザービルドと向かい合う。だけど、その声は明らかに萎縮してしまっていて、足もガクガクと震わせている。自分の家族を殺したかも知れない怪物に今この瞬間自分が狙われてるのだ。それでも僅かな勇気を振り絞った彼女を、アナザービルドは尚も笑い。
『そうか・・・・・・なら、お前から死ね』
「・・・イヤ、来ないでっ!!」
琴音は反射的に鉄パイプを振るう。しかし小柄な身体で鉄パイプを振るうには荷が重く、上段の大振りとなる。アナザービルドはそれを片手で受け止め力を入れるだけで・・・・・・
バキッ!
丈夫な鉄パイプを、いとも簡単に粉砕する。驚愕と恐怖に硬直していた琴音の首元を、アナザービルドは乱暴に掴み、宙へと持ち上げた。
「ぁっ・・・・・・はな、して」
「やめろぉ・・・・・・!!」
『HAHAHA!! イイ! もっと貴様の絶望を聞かせろ!!』
動け! 動け!! 動け!!!
今、この瞬間助けられるのは俺だけだろ!!
そう何度も自分に言い聞かせても、身体は動こうとしない。一度折れてしまった心が、立ち上がろうとするのを拒否してしまっている。
「・・・・・・畜生」
こう燻ってる間にも、琴音の命は瀬戸際まで追いやられている。誰なのかも分からない見ず知らずの他人に、手を差し伸べてくれるそんな優しい女の子が、コイツらの欲望に巻き込まれて、その生涯を終えようとしてる。
そこまで考えたところで、俺は唐突に、この世界に怒りを感じた。
なんで琴音や、琴音達のような「今この瞬間瞬間を必死に生きる人達」が排斥され、強者のみが生き残らなければならないのか?
そんな事は認められない。絶対に。
諦めるのか――?
「・・・違う」
また、見捨てるのか――?
「・・・・・・違う」
『手が届くのに、伸ばさなかったら死ぬほど後悔する。それが嫌だから俺は手を伸ばすんだ』
『見返りを期待したら、それは正義とは言わねぇぞ』
俺は──!!!
「・・・・・・うおぉおおおおおぁぁぁぁっ!!」
1度は折れた心の熱に再び火が点る感覚。俺は歯を食いしばりながら立ち上がる。体中はハッキリ言って限界を超えてる。体中は悲鳴を上げ、ふらつき、未だに息は荒い。意識も朦朧してる。だが、たったそれだけだ。
彼女は恐怖に怯えながら、勇気を持って俺を助けてくれたのだ。力のある俺が、そんな事で諦めてどうする。
俺は、まだ戦える。
「・・・・・・オラァっ!!!」
『ぐはぁっ!?』
立ち上がるや、直ぐさま助走をつけてガラ空きのアナザービルドの横腹に飛び蹴りを浴びせる。 アナザービルドが吹き飛ばされるのを横目で見遣りながら、彼女の身体を抱き抱えて、肩を揺する。
「琴音、しっかり!」
「・・・ァ、ラタ?」
弱々しくも、確かな声で俺の名前を呼んだ事に安堵する。俺は琴音の腕を自分の首背で支えて立ち上がる。 同じタイミングで、アナザービルドが憤慨を露わにする。
『貴様ァ・・・・・・!!!』
「・・・・・・」
アナザービルドに睨まれても、恐怖心も迷いも今の俺にはない。俺は琴音を守るように前に立って、アナザービルドに立ち塞がる。
多分、もう琴音の元には戻れないだろう。今から俺はヤツと同じ存在となり、同胞を手にかけるのだから。それでも・・・・・・
「ラブアンドピース。ですよね、戦兎さん」
そう呟いて、俺はアナザージオウウォッチを起動する。
《ZI-O・・・・・・ 》
愛と平和の為に。俺に手を差し伸べてくれる人の為に俺はこの力を使う。
『Are You Ready? 』
腹部に現れたドライバーにウォッチを差し込んだと同時に。
幾つもの声が重なり、俺の耳にそんな言葉が届く。 それを俺はーーー
「・・・・・・出来てるよ」
《ZI-O・・・・・・!》
決意を込めた言葉と共に、アラタはアナザージオウへと変身した。既に臨戦態勢へと入ったアナザービルドを横目で見ながら、アナザージオウは琴音の方を一瞥する。
「・・・・・・アラ、タ?」
『・・・・・・ゴメンね。行ってくる』
琴音は信じられない、と言った表情でアナザージオウ |《俺》 を見つめてくる。
だが、それでも構わない。ともアラタは思えた。 アナザージオウは視界をアナザービルドへと見据えて、咆哮をあげる。
『・・・・・・うぉおおおおおっっ!!!』
アナザージオウとアナザービルド。2人の異形が全く同じタイミングで肉薄する。お互いがお互いの信念を貫く為に、目の前の敵を倒すべく拳を振るった。
後書き
特撮お決まりのヒロインに正体がバレる回でした。
もっとアラタ君には苦しんで欲しいですね!(他人事)
感想お気に入り表情等、この作品気に入ったよとか思ってくださればしてくれると励みになります〜、それではまた次回
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