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おじさんのバレンタイン

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第四章

「おじさんの年齢になればわかる」
「おじさんの」
「五十位になればな」
「そう、ですか」
「ああ、今はチョコを貰って嬉しいだろ」
「はい、実は皆から義理チョコとも」
「ははは、義理チョコでもいいチョコばかりじゃないか」
 山田はそこに女の子達の本心も見た。
「いいことだ」
「当分おやつには困らないです」
「そうだな、そのおやつもな」
 これもというのだ。
「チョコは駄目になったりするからな」
「えっ、美味しいのに」
「日本酒を飲むと甘いものが駄目になったりな」
 少年にこの話もした。
「身体壊したり歯が悪くなったり口が変わってな」
「そうなってですか」
「チョコが駄目になったり貰うチョコもな」
 これもというのだ。
「味気ないものにもな」
「なりますか」
「そうなるんだ、それでおじさんが今言うこともな」
 このこともというのだ。
「そのうちわかるさ」
「おじさん位のお歳になったら」
「その時にな、じゃあな」
「はい、じゃあ」
 山田は少年に一時の別れの挨拶を告げ少年も応えた、そして職場に行くと女子社員達から義理チョコを貰った。
 そのうえで男子社員達に彼等だけで仕事をしている時に言った。
「食ってくか」
「部長糖尿病じゃないですし」
「歯もいいですから」
「それはよかったですね」
「夜に家でウイスキーとかワイン飲む時にな」
 つまり酒の肴にというのだ。
「一緒に食うか」
「洋酒と甘いものって合いますからね」
「クッキーとかケーキとかも」
「それでチョコも合いますし」
「だからですね」
「そうするな、まあ肴には困らないな」
 酒のそれにはというのだ。
「三時のおやつにもな」
「暫くはそうですね」
「そのことはよかったですね」
「有り難いですね」
「それで来月はな」 
 またホワイトデーの話をした。
「やっぱりな」
「はい、お返しですね」
「マシュマロですね、部長は」
「そっちですね」
「そっちにするな、ただな」
 山田は今度はぼやいた、そのうえで言うのだった。
「問題はな」
「っていいますと」
「問題っていいますと」
「何か」
「家族だよ、嫁さんと娘からも貰うけれどな」
 そのチョコをというのだ。
「義理でな、けれどな」
「ああ、それでもですね」
「義理チョコでもですね」
「家族にはですね」
「マシュマロじゃ済まないからな」
 ホワイトデーのお返しはというのだ。 
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