大阪の天邪鬼
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第二章
「いい方だよ」
「だからっていうの」
「別に女の子一人で行ってもね」
そうしてもというのだ。
「特にね」
「危なくないっていうの」
「どうしてもというなら防犯ブザーとかスタンガンとか持って」
「何言ってるのよ、女の子から誘ってるのよ」
真帆は岸田に今度は顔を真っ赤にさせて言った。
「それで断るの」
「えっ、そう言うんだ」
「そうよ、女の子がわざわざね」
その真っ赤になった顔のまま言うのだった。
「誘ってるのに断るの?お友達として」
「友達の誘いをなんだ」
「断るとか駄目でしょ」
そこは絶対にというのだ。
「そうでしょ」
「そうかな」
「友達で女の子よ」
それならというのだ。
「いいでしょ」
「そうなるのかな」
「何なら顧問の柳田先生に言うわよ」
ラグビー部の顧問のというのだ。
「ボディーガードに来てもらうからって」
「その日僕は部活休ませてくれって」
「そう言うわよ」
「そこまでするんだ」
「そうよ、全部私の身の安全の為よ」
必死な感じでの言葉だった。
「いいわね、あんたと一緒にいたいからじゃないわよ」
「じゃあ誰でもいいんじゃ」
「よくないから、とにかくその日が来たらね」
真帆が神戸から阿倍野の親戚の家に行く時はというのだ。
「一緒に来てボディーガードしなさい」
「行きも帰りもだね」
「勿論よ、覚悟はいいわね」
「覚悟なんだ」
「私の傍から離れることは許さないから」
「絶対にだよね」
「おトイレの時以外はよ」
そうした時は流石に別だった。
「いいわね」
「それじゃあ」
「ええ、その日が決まったらまた言うから」
甘口のカレーを小さな手でスプーンを動かしつつ食べつつ言う、その間真帆の顔は怒ったりもしたが常に必死のものだった。
そしてその日になるとだった、岸田は朝真帆と待ち合わせした時に言った。
「日曜でしかも部活も休みで」
「よかったっていうのね」
「うん」
待ち合わせの駅前、二人が通っている学校の最寄り駅のところで真帆に答えた。
「よかったよ」
「たまたまでよかったわね」
「うん、ただね」
「ただ?」
「何か気になるんだよね」
岸田は首を傾げさせてこうも言った。
「日曜で部活もない時に叔父さんが来る様に言ったんだよね」
「そ、そうよ」
真帆は実はこの日ラグビーの部活がないことを事前に調べていてしかも叔父に今日行くことを連絡したことは隠して岸田に答えた。
「偶然よ」
「偶然かな」
「そうに決まってるでしょ」
顔を赤くさせて目を何処か逸らして答えた。
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