東京の鯉女
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第四章
「驚いたわ」
「そうよね」
「本場は本当に違うわよね」
「何ていうかね」
「普通に美味しいのよね」
「マツダスタジアムに行く時あって」
ゴールデンウィークや夏の休暇の時にあえて広島に行ってマツダスタジアムの一塁側で応援しているのだ、勿論東京のカープの試合も皆勤である。横浜スタジアムにも行く。自分の給料だけでなく資産家の親も笑顔でお金を出してくれるのでお金の問題はない。
「その時に食べても」
「違うのよね」
「本当に広島は」
「あそこのお好み焼きは」
「だからまた行く時があったら」
ゴールデンウィークでも夏休みでもというのだ。
「その時はね」
「お好み焼き食べて」
「それでよね」
「それからマツダスタジアム行くのね」
「そうするわ」
こう言ってだった、すみれは焼酎を飲みつつそのうえでまずは広島風のお好み焼きを食べた。そしてカープの話もするが。
ここで同僚の一人がビールを飲みつつ彼女に尋ねた。
「すみれちゃんちょっといい?」
「何?」
「すみれちゃん東京生まれよね」
「お父さんもお母さんもね」
すみれは同僚にすぐに答えた、見れば焼酎をロックでどんどん飲んでいる。
「そうよ」
「そうよね」
「それで私もね」
「東京で生まれ育ってるわね」
「旅行は行っても」
それでもというのだ。
「お家はずっと東京よ」
「世田谷よね」
「ええ、けれどそれがどうかしたの?」
「東京生まれなのにカープファンなのはどうしてなの?」
同僚が聞くのはこのことだった。
「それがね」
「あっ、そうよね」
「そういえばそこが不思議よね」
「カープって広島のチームでね」
「ファンの人達も広島の人多いわね」
「東京生まれでカープファンって」
「ちょっとないわね」
こう話すのだった。
「少数派っていえば少数派よね」
「そうよね」
「東京っていうとね」
この場所にいると、というのだ。
「巨人はまあ置いておいて」
「あのチームはね」
「応援したら駄目よね」
「野球の敵だから」
「論外として」
戦後日本のモラルの崩壊を焼酎する邪悪なチームについては全員意見が一致していた。応援してはならないと。
だがそれでもとだ、話すのだった。
「ヤクルトよね」
「東京だとね」
「関東だと横浜もあるし」
「パリーグだとロッテもあるし」
「西武もね」
「阪神は全国区として」
最早関西だけでなく全国区のチームになったのだ。
「カープはね」
「やっぱり広島よね」
「そこから出ないよね」
「どうしても」
「そうよね」
「だから東京にカープファン少ないけれど」
「それでもね」
すみれを見て言うのだった。
「すみれちゃんカープファンよね」
「そうよね」
「子供の頃からって言ってるけれど」
「どうしてなの?」
「どうしてカープ好きなの?」
「それはね」
何故かとだ、すみれは同僚達に答えた。
「子供の頃たまたま観たカープの試合がよくて」
「それでなの」
「カープ好きになったの」
「そうなったの」
「本当にたまたまだったの」
その試合を観たことはというのだ。
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