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剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ

作者:炎の剣製
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038話 士郎の聖杯戦争…

 
前書き
更新します。 

 
ネギ君の過去が語られた後、また宴会が開かれたが時間的には夜中であったためまた一同はすぐに眠りについていた。
だが、俺はどうしても眠れる事が出来なかった。
自己嫌悪ともいうのだろうか?
一瞬だが俺はネギ君を渇望の眼差しで見てしまったのだから。
人生に天秤をかけてはいけないと分かっていたのに…!
俺は後悔を感じながら夜中一人で手すりを思い切り叩いた。

「シロウ…」
「姉さん…それにエヴァ達にこのかと刹那も。どうしたんだ…?」

俺は動揺を隠すために精一杯ポーカーフェイスを作ったが姉さん達は俺の葛藤を見ていたらしく、

「どうしたのだ、士郎? ぼーやの過去を見てから様子がおかしいが…イリヤもそうだ」
「はい。アスナさん達は気づかなかったようですがお二人のあの時の表情は言葉では言い表せないものでした」
「せっちゃんと同じや。士郎さん、ほんまにどないしたん…?」
「そこまで、顔に出ていたのか…どうやら重症らしいな。自分のことも気づけないなんてな…」
「…ええ。シロウがネギの過去を見て感じたことを当ててあげるわ」

姉さんの口から「それは、一種の嫉妬、渇望ね…」という言葉が出た途端、俺は再度いたたまれない気持ちになってしまいみんなから目を背け後ろを向いた。
事実を叩きつけられるのがここまで辛いものなのかと再度感じた瞬間だった。
この衝動は言峰の言葉を叩きつけられた時以来だ。
そして俺は暗い気持ちになりながらも口を開いた。

「……そうだ。多分姉さんの言っている事であっているだろう。俺は…ネギ君に対して一瞬だけだが渇望の眼差しをするという愚考を侵してしまった…」
「やっぱり、ね…」
「どうしてなん、士郎さん…?」
「言わなくてもいい、このか。分かっている。他人の人生と自分の人生を天秤にかけてはいけないという事は…何度もそれで葛藤している。だが、本当に羨ましいと思ってしまったんだ。石化してしまったが全員死んだわけではない。そしておそらくあれは俺がどうにかできるかもしれない類だからだ」
「それは、一体…?」
「…『破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)』か…」
「そう、おそらく俺はあの村の人たちを破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)で助ける事が出来る…」
「ルールブレイカーってなんなん…?」
「もしかして京都の時にネギ先生の石化を解除した歪な短剣の事ですか…? あれは初期段階の石化しか解けないと聞きましたが…」
「すまない、あの時はまだ訳あって真実を教えることはしなかったんだ。だが真の効果はすべての魔術を破戒し初期化して無かったことにしてしまう宝具だ」

その宝具の話が出た途端、このかはまだ理解は出来ていないようだが刹那は驚愕の表情をしていた。
そしてエヴァの前で話しても大丈夫なのかと聞かれたが契約の話をしたら納得したようだった。

「なるほど。それでしたら納得できますね。ネギ先生も頑張っておられますし、ナギさんも生きているかもしれないという希望も出てきましたから…」
「そうやね、せっちゃん。でも士郎さん、それならなんでネギ君の事を…」
「…待て、このか。おい、士郎」
「…なんだ、エヴァ?」
「まだ日が出ているときに過去の話を少ししたな?お前の従者であり着いて行くともいった二人になら見せても構わないのではないか? お前の過去を…」
「それは…! しかし…」
「シロウの反応も当然ね。ねぇ、セツナ? コノカには私達が異世界からやってきた魔術師だっていう話はもうしたのかしら?」
「い、いえ…さすがに士郎さん達の立場が危うくなる情報は学園長はともかく誰にも一度として伝えていません」

このかはポカンとした顔になったがすぐに何のことという感じで刹那に問いかけていた。
刹那には説明は難しそうだから代わりに姉さんがこの世界に来た経緯を簡単に説明した。

「そ、そうやったの…?」
「そうだ…今まで隠していてすまなかった」
「え…ううん、大丈夫や。ウチは気にしておらんから」
「ありがとう、コノカ」
「だが、エヴァ。おそらく俺の過去はネギ君とは比べ物にならない程ひどいだろう…」
「それは従者である二人が決めることだ。そこのところはどうなんだ?」

エヴァはこのかと刹那に問いただした。
すると二人は着いていくと即答したときと同じようにすぐに頷いた。
しかし、記憶を見せるということはおそらく始まりは…

「…本当にいいのか、二人とも。今ならまだ引き返せるぞ?」
「私とお嬢様は士郎さんに着いて行くと決めたときから覚悟は出来ています。ですから大丈夫です」
「うん。ウチ、もっと士郎さんのことを知りたい。いや、知らなくちゃいけない気がするんや」

二人の目は真剣そのものでもう覚悟も決まってしまっているらしい。
姉さんも「きっと大丈夫よ…」と言ってくれたので俺もまた覚悟を決めた。

「では見せる前に全員に忠告をしておく。決して見たことを後悔しないでくれ…俺の過去はいわば他人には呪いのようなものだ」

全員は無言で頷いた。そこに茶々丸とチャチャゼロも参加してきた。
そして、姉さん・エヴァ・茶々丸・チャチャゼロ・このか・刹那の計6人がエヴァが魔法を使い俺の記憶の中へと入っていった。
…願わくば無事に帰ってきてくれることを祈って。


◆◇―――――――――◇◆


Side 桜咲刹那


エヴァンジェリンさんの魔法により士郎さんの記憶を覗きこんだ瞬間、それは起きた。
士郎さんの原初の記憶の始まりは突如として燃え上がる大地、一面の焼け野原、次々と聞こえてこなくなる人々の声、そして黒い太陽…
私は思わず悲鳴を上げそうになった。
だが、それは私以上に体を震わせているお嬢様が一緒に手を繋いでくれているおかげでなんとか耐える事が出来た。
…しかし、士郎さんの過去がこのような始まりだったなんて…
そして大火災の中、一人だけ生き残り代わりに自分の名前以外、記憶と感情を壊されてしまい衛宮切嗣という人物に救われなければ恐らく生きていけなかっただろうと私は思う。
それから切嗣さんの養子になりそこで魔術のことを知った士郎さんは必死に教えてほしいと言っている。
…きっとあのような悲劇を起こしたくないからだったのでしょう。
それから時が進み5年後のある月夜の晩の光景が映し出された。
きっと切嗣さんは死期を悟ったのでしょう。まだ子供の士郎さんに最後に自分の思いを語りだした。

「……僕はね、正義の味方を目指していたんだよ」
「なんだよ? 目指してったってことはもうあきらめちまったのか?」
「ははは、正義の味方には年齢制限があってね……もう大人の僕はなれないんだよ」
「そっか……うん。それじゃしょうがないから俺が代わりに正義の味方になってやるよ。爺さんは大人だからもう無理だけど俺なら大丈夫だろ?」

士郎さんは一度言葉を切って、

「まかせろって、爺さんの夢は俺がちゃんと形にしてやるから!」
「……ああ、安心した」

切嗣さんはその言葉を最後に逝った。
士郎さんはもう動かない切嗣さんを何度も揺すっていたがいずれ悟ったような顔になってそれきり黙りこんでいた。
気づくと一緒に見ていたイリヤさんも私達同様に涙を流していた。
だけど、その表情はどこか違うものを感じさせてくれた。



そして士郎さんは上達しない魔術を何度も死にそうになりながらも訓練して年月は過ぎて高校二年の冬になったとき、それは訪れた。
七人の魔術師と七騎の英霊という上級の使い魔による聖杯をめぐる戦い……聖杯戦争に。
ただ魔術が使えるというだけで浮き上がった令呪という代物と夜の校舎で起こっていた二体の英霊の戦い…
その戦いはおそらく私の目でも知覚は難しいほど壮絶でつい見入ってしまった。
だけど、そこで気づいた。
青い姿の英霊はともかく赤い英霊の姿は今の士郎さんそのものだということに。





「おい、士郎。あの赤い奴はなんだ…?」
《………》





エヴァンジェリンさんが士郎さんに問いただしているが士郎さんからの返事は返ってこなかった。
代わりにイリヤさんがそれに答えた。





「あの英霊はシロウであって、シロウではない存在よ」
「なんだ、それは? ……いや、なんとなく予想がついた。やつは…」
《エヴァ…今はまだ》
「…そうか」





お互い納得したようだがまだ私とお嬢様は理解が出来ないでいた。
しかし、すぐに過去の記憶に目を奪われた。
士郎さんが一度ランサーの英霊によって心臓を刺されてしまいそこで一回記憶が途切れてしまい暗くなってしまったのだから。
少しして回復した記憶では士郎さんはなにもわからず家に帰ったところだが、生きていると分かったランサーは再度、士郎さんを殺しにかかった。
それでなんとか強化の魔術が成功した士郎さんは立ち向かうも所詮叶うはずもなく土蔵までただの蹴り一つだけで吹き飛ばされてしまいお嬢様はそこで悲鳴を上げた。
だが、そこで奇跡が起きた。土蔵の中から突如として光が溢れ騎士甲冑を纏った少女、セイバーと名乗るサーヴァントがランサーを斬り飛ばして士郎さんに向かって、

「問おう、貴方が私のマスターか?」

その光景に記憶の中の士郎さんもそうだが、全員が目を奪われていた。
だけど、その容姿はどこかで聞いた事がある。
そう、それは私が士郎さんに弟子入りを志願したときのことだ。





「士郎さん、この方は以前に私に話してくれた最高の剣士という方でしょうか?」
《覚えていたか。ああ、そうだ。俺はこの少女によって命を救われた》
「このサーヴァントは何者なんだ? 見た所剣が風によって見えなくなっているようだが…」
《いずれわかる》





それからまた記憶は再会しランサーは真名を解放するもなんとか交わしたセイバーさんに猛獣のような目をして偵察だといって一度引き上げた。
そしてすぐにアーチャーとそのマスターである魔術師…遠坂凛さんが現れたがアーチャーはセイバーさんに不意を付かれすぐに切り伏せられてしまい霊体化した。
それからは士郎さんの叫びによって戦いをやめたセイバーさんに遠坂さんは話し合いを持ちかけた。
そこで初めて知らされる聖杯戦争に士郎さんは怒りをしめしたが、それはつかの間の出来事。
士郎さんはただただ巻き込まれる形で、だが自分の意思でこんな争いは早く終わらせるためにセイバーさんとともに聖杯戦争に参加することを決意した。
だが、マスター登録を済ませたその帰りに記憶を見ているだけだというのに私は悪寒に襲われた。
記憶の中の士郎さん達も聞き覚えのある人物の声によって気づいて振り向いた先には、
白くて小さい少女とともに鉛色の巨人が佇んでいた。





「な…なんなん、あれ?」
「まさかあれもサーヴァント…だというのですか?」
「そうよ、セツナ。あのサーヴァントはバーサーカー…そして一緒にいる子は私こと衛宮イリヤ…いえ、本名を『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』」
「「えっ!?」」
「ほう…なぜこのときは敵対していたのだ?」
「それはシロウとはこのときが初対面だったし、アインツベルンからエミヤの息子は殺せと言われていたの。
私自身もこのときはアインツベルンを裏切ったお父様への恨みしかなかったから」
「裏切った、とは一体…?」
「まだそれを話すときではないわ。シロウ、先に進めて」
《わかった》





そして再会した記憶では士郎さん達はバーサーカーの力に成す術もなく敗れて重傷も負ってしまう。
イリヤさんはつまらなそうな目をしてその場を後にした。
それから場面は次々と流れていき、アサシン…佐々木小次郎という剣豪とは引き分け。
次にはライダーのサーヴァントのマスターである友であったものとの二度による戦い。
それによって真名開放し辛くも勝利を納めるも魔力枯渇を起こし倒れてしまうセイバーさん。
不意を付かれてイリヤさんに拉致されてしまう士郎さん。
救出されるが立ちふさがるバーサーカー…囮になって士郎さん達を逃がしたアーチャー…
去り際にアーチャーは士郎さんに向かって、

「衛宮士郎。いいか? お前は戦うものではなく、生み出すものに過ぎん。余計なことは考えるな、お前にできることは一つ……その一つを極めてみろ。
忘れるな。イメージするものは常に最強の自分だ。外敵など要らぬ。お前にとって戦う相手とは、自身のイメージに他ならない……」

その言葉を最後にアーチャーは干将莫耶を天井に突き刺し入り口を完全に塞ぎバーサーカーへと挑んでいった。
そしてやられてしまった事実。
それを無駄にしないためにもセイバーさんとパスを正式に繋ぐために魔術回路の移植を決行。
バーサーカーへの再戦。
真名は過去十二の試練を成し遂げたギリシャ神話の大英雄『ヘラクレス』。
よって宝具も十二回も殺さなければ倒すことが出来ない『十二の試練(ゴッド・ハンド)』。
その事実に絶望を感じるもそこで士郎さんの投影魔術が開花。幾度も夢の中に出てきた剣を投影。その聖剣の名はアーサー王の選定の岩の剣『勝利すべき黄金の剣(カリバーン)』。
セイバーさんとともに投影した勝利すべき黄金の剣(カリバーン)をバーサーカーに突き刺し一度に5度も命を刈り取り消滅させイリヤさんとも和解できた。



大きな戦いは終わりを告げ、ひと時の平和が一度は訪れた。
だが、互いに過去の夢を見てから士郎さんとセイバーさんの間に少しずつ亀裂が生じ始めた。
それは士郎さんの理想の否定、そしてセイバーさんの過去のやり直しという願いの否定。
しかし次の戦いが士郎さん達を待たせてはくれなかった。
またもや起きたガス漏れ事故に動き出した士郎さん達は学校の先生である葛木という人物がマスターだと感じ、夜分に待ち伏せをしかけたが、キャスターのサーヴァントには読まれていたらしく葛木はキャスターによって守られた。
しかし、それでマスターだと確信した士郎さん達は戦闘体勢にはいるが、葛木という人物の本当の姿は暗殺者の類でセイバーさんをも打ち負かす実力を持っていた。
なんとか間合いを取るがキャスターが突然聖杯ならすぐに降ろす事ができると交渉を持ち込んできた。
だが、遠坂さんはすぐに方法を見抜いて「何人の命を犠牲にしたら?」といった途端、キャスターの顔が愉快そうに歪み士郎さん達も迎撃体勢に入ったがキャスターはすぐにその場を後にした。
消える間際にキャスターは優秀な魔術師なら聖杯を呼び出す生贄になるといってイリヤさんが狙われていると思いセイバーさんに先に行かせた。
屋敷に戻ると妹分という桜さんが横たわっていてセイバーさんが介抱したらしいが、操られていたらしくセイバーさんに破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)を突きつけて桜さんの魔力では契約解除までは出来ずとも切り札をセイバーさんは封じられてしまった。
操られた桜さんの首にキャスターは破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)を突きつけて生贄として人質に取られてしまった。
だから士郎さん達はすぐに柳洞寺に攻め込み隠し通路を見つけ入っていくとその地下にはもう小さいながらも一つの町とも取れる神殿が建っていた。
セイバーさんは待ち受けていたアサシンと戦闘。士郎さんも干将莫耶で葛木と死闘を演じ、遠坂さんは桜さん救出のために一人キャスターに挑んでいった。
そして三者ともに決着がついたが、それでもこの神殿はキャスター自身…切り札も封じられたセイバーさんでは勝ち目はなかった。
キャスターは突然、「アサシンはやられたけどセイバー…代わりに私のものにならないかしら?」と士郎さん達の命を天秤にかけ一種の脅迫をしてきたが、突如として幕引きするような出来事が起こった。
…それはいきなり現れた第8の黄金のサーヴァントの手によって数多もの宝具を撃ちつけられキャスターと葛木は一瞬でやられてしまったのだ。
呆気にとられ気づいたときにはそのサーヴァントはセイバーさんに10年前の話を持ち出し求婚してきた。
セイバーさんはこのサーヴァントを“アーチャー”と呼ぶ辺り第四次聖杯戦争の生き残りだという。






「…八人目のサーヴァントか。奴も士郎と同じですべて贋作なのか?」
《いや、俺もとっさの事で全部を解析することは出来なかったがあれらはすべて本物だった》
「全部だと…? それはありえんだろう。英霊はなにかの宝具をシンボルにしているが奴にはそれらしきものは………いや、すべて本物といったな?」
「…エヴァちゃん、なにかわかったん?」
「なんとなくな。予想はついた」
「さすがね、エヴァ。たぶんその予想は当たっていると思うわ。きっとまた記憶の続きを見れば確信するわ」
「しかし、お嬢様…大丈夫ですか? 先ほどから顔が真っ青です」
「大丈夫や…もうウチは十分士郎さんの過去を見た…やから今更見るのをやめるなんて許されへん」
《いいのだな。だが無理だったらすぐに言え。刹那もだぞ?》
「はいな…」
「はい…」





記憶が再生され、無事に帰る事が出来た士郎さん達は謎のサーヴァントについて話し合いをしていた。
だが、まともな解もできず一度お開きになった後、士郎さんはセイバーさんから真実を知らされる。
大火災の真実と衛宮切嗣の魔術師としての真実の顔を。
そして再度聞かされるセイバーさんの願い。
それで士郎さんは迷った末に前回の聖杯戦争の生き残りである監督役の言峰綺礼を尋ねた。
だが、それでもセイバーさんを救ういい案は浮かばずに結局はやはり聖杯を手に入れるしか方法がないと断言された。
士郎さんはなぜここまでセイバーさんのことを考えてしまうのかと感じその想いに気づいてしまった。
そしてセイバーさんをデートというのは建前で説得をした。

「たとえむごい結末だろうと起きてしまったことを変えるなんてできない。できなかったからやり直しをしたいなんて、そんなのは子供のわがままと同じだ」

と、士郎さんは否定した。だがセイバーさんには結局わかってもらえなかった。
結局また口論になってしまい一度その場で別れた。
…そして時間は過ぎ、いつまでもセイバーさんが帰ってこないことを知り急いで士郎さんは迎えにいった。
お互い謝りはしなかったが一緒に帰る事にした。
だが、帰り道に黄金のサーヴァントが突如として姿を現れた。
士郎さんはセイバーさんをとっさに逃がそうとしてそのサーヴァントに立ち向かったが一瞬で腹部を何かに貫かれて地に伏せてしまう。
セイバーさんもそれで武装し立ち向かったが黄金のサーヴァントはいくつもの剣を呼び出し一撃を防いだ。
そして黄金のサーヴァントは宝具を解き放った。

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

と、瞬間たくさんの宝具が姿を現し自ら自分の真名を名乗った。

「もっとも古い時代、世界がまだ一つだった頃、すべての財はたった一人の王のものだった」
「まさか…お前は!」
「そう…我が名は人類最古、古代ウルクの英雄王、ギルガメッシュ!」

そして、セイバーさんとギルガメッシュの宝具が解放された。


約束された(エクス)―――……」
天地乖離す(エヌマ)―――……」
勝利の剣(カリバー)―――!!」
「―――開闢の星(エリシュ)……!!」


一度は拮抗したがその圧倒的な力を前にセイバーさんはもろくもやられてしまい、士郎さんも勝利すべき黄金の剣(カリバーン)を投影して立ち向かったがその原型の宝具と言われた剣によって斬り伏せられる。
だが、諦めないで最強のイメージをして投影をした瞬間、目の前に現れたのは黄金の鞘。
セイバーさんとともにそれに剣を差し入れギルガメッシュの第二撃を跳ね返すことに成功。
そして気づく。士郎さんの中には聖剣の鞘『全て遠き理想郷(アヴァロン)』が埋め込まれていることを。
セイバーさんも自分の気持ちに気づくが使命の間で揺れ動き士郎さんを受け止める事が出来ないでいた。
それから士郎さんはギルガメッシュのことを聞きに再度教会に訪れたが突如、誰かの声が直接頭に響いてきて地下への道を発見し降りていった先には、





「ひっ!?」
「こ、これは…!」
「………」
「…なんともむごいものだな…士郎、これは一体なんだ…?」
《俺と同じで火災で災難孤児になった子達だ。だがこのときも彼らは生きていた。いや、生かされていたんだ。
そして俺は動揺してしまい背後を取られランサーによって右胸を貫かれてしまった。さて、終わりも見えてきた》
「そうね…もうすぐ聖杯戦争も終わるわ。続きを見せてシロウ。みんなも覚悟を決めてね?」





…士郎さん達はどれだけの地獄を見てきたのか?
この真実は見ていけばわかるものなのだろうか。

そして記憶を見せられて言峰綺礼は本当はランサーのマスターで士郎さんの10年前の過去の傷を開いてしまった。
さらに10年前をやり直せるかもしれないぞ?ともいった。
だが士郎さんはそれを拒否した。

「たとえ過去をやり直せるとしても、あの涙も、あの記憶も、胸をえぐったあの…現実の冷たさも。
多くの死と悲しみに耐えてみんなが乗り越えてきた歳月を無意味にしてはいけないんだ…その痛みを抱えて前に向けて進んでいくのが唯一の失われたものの残す道じゃないのか?」


そう、士郎さんはいって、


「聖杯なんていらない。俺は置き去りにしてきた者のために自分を曲げることは出来ない…」

ともいって、聖杯を否定した。
だが、言峰綺礼はつまらなそうな顔になり今度はセイバーさんに同じ問いをしてきた。
でもセイバーさんも答えを見つけて、「聖杯は欲しい。だが、シロウは殺せない。分からぬか、下郎。私はそのようなものよりシロウを欲しい」といった。
言峰綺礼は「つまらない…」と宣言しランサーすらも知らなかった言峰の真のサーヴァント、ギルガメッシュが姿を現した。
そしてあの火災は「現れた聖杯に私が人がいなくなれと願ったから起きたことだ」と自白した。
聖杯への願いもすべて【破壊】という手段だけで叶えられる兵器そのもので持ち主以外を殺す呪いの壷だともいった。





「はっ! まがい物の聖杯もそうだが、言峰という人間はとことん狂っているようだな」
「許せへんよ! そのためだけに士郎さんの家族や町の人達が殺されたやなんて!」
「同感です。あれでは士郎さん達がなんのために戦ってきたのかわかりません!」
《ありがとう、みんな。さて、佳境だ》





終わりが近づいていることを感じながら話は続き、言峰は地下から出る前に士郎さん達の殺害を命じたがランサーはそれに反して士郎さん達を守ってくれた。
ランサーは「勘違いするなよ?」と言葉を一度切って「俺は、俺の心情に肩入れしているだけだ!」といってギルガメッシュに向かって駆けていった。
士郎さん達はそのおかげで逃げる事が出来たがランサーはおそらくやられたのだと士郎さんはいった。
そして逃げ帰ってくるとそこには聖杯の器であるイリヤさんを奪われて重症を負っていた遠坂さんがいた。
遠坂さんの助言と助けの武器をもらった後、セイバーさんに鞘を返して士郎さん達は最終決戦へと向かった。
ギルガメッシュは力が上がったセイバーさんが担当し、士郎さんは言峰綺礼と対峙した。
そこには生贄に捧げられているイリヤさんの姿があった。そしてあの火災で見た黒い太陽…いや、孔がまさにそこにあった。
士郎さんは孔から流れてくる液体…『この世・全ての悪(アンリ・マユ)』をその身に受けてしまい飲み込まれてしまう。
そしてその中で士郎さんは文字通り、この世・全ての悪を体感した。
…何度も死ね、死ね、死ね、死ね、死ね…と囁かれながら。
だが、士郎さんはあきらめなかった。



―――死んでも勝てと、遠坂さんに言われた。
―――あなたが倒すべき敵だ、とセイバーさんに言われた。
―――戦うのなら命をかけろ、と言峰綺礼にも言われた。



そして士郎さんは『この世・全ての悪(アンリ・マユ)』を打ち破り抜け出すことに成功した。
その後、何度も飲み込まれても抜け出し言峰へと士郎さんは駆けていく。
そしてその腕にセイバーさんと共鳴するかのように『全て遠き理想郷(アヴァロン)』を掴んだ。
士郎さんが投影魔術を使ったことに動揺している間に遠坂さんから預かったアゾット剣を言峰の胸に突き刺して、たった一言「Läßt!!」と叫んだ瞬間、アゾット剣から光が溢れ言峰を倒すことが出来た。
セイバーさんはギルガメッシュに勝利し、イリヤさんも救出する事が出来て…最後は聖杯を破壊するだけ。
士郎さんはセイバーさんの思いをしっかりと胸に秘めながらセイバーさんに破壊を命じ、孔はセイバーさんの宝具によって破壊された。
…そして黄金の朝焼け、士郎さんの腕からは最後の命令によってすでに令呪は消えうせていてセイバーさんも魔力がもうないのか姿が霞んで見えた。
だけど、私はそのセイバーさんの顔がとても綺麗に見えた。
最後にセイバーさんは、士郎さんに向かって、


「シロウ―――………貴方を、愛している」


と、告げて朝焼けが指して士郎さんが目を瞑ってしまって開けた時にはその姿を消していた。
こうしてセイバーさんとの黄金の別離と同時に聖杯戦争も終結した。





「…これが、お前の最初の戦いの終結で、ここからアーサー王に貫いたとおり正義の味方を目指したのだな」
《そうだ…セイバーは責務を果たしてもとの時代に帰り、俺は目指す道を明確にする事が出来た。エヴァ、一度…休憩しよう。さすがに皆は堪えただろう?》
「そうだな…私も少し疲れたしな…」





エヴァンジェリンさんはそういって魔法を解いた。

 
 

 
後書き
刹那目線だから完コピではありませんよね?まぁ、それでもグレーですけど。 
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