剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ
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020話 刹那の告白、そして…
前書き
更新します。
翌日、やはりというべきか俺と姉さんは学園長室に呼ばれていた。
さすがにあそこまで手を貸してしまったから当然といえば当然だが。
だが、特に学園長は自分達を咎めてはこなかった。
それどころか逆に感謝をされてしまったのはどうしてだろうか?
「なぜ怒らないんですか? かなりネギ君に力を貸してしまったというのに……」
「フォフォフォ、そんなことを気にしておったんかの?」
「ええ。結局は自分の介入でネギ君達だけでの勝利で決着はつかなかったでしょうから」
「まぁ大丈夫じゃろ? エヴァもそこらへんは気にせんぽいしの」
「ところでコノエモン? それなら何か別の用事があって私達を呼んだんじゃないかしら?」
「そうじゃ。士郎君達は近々修学旅行で京都に行く話しは聞いておるんじゃろ?」
「ええ」
「私も着いていくことになっているから知っているわ」
それから学園長には色々と頼みごとをされた。
まずは前々から聞いていた関西呪術協会というところが、ネギ君が魔法使いであるということから京都入りに難色をしめしていることらしい。
このことからやはり関東魔法協会と関西呪術協会は仲が悪いということが改めて認識できる。
だが、俺と姉さんはいいのか?という質問をしてみたら、
「士郎君達の件に関してはただの一般の教師とだけしか教えとらんよ。ただ、長にだけは面白い人物がいくとだけ伝えたがの」
「では、自分達の任務はおのずと……」
「そうじゃ。ネギ君には西に特使として行ってもらい友好の証として親書を持たせるつもりじゃ」
「それじゃ私達はネギの護衛の役というわけね?」
「まぁそうなんじゃが、表向きでもいいから楽しんできんさい。ろくに楽しむための旅行は今までしたことはないんじゃろ?」
「そうね……それじゃお言葉に甘えさせてもらうわ。シロウもそれでいいわね?」
「ああ。では学園長、お礼として土産には何か買ってくることにしますよ」
「ふむ、では八橋がいいのぅ」
「了解しました」
「土産話も持ってくるわねー」
学園長室から退出し、少しして姉さんが休憩したいといったのでちょうどカフェがあったので寄ってみると、そこにはネギとアスナ、エヴァに茶々丸がなにやら話し合いをしていた。
そこで姉さんの目が光ったのは言うまでもないことだが、
「なに、どうしたの? 昨日まで争っていたのにもう仲直りしたのかしら?」
「むっ!? 衛宮イリヤか! どうしてこう会いたくない奴と会うんだ!」
「あら、私は会いたかったわよ? 約束したんだから」
「約束……? はっ! まさか!?」
「ええ。しっかり慰めてあげるわよ」
「ええい! やめんか!」
「マスター、楽しそうですね」
「どこかだ!?」
姉さんとエヴァ達はこの際、放っておこう。
それより俺はネギ君達に話しかけることにした。
「やあ、ネギ君にアスナ、カモミール」
「あ、士郎さん! 昨日は助けてもらってありがとうございます」
「ええ。でなきゃ今頃はどうなっていたのかを想像すると怖いわ……」
「そうっすね。それより士郎の旦那! 昨日の魔法はなんだったんすか? なんか実体化していたぽかったっすけど?」
「そうだ士郎! あれはなんだったのか教えんか!」
そこで姉さんとじゃれて(?)いたエヴァが話しに割り込んできた。
「名で呼んでもらえるのは嬉しいことだ。だが教える気にはなれんな」
「ふざけるな! ほとんど無詠唱で私の魔法を防ぐほどの魔法など古今東西照らし合わせても聞いたことがないぞ!?」
「当たり前じゃない? あれはこの世界でシロウだけが持ちうる手なんだから」
「なんだと? どういう事だ?」
「これ以上は秘密よ。元とはいえ敵だった相手にあれこれ話すわけがないでしょうに」
「ぐぐっ! 衛宮イリヤ、貴様は私になにかうらみでもあるのか!?」
「そんなのはないわよ? ただ、からかいやすいだけよ。ふふふ……」
「本当に殺すぞ?」
「あら? エヴァって女、子供は殺さないのが性分じゃなかったのかしら?」
「時と場合によってだ! その中で貴様は例外中の例外だ!」
「それは嬉しいわ。あなたとは気が合いそうね」
「どこがだ!」
「二人ともそろそろ落ち着いたらどうだ? 叫びっぱなしでは疲れるぞ。特にエヴァ……」
「そうね。少し疲れたわ」
「誰のせいだと……!」
「エヴァもいちいち突っかかると精神摩り減らすから怒るのはその辺にしておけ」
ネギ達はその三人のやり取りを見ていて、
(イリヤさんってすごいですね。エヴァンジェリンさんが圧倒されています)
(そうね……かなり貴重な光景ね。でもそれの仲介に入れる士郎さんもとんでもないと思うのは私だけ?)
「そういえばエヴァってネギのお父さんのナギ・スプリングフィールドっていう人が好きだったらしいわね♪」
俺は必死にエヴァを宥めていたのだが姉さんのその一言によって、盛大に時が止まったよ。
そしてエヴァは顔をものすごく赤くしてなぜかネギ君の方を睨んだ。
「ぼーやぁぁあ? やはり貴様、私の夢を……しかももっとも厄介な奴に!」
「ひぃ!? ぼ、僕はイリヤさんには話してませんよ!」
「それじゃなんで知っている!?」
「それはねぇ……」
俺は姉さんが次になにをいうのかが鮮明に脳裏をよぎり、学園長に目を瞑って冥福を送った。
そしてやはりエヴァはキレて学園長をぼこるとか口走っていた。
さて、どう落ち着かせようか?
だが少しばかり暴れた後、椅子に座り込んで目じりに涙を溜めながらエヴァは「もう奴は10年前に死んだ」といった。
確かに俺達も学園長にはそう聞き及んでいる。
「それで私の呪いは解いてくれるという約束も果たされることもなくなった。だからそのおかげで私は十数年もここで退屈に日々をすごしているんだよ」
「そうだったのか。それでネギ君の血を」
「ああ。やはり呪いを解くには血縁者の血が一番効果的だからな」
「では俺の「あ、あのエヴァンジェリンさん!」って、ネギ君、どうした?」
突然ネギ君が大声を上げたので俺が言おうとしたことはかき消された。
「僕、父さんと会ったことがあるんです!」
「なに? 奴は死んだんだぞ。そんなわけないだろう? 第一、ぼーやはまだ10歳だろう。年数的におかしい」
「そ、そうですが本当に会ったことがあるんです。6年前に!そのときにこの杖をもらったんです。きっと父さんは生きています。だから僕は父さんと同じ立派な魔法使いになって探し出したいと思っているんです」
「サウザンドマスター……ナギが生きているというのか?」
それからというもの狂喜乱舞したのか超がつくほどの嬉々っぷりでエヴァは騒いでいた。
その最中で姉さんが俺の耳を引っ張ってきて、
《シロウ、さっきもしかして破戒すべき全ての符なんてこと口走ろうとなんてしていなかったわよね?》
《い、いや~……気のせいだ、姉さん?》
《目が泳いでいるわね? 後で罰ね♪》
《それだけはご勘弁を……》
「士郎! 今の私は気分がいい! よって今日はお前の料理を食べに行くぞ!」
必死に念話で謝っているところでエヴァが話題を逸らしてくれるなんとも嬉しい提案をしてきた。
話がまったく関係ない! とかいう突っ込みはこの際無視だ!
「ダメー! エヴァはシロウになんか一服盛りそうだから私は反対よ!」
「誰がするか! だが、あれほどの戦闘力……確かにいい魔法使いの従者になりそうだな」
形勢逆転……今度は姉さんがエヴァにからかわれ始めてしまった。
とりあえず俺はエヴァの従者にはならないといって食事だけは招待した。
「っと、そうだぼうや。ナギの情報が知りたいなら京都にいってみるがいい」
「京都ですか?」
「ああ。あそこには昔ナギが住んでいたという家がどこかにあるらしいからな」
「そ、そうなんですか!? でも確か場所って……それに休みに旅費もないよ!」
「それならちょうど良かったんじゃない?」
「はい。今年度の修学旅行は京都・奈良行きとなっています」
「そうだったんですか!?」
「ああ。ネギ君は聞いていなかったのか?」
「はい……最近色々ありまして。って、僕の腕噛まないでくださいよ、エヴァンジェリンさん!?」
「いいじゃないか? 情報代として。それと堂々と私の前で愚痴を言った罰だ」
「え―――ん!」
その後、エヴァは宣言どおりわざわざ管理人室まで食事をしに来て俺の料理が相当気に入ったのかたまに寄らせてもらうぞとか姉さんに向かって言って終止姉さんは機嫌が悪かった。
◆◇―――――――――◇◆
そして次の日になって、
「皆さん、来週から僕達3-Aは京都・奈良への修学旅行にいくことになりました! もー準備は済みましたか?」
「はーい!」
俺はHRにこんなに騒いで大丈夫だろうかと内心考えていた。
大抵のものに関してはもう順応しているのかこれといって驚きはしなかったがネギ君が意外なほどに一番騒いでいるのでびっくりだ。
やはり京都に父親の家があると考えれば嬉しくもなるものか。父親か……。
しばらくしてしずな先生が教室に入ってきて学園長がネギ君と俺に用があるというので着いて行く事にした。
学園長、まだネギ君に親書を渡してなかったのか……。
それで学園長室に着いたら、学園長が京都行きは中止になるかもとか言い出したのでまた俺はハンマーを投影しようとした。
だが、高ぶる怒りをなんとか静めて話の続きを聞くことにした。
そして話の内容はだいたい昨日に聞かされたとおりのことだった。
「え? それじゃ士郎さんやイリヤさんも魔法使いだからダメって事ですか?」
「それなんじゃが、士郎君とイリヤ君は実は言うと魔法使いではないんじゃ。もっともそれに近い部類じゃがな」
「そ、そうなんですか? だってあんなにすごいことしてましたのに……」
「ネギ君の勘違いを修正すると俺と姉さんは魔法使いではなく正式には魔術師だ」
「魔術師? といいますと代表的に言いますと錬金術とかそういった方面に位置しているんですか?」
「なるほど。そういう例え方もあったんだな。まぁこの世界ではそれに近いな」
「確かにそうじゃの。だから先方には二人のことはあまり伝えておらん。
それでネギ君に頼みたいことがあるんじゃが、こちらとしてもそろそろ喧嘩はやめて西とは仲良くしたいんじゃ。だからこの親書を向こうの長に渡してほしいんじゃ。
道中で西のものに妨害を受けるかもしれんが、そこは魔法と同じで一般人にはおおっぴらに口外するものじゃないから迷惑が及ぶものじゃないじゃろ。
これはネギ君にとってなかなか大変な仕事になるが任せて大丈夫かの?」
そこでネギ君は少し考えたが、すぐに真っ直ぐな表情になって「わかりました!」といった。
やはりエヴァとの戦闘で一つ壁を越えたことによって成長が大いに見られるな。
「もちろん士郎君やイリヤ君も手助けはしてくれるから気を楽にしていってきなさい」
「はい!」
それからネギ君一人を帰らせたがまだこの部屋には客人がいるようで学園長が手を叩くと隣の部屋から刹那が入ってきた。
「学園長……なぜ修学旅行が京都なんですか? あそこはお嬢様にとって危険が及ぶかもしれない場所なんですよ!?」
「それもそうじゃがの……」
「刹那、うすうす感じていたがやはり西のものは、このかを手中にしようという輩はいるのか?」
「はい。私も詳しくは知りませんがお嬢様の潜在能力は学園長ゆずりでネギ先生を上回る力を秘めているんです」
「なるほど……それなら魔法も何も知らない無防備といってもいいこのかは利用されてもおかしくないな」
「はい。ですから今回はどうしてこの提案を呑んだのか学園長の真意を確かめにきました」
「そうじゃの。やはり一つは先ほどのことじゃ。それとこのかや……刹那君にも久しぶりに故郷に帰って羽を伸ばしてもらいたいんじゃ」
「わ、私には……故郷と呼べる場所は……」
刹那はそれきり声を出さず体をわらわらと震わせた後、いきなり学園長室を出て行ってしまった。
「刹那!」
「士郎君!」
「なんですか!?」
「刹那君を頼むぞ」
「…………」
◆◇―――――――――◇◆
俺は学園長の言葉を無言で頷いて刹那の後を追っていった。
それから気配を探りながらなんとか刹那に追いついたがその場所はよく楓が修行をしている森の中だった。
「刹那……」
「士郎さん……どうして、追ってきたんですか?」
「そんなつらそうな顔をした奴を放っておけるか。それよりなにか隠していることがあるんじゃないのか? 別に言いたくなければ聞かないが、もし良ければ相談に乗ってやるぞ」
「そう、ですね……士郎さんになら話しても大丈夫だと思います。少し、待ってください」
「……ああ」
しばらくすると刹那から人間とは違う気配がじわじわと表に出てきて次の瞬間、刹那の背中からは白い翼が飛び出してきた。
最初、驚きはしたもののこれがこのかを避ける理由の一つだという考えにいたって……なにか無性に腹が立ってきた。
「この通り私は化け物です。だから前に話したとおり私はお嬢様を影でしか守ることしかできません。それに、気持悪いでしょう?」
悲しげな瞳で微笑を浮かべて刹那はそんなことを言い出した。
それを聞いて俺はさらに腹が立った。
ただ翼があるだけで化け物? 翼が生えているだけで気持悪い? だからこのかとは一緒に歩いていけない? ふざけるな!
気づいたときには衝動的に俺は刹那の頬を叩いていた。
◆◇―――――――――◇◆
Side 桜咲刹那
……ついに私の正体を明かしてしまいました。
士郎さんは私のこの醜い姿を見て何を思っているのか、何を感じたのか。聞くのがどんどん怖くなってくる。
だけどもう見せてしまったことに後悔はない。士郎さんにならこの醜い姿を見られても平気だという安心感がなぜかあったからだ。
だが士郎さんが私を見る目は恐れや畏怖といったものではなく、ただ一点の怒りだと悟ったのは軽く頬を叩かれた後だった。
「刹那……一つ、言わせてもらう。刹那は自分のことを化け物といっているがそれは見当違いも甚だしいぞ?」
「なっ! それはどういう!?」
反論しようとしたが士郎さんの普段全然見せないそれは鋭い眼光で体が硬直してしまい黙殺されてしまった。
「聞け。化け物というのはな、姿、形、外見的に異常なやつのことをいうんじゃない。
そもそも本当の化け物というのは外見ではなくただ人を襲う、犯す、殺すことしか考えていないやつらのことを言うんだ。
その点、刹那はしっかりとたとえ偽りだとしても人とともに生きている。このかのことも本当に大事だと思っている」
「ですが私は人間と烏族のハーフでどちらにも依存できないんです……!」
「それがどうした? そんなのは些細な違いではないか。居場所がなければ自分から作る努力をするものだ。このかは刹那のその姿を見てもきっと恐れず受け入れてくれると俺は思う。姉さんやネギ君、アスナもそうだ」
衝撃だった。士郎さんは私のことを受け入れてくれるだけでなく私が化け物ではないと否定さえしてくれた。
嬉しかった。だがそれと同時に悔しかった。どうしてもっと早く士郎さんという素晴らしい方と出会えなかったのかと。
「ですが、やはり私にはお嬢様の隣を歩ける自身がありません」
「……そうか。だが前にも言ったが関係はまだやり直せる。この修学旅行がいい機会かもしれない。だから後は刹那のこのかに話しかけるという勇気の問題になってくるんだ」
「話しかける勇気……」
「そうだ。そうすればわざわざ影からではなく隣で守ることもできる」
「それは、なんて素晴らしい夢でしょうか。お嬢様とともに過ごせることができるなんて」
「夢という言葉で片付けるな。勇気を持ってその一歩を踏み出せば実現できるんだ。それだけは覚えておいてくれ」
「はい、はい!」
私は士郎さんのその言葉に感謝の意を込めて、いつかお嬢様と正面きって話ができたらいいなと想いながら涙を流した。
それから少し晴れやかな気持ちになり修学旅行では必ずお嬢様を守ることを決意した。
だが、それを士郎さんの嬉しそうな顔で見られてしまい恥ずかしかったのは胸の内にしまっておくことにした。
……こんなもやもやした感情は私にはなんなのかわからないから。
後書き
刹那の士郎への好感度が上昇した。
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