剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ
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010話 図書館島へいこう!
前書き
更新します。
「……学生の本分とは勉学である、というのはいい言葉だと思わないかね? なあ、ネギ君?」
「…………」
なぜ俺の発言にネギ君が顔を青くして無言で突っ伏しているのか?
それはなぜか?
理由は数時間前にさかのぼる。
それは学園長に突然俺は呼び出しをくらい学園長室に来たことの折、
「士郎君、ネギ君に最初の試練を与えたいと思うんじゃが?」
「試練、とは……?」
「うむ、しずな君の話によれば士郎君は当然じゃが、ネギ君も生徒たちとしっかり打ち解けていて授業内容も頑張っていると聞くんじゃ」
「たしかにそうですね。多少まだ危うい点は見られますが、ネギ君はとても10歳とは思えない技量を持っていますよ」
「それはいいことなんじゃが。だが、それだけではまだいかんのじゃ。交友も大事じゃがもうひとつ大切なことがある。それはなにかわかるかね士郎君?」
「……まあ、思い当たる点はあるにはあるんですがね。うちのクラスは頭のいいものはかなりいいんですが、言ってはなんですが逆に悪いものは特に悪いという両極端。
この学園は大学まではエスカレーター式という安心感があるのかは別として、もう期末テストも近いというのにうちのクラスには他のクラスとは違い緊張感というものが今のところ見られませんね?」
「そう、それなんじゃよ……いってはなんだがあのクラスは毎回テストは最下位なんじゃよ」
「それはまた……なんといいますか予想通りのことを平然とのたまってくれましたね、学園長? ではなんですか? その最初の試練はもしかして?」
「うむ、その試練の内容は今度の学期末テストで2-Aが最下位から脱出できれば、ネギ君を新学期から正式な教師として迎え入れたいとおもっとるんじゃ。もちろん士郎君も正式に副担任にしてあげるぞい?」
「最下位脱出ですか。そんな簡単な……いや、うちのクラスは油断できないものが多すぎる!」
「そうじゃ。だから最善を尽くしてあのクラスを最下位から脱出させてくれないかの? ネギ君には言葉より早く伝えるためこの手紙を渡しておいておくれ」
「手紙、ですか? 俺が直接言えば済むことでは?」
「何事もサプライズが必要だとワシは思うんじゃが?」
「…………」
…………、よし学園長。命を落とす覚悟はできているだろうな?
窮地に陥れておいてなにが、サプライズ?
だがほんとうに死なれては困るなぁ?
よし。アレを使うとしよう。
「―――投影開始」
心象世界より映し出すはあのトンカチ。
それを、
―――基本骨子、解明
―――構成材質、解明
―――基本骨子、変更
―――構成材質、変更
―――基本骨子、補強
―――構成材質、補強
「―――投影完了」
そして俺の手に握られているのは、このかのトンカチの数十倍はあるもうハンマーと呼んでもおかしくないもの。
これを使えばたとえ学園長とて……フフフ。
「……シロウクン? ソノキョダイナハンマーハナニカノ?」
「どうしたんですか学園長? 口調が片言ですよ? ただこのかのトンカチに技術や経験を追加しただけですよ?
いや、しかし久しぶりにいいものを作りましたよ。
それとご安心を。アダマンタイト(偽)使用ですが致命傷を負わないという概念武装はしっかりと残っていますから、本気で叩きつけたとしてもせいぜい気絶程度でしょう?
……さて、覚悟はできたかね学園長?」
「ヒィィィィイイイイイイッ!!!???」
俺はそれを振りかぶり勢いをつけながら学園長に振り下ろした。
だが、俺は当たる寸前で動作を停止した。
そしてハンマーは霧のように消えていった。
「……へ?」
「今のは冗談ですよ。ですが度が過ぎれば今度はほんとうに打ち下ろすことを約束しましょう」
「う、うむ……気をつけよう」
「では、手紙をネギ君に渡しにいきますのでこれで失礼します」
顔を青くしている学園長を尻目に俺は学園長室を出て行った。
今の俺の顔は実にいい仕事をしたといった表情をしていたことだろう。
その後、廊下を歩いていたネギ君に手紙を渡した。
ネギ君に試練内容と一応癪だが伝えただけだ。
すると手紙を開く前にあわてたのか、
「さ、最終課題!? も、もしかして悪のドラゴン退治とか? あるいは攻撃魔法を200個習得!?」
「攻撃魔法はともかくドラゴン退治はまずありえんだろう? ……倒せんこともないがな」
「そ、そうですよねぇ~……って、士郎さんドラゴン倒せるんですか!?」
「さあどうだかな? それより早く手紙の中身を確認したらどうかね?」
「は、はい……」
さて、内容は知っているのだが手紙の内容がついつい気になってしまうな。
自然を装って見てみるか。
だが、俺は読むべきではなかったかもしれない。
だって内容が、
『ネギ君へ
次の期末試験で、
2-Aが最下位脱出できたら
正式な先生にしてあげるヨン?
コノエモンより』
……学園長、そうとう死に急ぎたいらしいな?
なんだ、後半のこのふざけた文章は?
やはり今度こそ闇討ちをしてやろうか?検討すべきだな。
「な、なぁーんだ。簡単そうじゃないですかー……」
「……ネギ君、俺からの忠告だ」
「はい?」
安心しているところ水をさすのも悪いと思ったがやはりこれだけは言っておかなければならないことだ。
「うちのクラスを、甘く見ないことだ。色々な意味で」
「……え? どういうことですか?」
「まあ分からないなら今は構わない。おのずとその意味を理解できるだろうからな」
「はあ……?」
まだなにもわかっていないらしいネギ君は首をかしげていたが、いったとおり実感はできるだろう。
これは、まさしく学園長に乗せられているようでほんとうに癪だった。
その後、教室に向かいネギ君が教室のみんなに期末テストに向けての大・勉強会を開くといった。
◆◇―――――――――◇◆
Side ネギ・スプリングフィールド
さっきの士郎さんの意味深な台詞はなんだったんだろう?
でも今はとにかくこの期末テストを乗り切れば僕は正式な先生になれるんだ。
よし! がんばるぞ!
それじゃ、まずは勉強会を開くとしよう。
そしてみなさんを絶対最下位から脱出させて立派な先生になろう!
そうすれば立派な魔法使いにも近づけるしね!
「あの、その……実はうちのクラスが最下位脱出できないと大変なことになるので、みなさんがんばって猛勉強しましょう!」
「まあ! 素晴らしい提案ですわネギ先生!」
「ありがとうございます、いいんちょさん!」
「はーい、提案!」
「なんですか桜子さん?」
「ではお題は『英単語野球拳』がいいとおもいまーす!」
英単語はともかく野球拳? どんな勉強方法だろう?
なぜかみなさんは楽しんでいるようですけど。
それに士郎さんはなぜかすごい驚いている。
士郎さんが驚くほどならすごい方法なんだろうな? よし!
「それじゃそれでいき―――……」
「却下だ!」
って、あれ? 士郎さん、なんで止めるんですか?
「子供のネギ君はまだ許せる範囲だが、おまえらは俺を社会的に抹殺するつもりか……?」
「士郎さん? どういう意味ですか?」
「ネギ君よく聞け! 野球拳というのはだな……」
それから士郎さんに野球拳とは一体どういったものかを事細かに教えてもらいその実態を知って僕は愕然とした。
「…………と、いうわけだ。だからいつも通りやってもらえると俺としてもとても助かる」
「た、たしかにそうですね……」
な、なんて能天気なクラスなんだ。
このまま提案を実行していたらもしかしたら士郎さんが捕まっちゃうじゃないですか!
「それじゃ普通に小テストをしたいと思います。今から配る用紙をまわしてください」
◆◇―――――――――◇◆
Side 衛宮士郎
ふう、危ないところだった。
しかし本気であせることを平気で言ってくれるな?
タカミチさんが元気すぎるクラスといった意味が再確認できた。
それと何名か舌打ちをしたな?そいつらには眼光を当てて黙殺した。
まあ、それはともかくとして小テストが終了してネギ君と一緒に採点をしていてわかったことだが、このクラスには本当に頭がいいものはいいが、それをバカレンジャーがものの見事に最下位に落とし込んでいるところがある。
そして本頭に至るわけだが、
「ネギ君、大丈夫かね? すごく顔が青いが……」
「はっ! な、なんですか士郎さん?」
「……気を失っていたのか」
「そ、それよりどうしましょう士郎さん!?」
「どうしようもなにもここは頑張るしかないだろう?」
「そ、そうですよねー……あ、そうだ」
「ん? どうしたんだ?」
「はい。三日間だけ頭が良くなる禁断の魔法があったんです。副作用で一ヶ月ほどパーになるけどいたし方ありません。ラス・テル・マ・スキル・マギステル……」
「ば、やめない――――……」
俺がネギ君を止めようとしたがそこにアスナの鉄拳が飛んできてそのままネギ君を連れて出て行ってしまった。
とりあえず俺も追うことにした。すると階段の折り返し部分に二人がいたので、
「……アスナ、助かった。あのままでは恐ろしいことになっていたかもしれない」
「ほんとですよ。まったくこの馬鹿ネギは」
「ネギ君、なんでも魔法に頼ろうとするのはよくないぞ? それではインチキをすることと同義になってしまうからな」
「そうよ、ネギ? 私だってあれから色々頑張っているんだから。それに、そんな中途半端な気持ちで先生されても教えられる生徒も迷惑だわ」
「!! そ、そうですよね……なんでも魔法に頼るのはよくありませんよね。すみませんでした士郎さん、アスナさん」
「いや、わかってくれればいいんだ。だから期末までまだ時間はあるのだからみっちり勉強を教えてあげればいい。俺もわずかばかりだが力になろう」
授業が終了したその後、俺は学園長に頼まれていた修理品を直していた。
ちなみにネギ君達はアスナ達馬鹿レンジャーを中心に居残りで勉強を教えているらしい。
それで今日中に修理できるものを終わらせた後、管理人室に帰ってみると珍しくいつも俺より遅く帰ってくる姉さんが部屋にいた。
◆◇―――――――――◇◆
Side 衛宮イリヤ
「あら? シロウお帰りなさい」
「ただいま姉さん。今日は早かったようだな」
「ええ(ふう、今日はシロウが帰ってくる前に帰ってくることができたわ)」
「それで? まだ俺にはなにをしているのか教えてくれないのか?」
「ごめんね、シロウ。でももう少し待って。そのときが来たらちゃんと教えてあげるから。ふふふ……」
「なあ? 俺の第六感が珍しく危険を知らせているんだが気のせいか?」
「気のせいよ」
「そうか? ならいいんだが無茶だけはしないでくれよ?姉さんが傷つく姿を俺は見たくないから」
「わかっているわ。心配してくれてありがとね、シロウ。でも、それはシロウも同じことなんだからね?」
「うっ!? わ、わかっているさ」
いけないいけない。なんとか話をそらすことができたわ。
まだシロウには気づかれるわけにはいかないもんね。
シロウには悪いと思ってるけど新学期までは内緒にしておきゃなきゃね。
「あ、それじゃ私は大浴場にいっているわね」
「ああ」
それで私は大浴場にいってみたけどそこにはちょうどアスナ達がいた。
なにか相談事かしら? 面白そうだし聞いてみよう。
「ねえアスナ。何のお話をしているのかしら?」
「え? い、イリヤさん! いつからここに!?」
「なにって……さっきからここにいたわよ?」
「そ、そうですか。あ、それなんですが……」
アスナ達から話を聞いてみたところ今度の期末テストで最下位を取るとクラスは解散になって、特に点数が悪い生徒は小学生からやり直しをしてしまう……って、普通そんなことはありえないと思うのだけど。
シロウもそんなことは一言もいってなかったし。
そこにユエがある話を持ち出してきた。
図書館島という場所には読むだけで頭が良くなる魔本があるとかなんとか?
私は興味はないのだけれど、どうやらそうとう切羽詰っているようでアスナを中心に、
「行こう!! 図書館島へ!!」
と、いっているようなのだ。面白そうね?
「それじゃ私も着いていこうかしら? 面白そうだしね」
「え゛ッ!?」
「いいの、イリヤさん!?」
「ええ、ハルナ。保護者として着いていけば問題はないでしょ? それとシロウに話したら止められそうだから内緒にしとくわ」
「ありがとアルよ」
「気にしなくていいわ、古菲。私もその図書館島という場所には興味があったし」
「よーし! それじゃ今日の夜に出かけるとしよー!」
「おー!!」
元気なものね。私も久しぶりに羽を伸ばす気分でいくとしようかしら。
あ、そうだわ。アレを着ていこう。
もし魔法にかかわることだったら大変だし。
後書き
当時はこんなうわさ話を信じてしまうアスナは相当なものだなと思っていました。
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