剣製と冬の少女、異世界へ跳ぶ
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001話 プロローグ
前書き
ある意味黒歴史を投稿していきます。
あの死が常に隣り合わせだった聖杯戦争が終結した。
俺の従者でありともに死戦を潜り抜けてきたセイバー………そして俺がもっとも愛した女性……ブリテンの英雄、アーサー・ペンドラゴン王。
真名をアルトリア・ペンドラゴン。
武装が解かれ青いドレス姿でともにその場にいた俺のほうを向きながら笑みを浮かべていた。
あれほど力強かった彼女のその姿は、今はもうまるで幻想のように儚く、
現界していられるのももうあと数分が限度だというのに彼女は微笑んでいた。
なにか言わなければいけないと言葉を捜すがどれも口には発せられない。もし今言葉を発したら俺は彼女を迷わせてしまうかもしれない。
そしてそんな俺の心情を察してくれたのか、彼女はゆっくりと口を開き、
「シロウ―――――」
きっとこれが最後に言葉なのだろうと俺は確信した。
「―――――貴方を、愛している」
その言葉とともに、
まばゆい朝焼けがさして俺は一瞬目を瞑ってしまった。
そして目を見開いたときには俺の前から彼女は姿を消していた。
自然と涙は出てはこなかった。
これが俺と彼女の別れとなるのだった。
そこで目を覚ます。そこはあの武家屋敷の俺の部屋ではなくどこかの森の中に佇む古い小屋の中だった。
体のあちこちから溢れている血が原因で気を失っていたのだろう。
「ッ……ああ、あのときの夢か。なんでこんな死に際のときに見たんだろうな?」
「やっと目が覚めたのね、シロウ……」
「イリヤ……」
俺の隣には俺ほどではないがボロボロになっていたイリヤの姿があり、残った魔力で俺の体を治療してくれていた。
しかし塞がらないほどに傷はひどく、だがイリヤは必死に魔力を流してくれていた。
だがなぜイリヤがここに一緒にいるのかというと、聖杯戦争が終結した後に、遠坂が聖杯の為だけに生きたイリヤの体を調べて判明した事なのだが、イリヤはホムンクルスの母親と切嗣とのハーフであり、生まれる前から魔術的な処置を施され、生まれ出た時には既に人間離れした魔術回路を持っていて、小聖杯として育てられた。
その後も、何重もの処置の結果、成長は10歳前後で止まり、長生きも出来ないになり果てた。
それで遠坂は、封印指定を受けて日本に隠れ住んでいる高名な人形師『青崎橙子』を探し出してイリヤの新しい体を作ってもらうよう交渉した。
だがそう簡単に事が運ぶわけがなく等価交換でとんでもない金額を出された。が、俺の魔術特性を知り目を光らせて、
「知り合いの欲しがっている刀と他いくつかの額に見合った概念武装品を投影してもらえればこの件はチャラにしてやる」
と、言われ投影品を渡したら「これは確かに封印指定物だな……」と言われかなり冷や汗を掻いたが内緒にはしてやると言われ、なんとか難関をクリアしてイリヤの新しい体を手に入れ魂を移し変えたのだが、そこからが問題だった。
学校を卒業後に俺は切嗣の夢でもあった正義の味方を目指す為に世界に出ると話を持ち出したのだが当然、反対されどうしたものかと考えていたところで、
「それなら私がついていくわ。シロウ一人じゃアーチャー街道まっしぐらしちゃうからちゃんとお姉ちゃんが見張ってなきゃね」
と、イリヤから驚愕の真実を教えられた。どうやら聖杯としての機能でアーチャーを倒して吸収したときに得た情報でアーチャーが未来の俺の姿と分かったらしい。
そしてレイラインがアーチャーと繋がっていて聖杯戦争中に夢で過去を見たらしく薄々感付いていたらしい遠坂も、
「……確かに」
なんておっしゃられた……。
なんでさ……?
それで結局断ることもできずに仕方なくイリヤを連れて世界に出た。
それから5年が経過し、確かに今の俺はアイツと同じくらいの180cm代前後の身長、脱色した白い髪、そして、投影の酷使の代償として起こったのであろう、肌が浅黒く、瞳が銀色に変色して、黒いボディーアーマーに赤い聖骸布によって編まれた外套を纏ってまさにアーチャーそのものの姿になっていた。
夫婦剣の干将・莫耶を主に使うのも嫌になるがまさにアーチャーのそれである。
閑話休題
そしてなんでこんな小屋の中で二人そろってボロボロになっているのかというと、すでに俺の魔術の“投影”を隠匿もしないで何度も使っていた結果、当然を言うべきか封印指定をうけてしまい、幾度もの襲撃で何度も逃げに逃げて、今回もなんとか襲撃者から逃走することは成功できたが代償に致命傷を受けて今がその現状である。
「くっ……今度こそ、やばいかもな、これは」
「しゃべっちゃ駄目よシロウ。まだ血が止まっていないんだから……まったくあの時にわたしを見捨てていれば……」
「…それ以上はいっちゃ駄目だ、イリヤ。でないと怒るぞ?」
「うっ……ごめんね、シロウ……」
「いや、謝るのは俺のほうだ。イリヤをこんな危険なことに巻き込んでしまって……」
俺はなんとかまだ力が入る腕をイリヤの頭に乗せて撫でてやりながら謝罪した。
「そんなことはないわ! だってついていくって言ったのは私なんだからシロウが責任を感じることはないんだから!」
「それでも、だ。俺がもっとまわりに気を使っていればこんな事態にはならなかったんだからな」
「確かにシロウのしたことは認められるものではないわ……でも! シロウは今まで頑張ってきたわ。それだけは誰にも否定はさせない」
イリヤはこんな俺のために泣いてくれている。親父に女の子は泣かしちゃいけないと言われていたのに、ほんとダメだな、俺って……
「ありがとうイリヤ……でももう俺の体は動けそうにない。だから―――……」
「それ以上は言わないで」
せめてイリヤだけでも逃げてくれ、と言おうとしたが手で口を塞がれてしまった。
「なにか言おうとしているのはわかっているんだから」
むぅ、やっぱり顔に出てたか……あからさまに怒っているな。
「死ぬときは一緒だよ、シロウ……約束したでしょ?」
「……すまない」
「いいのよ。それよりお話しよう。幸い結界はまだ持続しているから襲撃者はまだ来ないと思うわ」
「(こんなときに……? いや、こんな時だからか)……わかったよ、イリヤ。じゃ何の話をするか」
「そうね……今、リンやサクラ、バゼット、カレン、それにタイガは何をしてるとかなんてどうかしら?」
「それはいいな。じゃまずは藤ねえからいってみるか」
「そうね」
それからイリヤとはいろんな話をした。
その中で特に遠坂の話題が出たらイリヤは過敏に反応して「いまだに金欠生活をしているんじゃないかしら?」
などとろくでもない話をしていたとき、
「それで……、……!?」
突然イリヤは話を中断して険しい顔をしだした。
「どうしたイリヤ?……まさか!?」
「……えぇ、いきなり結界が消滅したわ。それもたった二人の魔術師によって」
その事実に俺は驚愕した。イリヤの魔力量は聖杯戦争の時と比べれば小聖杯としての機能を無くし落ちたもののそれでもそのキャパシティは遠坂を上回るものであるがために、並みの魔術師が結界を破ろうとしても最低5人以上は必要でそれにかなりの時間を消費しなければそうそう破られるものではないからだ。
「まずいわね……あれ、でもこの魔力はどこかで―――……」
イリヤがなにかを言いかけた次の瞬間、ドカ――――ンと扉が蹴破られる効果音とともに、
「やっと見つけたわよ、二人とも」
そんな懐かしい声とともに二人いる一人が羽織っていた黒いフードをはずしたら、出てきた姿は最後に会ったときはまだ少女としての幼さが残っていたが、今では見違えるほどに大人の女性として成長した遠坂の姿があった。
「遠坂……?」
「リン……?」
「なに呆けてんのよ、二人して? そんなにわたしがここにいるのがおかしいかしら?」
「いや、だってな……」
「えぇ……」
俺とイリヤの反応に遠坂はため息をつきながら、
「はぁー……まぁ、ここは久しぶりと言うべきでしょうけど、イリヤがいてもやっぱりこんな結果になっちゃたのね?」
「「うっ!」」
「まぁどうせ士郎のことだからイリヤが止めるのも振り切って飛び出していったんでしょうけどね」
「うぅ……面目ない」
「別に、もう気にしていないわよ。でもね……士郎にイリヤ、あなた達はやりすぎた。いえ、名を知らしめすぎた、といったほうが正しいわね。
魔術の隠匿無しでの行動は、協会にも目に余るものがある。二人の行動で表に出ないでいい人物の名前まで出る始末だから。
ま、でもまだ世界とは契約していないみたいだからよかったわ」
「………それで? リン、あなたは私達を消しに来たのかしら?」
イリヤは平然とした態度をとっているが言葉には鬼気迫るものがあった。
それに対して遠坂は顔色も変えずに、
「ん―――……半分正解で半分ハズレといったところね」
なんて中途半端な返事を返してくれますよ。あ、なんかイリヤの背後に “ぎんのあくま” が降臨しているような気がする?
いや、きっと怪我のせいで目がかすんで見間違えたんだ。そうだ、そうしておこう。
「それじゃどうするんだ? 遠坂がここにいるってことは協会から大方『俺達の死体を回収しろ』とか命令を受けたんだろ?」
「えぇ、まぁね。でも私達は今は独断で動いてる身よ。情報はもらってないわ」
「は? なんでさ? じゃどうやってここに……」
「無論、独断で君達二人を探し出したのさ。私のルーン魔術でなら容易いことだ」
俺の疑問にもう一人まだフードを羽織っている人が答えてくれた。しかしこの声って、
「やっぱりトウコね?」
「やはり衛宮とは違い気づいていたか、イリヤスフィール」
「ええ、結界が破られたときにはもう気づいていたわ」
「そうか。しかし久しいな、衛宮にイリヤスフィール」
「はい。橙子さんもお変わりなく。しかし、よくばれませんでしたね? 仮にも橙子さんも俺達と同じ封印指定の身でしょう?」
「なに、わたしにとっては容易いことだ。三下の魔術師などに捕まるほど衰えてはいない。ま、話は変わるが二人にはこれに入ってもらう」
そういって橙子さんはトランクからどうやって収納していたのか分からないが二つの人形をとりだした。
「え! また体を変えることになるの!?」
「そうだ。お前たちの体を協会の連中に引き渡すにはこれしか方法はないからな」
「なるほど………ですが等価交換はどうしますか?」
「心配ない。これに見合うものを遠坂嬢が見せてくれるそうだからな。前払いとして素直に受け取っておけ」
それを聞いて俺とイリヤは遠坂の方を見ると遠坂はおもむろに一つの宝石を取り出した。
だが、しかし形状が変だな? まるで剣のような……? ん? 剣状の宝石? まさか!?
「リン? まさかそれって……」
イリヤもさすがに驚いているようだ。なんせ解析してみたらそれは頭が割れるような痛みが走ったがなんとか理解できた。
「宝石剣……か?」
「ご名答。まだ試作の段階だけどあなた達を送り出すだけの力は秘めているわ。でもさすがね、士郎。もうこれも解析できちゃうなんてね」
「まぁな。ん?……ちょっとまて、じゃなにか?もしかして俺達を平行世界に飛ばそうとか考えてないよな?」
できれば間違いであってほしかった。だが現実は実に非情である。
「また正解ね。士郎冴えてるわね。私もこんなことはしたくはないわ。でもね、もうこの世界には裏表どちらにもあなた達の居場所はないわ。だから並行世界に飛ばすわ」
「そうか」
「そう」
「案外反応薄いのね。これでも相当ショックを受けると思ってたんだけど」
「いや、もう俺もイリヤも分かりきっていたことだからな。むしろ現実を突きつけてくれてありがたいと思っているのさ」
「そう……わかった。じゃ、橙子さんお願いします」
「わかった」
「すみません。では、お願いします」
イリヤとともに頭を下げた。
そして橙子さんが詠唱を始めると、意識が途絶えそうになる。
イリヤは一回体験したから慣れてるらしくすました顔をしていた。
そして完全にそこで俺は意識を失い、気がついたときには目の前の地べたに俺とイリヤのもとの体がまるで死んでいるように横になっていた。
否、抜け殻だから実質は死んでいるといっても差し違えないだろう。
「成功だな。どうだ衛宮にイリヤスフィール?」
「大丈夫みたいね。でも変な感じがするわ」
「確かに……それになぜか懐かしさを感じるぞ」
「当然よ。なんせあなた達の今の体にはセイバーの鞘が分けて埋め込まれてるんだから」
「えっ!?」
「全て遠き理想郷が! どうして!?」
「どうせあなた達は異世界にいっても無茶しそうだから餞別に入れさせてもらったわ」
それは否定できないところだな……じゃなくて!
「そうじゃなくてなんでアヴァロンがあるんだ!? あれはセイバーに返したはずだろ?」
「そう。士郎は確かにセイバーに鞘を返したわ。だからね……その、ね」
なんだ?急に歯切れが悪くなったぞ。それに心なしか顔が引き攣っている。
「………リン、もしかしてアーサー王の墓を荒らしたんじゃないでしょうね?」
「は?」
「うっ! やっぱりわかっちゃった?」
バツの悪そうな顔をしながらテヘッ♪なんて顔をしてやがりますよ。あ、なんか今頭のどこかで何かが切れる音がした。
「……遠坂? セイバー、いやアルトリアの墓を荒らしたってのは本当か……?」
あ―――、ついドスの入っている殺気を出してしまった。遠坂が思いっきり引いてるよ。
でも、しょうがないよな? なんせ墓荒らしなんてアルトリアに対しての冒涜以外のなにものでもない。
体が移ってアヴァロンもあることだし魔力も心なしか全快しているみたいだから前はそうそう出来なかったけど一回くらいカリバーンでも投影しちゃおうかな―――?
(ちょっ!? ねぇイリヤ! なんか士郎の魔力が私以上あるのは気のせい?)
(当たり前よ。私との魔術の訓練のときに正式な方法でパスをつないで無理矢理2本しか開いていなかった魔術回路に魔力を流し込んですべて開いたんだから。
最高27本はあったわ。それにパスを繋いでわかったことなんだけど本来魔術回路は擬似神経じゃない? でもシロウは神経そのものが魔術回路なのよ。だから常に魔力を流し込んで鍛えてあげてたの)
(なにそれ!? そんなに回路あったの? それに神経そのものが魔術回路っていったいどんな出鱈目な体なのよ!!)
(そうね。わたしもそれで最初は本気で解剖してやろうか? とも思ったけどシロウは特別だからなんにもしなかったわ。
あ、それと世界に出てすぐに一時期はいろんな国をまわって遺産巡りをしてたから宝具の数は神剣・聖剣・魔剣・銘剣と後、剣以外にも槍とか防具とかもなんでもありよ?)
(なっ!?)
「……もう話は終わりかね?」
「ひっ!?(アーチャー口調!?)」
その後、必死の遠坂の説得によりどうか落ち着きを取り戻したがどうにもいかんな。アーチャーもこうして摩耗していったのだろうか?
「じゃ、じゃぁもういいわね?」
「あぁ、私の気が変わらんうちにやってくれれば実に嬉しいがね?」
「シロウ……まるで本当にアーチャーよ? まぁわたしは仕事柄慣れてるからいいけどね」
「これはこれは……また面白い一面なことだな」
「(イリヤ? 慣れてるって……それに橙子さんも人事だと思ってタバコを吹かしながらけらけらと笑ってないでください……士郎本当に怖いから)…まぁ、いっか。あ、それと士郎に最後に聞いておきたいことがあるのよ」
怯え顔から一変して真剣な顔になり遠坂は話しかけてきてくれた。
きっと大事なことなのだろう。
「なんだ?」
「平行世界にいってもやっぱり戦いはやめるつもりはないの? まだ正義の味方はあきらめきれないの?」
「……そのことか。確かにこの世界に入ってアーチャーがなぜ摩耗したのか嫌でも思い知らされた。最初はそんなつもりはなかった。でも九を助けるために、一を捨てるという親父の理想もわかった節もあった。そしてさっき遠坂がいった世界って奴だけど、一度は声をかけられた」
「!?」
遠坂は驚いてるな。それはそうだよな。
「だけど、俺は受け入れなかった。結果、たくさんの人が死んだこともあった。
だから何度も挫折しかけたけど……でも、イリヤに励まされて立ち上がってきた。
そしてこれが理想の果てかはわからないけど、手が届く範囲だけでも助け続けようという一つの結論があった。
でもまだ迷っている。だから……まだわからない、何年かかるかわからないけどきっと自分にとっての答えを見つけてみるよ。それに……」
俺はイリヤを見て、
「イリヤが一緒にいてくれる限り俺は絶対に挫折はしない、夢はあきらめないよ」
「シロウ……うん! 絶対シロウの答えを一緒に見つけてあげる」
「……妬けちゃうな。いいパートナーじゃない。じゃ絶対に挫折なんかしちゃダメよ!
それと私からも大師父じゃないけど課題を追加ね。正義の味方もいいけどまず自分の幸せも考えなさい。最後の師匠命令よ。
もし挫折なんかしたらイリヤに変わって私が平行世界だろうとなんだろうと叩きのめしに行くんだから」
「あぁ、肝に免じておくよ。それとありがとな、遠坂、橙子さんも」
「なに、これが若さかってところを見せてもらって私としても見物代くらいはあげたいところだな。
そうそう、見物代ではないが私からも餞別だ。あちらにいって当分は苦労するだろうしね。紙幣じゃ心配だからいくつか宝石をやろう」
「あ、ありがとうございます」
渡された袋には高価そうな宝石がいくつも入っていた。
それをリュックに詰め込んでいたが、遠坂が物欲しそうに見ていたがここはあえて無視するのが懸命だな。
「じゃそろそろ時間も惜しいからここでお別れね」
そして遠坂がおもむろに宝石剣を俺とイリヤに向けた。
一応心配なので聖骸布でイリヤを俺の体に縛りつけた。
するとイリヤは嬉しそうに笑みを返してきてくれた。
すると宝石剣から七色の光が漏れ出して俺達を包み込んだ。
そして少しずつ視界が薄れていく中、
「しっかり士郎を支えてやるのよ、イリヤ」
と、いう遠坂の声が響いてイリヤが「ええ」と返事を返したところで完全に視界がシャットダウンした。
後書き
テンプレ内容ですねー……。恥ずかしいです。
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