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魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵

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本編
  十五話~両親

side なのは


士郎君たちと同室になった最初の朝。私が目を覚ますと


「起きたか、なのは」


制服に着替えた士郎君がいた。


「おはよう、士郎君。ところで今何時?」
「まだ六時だ。隣は………まあ、なんだ。すごいな……」


フェイトちゃん達の方を見る。


「あー、これは……」


ランス君はフェイトちゃんの抱き枕と化していた。
フェイトちゃん、頬擦りまでしてるよ……


「起きた時大変そうだね……」


そんな話をしていると、横で何かが動く感触が。


「うぅ……ん」
「ヴィヴィオ、よく寝てるね………」


起き上がろうとして、服を掴まれているのに気付いた。
そっとその手を放させて、寝かせる。


「私朝練行かないと……」
「ヴィヴィオは私が見ておこう。安心して行ってくるといい」
「ありがとう」


その後、士郎君は朝食の仕込がある、と言って部屋を出て行った。
その間に着替えを済ませ、私も部屋を出る。
フォワード陣もいい動きをするようになってきたし、一層鍛えてあげないとね。



side 士郎


仕込みを終え、部屋に戻ってきたときにものすごい叫びが聞こえた。



「何事だ、まだ七時だ。少し静かにしたまえ」
「し、しししし士郎!起きたらランスが私に抱きついてたの!!」
「だ~から何度も言ってんじゃねえか、んなことしてねえって」
「嘘!じゃあなんであんなに顔が近かったの!?」
「それはお前が……」
「そんなことしてない!」


大体予想通りな展開だな。


(フェイトはずっとこの調子か?)
(ああ。自分から抱きついて来てこれだ。このやり取りももう5度目だぞ)


仕方がない。助け舟を出すとするか。


「こいつを抱き枕にしていたのは君だぞ。私だけでなくなのはも目撃している。嘘だと思うなら聞いてみるといい」
「え、えええええええ!!!」
「ったくよ、そうだって言ってただろうが」


その騒がしさで目が覚めたのだろうか、ヴィヴィオが起き上がった。


「うぅん……」
「ヴィヴィオ、目が覚めたか?」
「あ……」


こちらを見て数秒すると、私に飛びついてきた。


「いきなりどうした?」
「いなくなっちゃった……」


隣にいたはずのなのはと私がいなかったから不安だったのか。


「いなくなったりはしないよ。それより、朝起きたら挨拶をしような」
「あいさつ?」
「そうだ。おはよう、って言うんだぞ」
「……おはよう」
「ああ。おはようヴィヴィオ。こっちの二人にも言おうな」
「おはよう」
「おう。おはようさん」
「おはよう」
「おはよう。よく言えたね。偉いよヴィヴィオ」
「えへへ……」


しかし、フェイトの変わり身の早さには驚くな……



side なのは


「はい、じゃあ朝練はこれで終了。みんなだいぶミスも減って動きが良くなってきたよ。この調子でやってこうね」
「「「「はい!」」」」


フォワードたちが隊舎に戻ったあと、データの整理をして戻ろうとした時、ヴィヴィオと士郎君を見つけた。


「ヴィヴィオ~」
「あっ………」


私を見つけ、飛びついてくる。


「どこかに行くところだったの?」
「ああ、今から朝食を取りにいこうとしていた。ヴィヴィオ、なのはさんにも」


ヴィヴィオとアイコンタクトを取る士郎君。なんだろうか……


「おはよう」


朝の挨拶だった。驚きながらも返答する。


「おはようヴィヴィオ。朝ごはん、私も一緒に行ってもいいかな?」
「………うん!」



こうして私たちは朝食を取りに向かった。




……………………………………………………………



朝食を取り終え、部屋に戻ったところで


「高町なのは一等空尉、衛宮士郎三等空尉、至急部隊長室まで来てください」


呼び出しを告げる放送。


「何だろう………」
「どうしたの?」
「ヴィヴィオごめんね、なのはさんたちお仕事みたい。お部屋でいい子にしててね」
「すぐ戻ってくる。絵でも書いて遊んでるといい」
「うん………」


悲しそうな顔。そこで私は


「なのはさんたちが戻ってくるまで遊んでくれる人を連れてくるから大丈夫だよ」
「ほんと?」
「うん!」


少しだけだが嬉しそうにしてくれた。
さてと、あの人……まだ隊舎にいるかな?



side 士郎


マスターに呼び出され、現在私たちがいるのは部隊長室。


「で、何の用だ?」
「話はほかでもない、ヴィヴィオについてや」


予想できていたこと。あの子をどうするか。敵に狙われているのは事実。しかし、だとしたらなぜ私たち二人だけなのだ?


「単刀直入に言うよ。二人はヴィヴィオの親になる気ある?」



予想の斜めどころかはるか上を行く発言だった。



「「………はい?」」
「あの子が狙われてるのは事実や。だとしたら目の届くところに置いておく方がええと思うんやけど、どうや?」
「どうや、といわれてもな、突拍子がなさすぎる。たとえそうだとしても親になる必要はないだろう?」
「確かにそうやな。でも、あの子は作られた存在。本当の親なんておらへん。そんな子を放っておいても二人はええんか?それにや。あの子は二人にすごく懐いとる。六課で面倒見るんなら二人に任せたいんやけど」
「だが………」
「迷惑なんか?」
「そう言う問題では……」


ここでずっと発言のなかったなのはが口を開いた。


「私は、いいよ」
「なのは!?」
「私、やっぱりほっとけないよ。どんなに探したって、本当の親は見つからない。私にできることがあるならしてあげたいんだ」
「そうか、士郎はどうや?」


二人から視線を向けられる。一人は懇願するような、もう一人は………すごく悪意を感じる視線を。
しかも、『断るとかそんなKYせんよな?』的な感じだ。


「はぁ………わかった。引き受けよう」
「よーし、これであとは書類提出で終わりやな」


ん?ちょっと待て。普通こういうものは決まってから書類を用意するはず……


「いや~予め作っておいてよかったな~。シャマルとの徹夜が無駄にならんかったし」


やはりというかなんというか、マスターは相変わらずだった。というかそんなことで徹夜するな……


だがさすがにすぐに養子、とはいかないようで被保護者扱いとする、という方向で話が進んだ。



side なのは


話を終え、部屋に戻る。


「おかえり~」
「やっと帰ったか。ったくよ~、嬢ちゃんも人使いが荒いぜ」
「あはは……ありがとね、ランス君」


ヴィヴィオの面倒と頼んでいたランス君にお礼を言う。


「別にいいって。どうせ暇だったしな」
「それでもありがとう。助かったよ」
「おにいさんとおはなししてたよ」


ヴィヴィオは嬉しそうにあったことを報告する。


「そっか、なのはさんたちもね、ヴィヴィオにお話があるんだ」
「なあに?」
「しばらくの間ね、なのはさんと士郎さんがヴィヴィオのママとパパになることになったの」


私たちを交互に見て、


「ママ?」
「はい」
「パパ?」
「ああ」
「…………うっ、うっ」


泣き出してしまった。


「よしよし、泣かない泣かない」
「うええええええーん」


しばらく背中をさすってあげた。



「大丈夫?」
「………うん」


泣き止んだ後わたしから離れて涙をふく。そんなヴィヴィオにランス君が耳打ちした。
何を話したんだろう………。ヴィヴィオは私たち二人を見て


「あのね」
「なあに?」
「ママとパパのなれそめをおしえて」
「…………………………ええええええええええ!?」



爆弾発言をした。


「ヴィヴィオ、そういうことはな、もう少し大きくならないとわからないんだぞ」
「そうなの?」
「そうだ」
「………わかった」


残念そうにするヴィヴィオ。士郎君のおかげで助かった………
その士郎君が念話を飛ばしてきた。


(なのは、ヴィヴィオにアホなことを吹き込んだ犯人が逃走しようとしている。逃がしていいのか?)
(犯人?)


士郎君の視線の先には……そろーりそろーりと部屋を出ようとするランス君が。


(………捕まえてくる)
(ああ。お仕置きしてやれ)


そうして私はランス君の後に続いて部屋を出た。




side 士郎



「ママ、どこにいくの?」


急に部屋を出て行ったなのはのことを聞いてくるヴィヴィオ。


「ママはな、ちょっとしたお仕事だ。すぐ戻ってくるから安心しなさい」
「おしごと?」
「そうだ」



そんな時、


「待て待て冗談だって、冗談…ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!」


誰かさんの叫び声が聞こえた。
唖然としているヴィヴィオ。
少しするとなのはが戻ってきた。


「ママ、おかえり。おしごとたいへんだった?」
「え!?……あー、うん。でも、もう終わったから大丈夫だよ」
「じゃあいっしょにあそべる?」
「ママはお昼まではお仕事ないから一緒に遊べるよ」
「パパは?」
「パパはみんなのお昼ご飯を作らなきゃいけないから、この後は遊べないが、お昼ご飯までには戻ってくるから、朝みたいに三人で食べようか」
「……うん!」



途端に笑顔になるヴィヴィオ。その笑顔を見て思う。この無垢な少女と、この少女の母となった女性を守りたいと。
俺は、そのために剣を取る。
………見つけたよ、凛。全てを救う正義の味方を目指した俺が。一人の少女とその母親の小さな幸せを守りたい、というとてもちっぽけだが、確かな願いを。 
 

 
後書き
十五話です。短めです。

フェイトさんはママになりません。
士郎がパパ。ここ重要です。

今回の補足は


『ヴィヴィオのみんなに対する呼称』


なのは→なのはママorママ
士郎→しろうパパorパパ
ランス→おにいさん
フェイト→フェイトおねえさん
はやて→おねえさん


と、こんな感じです。



それでは今回はこの辺で~ 
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