巨大兎
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第四章
「食料問題の解決の一つの手段としてな」
「毛皮は、ですな」
「エネルギーだ」
それになるというのだ。
「冬に暖かい服を着る」
「兎の毛皮を使った」
「寒ければ服を着ればな」
それでというのだ。
「暖かいな」
「その分暖房を使わないで済みますか」
「そうだ、だからだ」
「エネルギ―問題も考えて」
「わしは原発反対を言いながら真夏にスーツで冷房の効いた部屋にはいない」
「テレビ局のキャスターやコメンテーターですね」
「夏は開襟シャツでいい」
これでいいというのだ。
「省エネルックでな」
「ファッションにはこだわらず」
「そうだ、そして冬はな」
「暖かい服を着ることですか」
「それか暖かいベッドで寝る」
これがというのだ。
「一番いい」
「そうですか、それでは」
「これから兎を生み出すぞ」
巨大なそれをとだ、こう言ってだった。
保志は実際に兎を巨大化させてそうしてだった、牛位の大きさにしてみた。そのうえで渡辺に対して言った。
「どうだ」
「本当に巨大化させましたね」
渡辺はその兎を見て保志に応えた、見れば白いよく学校の飼育場にいる様な兎だ。その兎が巨大化したものだ。
「博士って本当に実行する人ですね」
「考えるより動けだ」
保志は渡辺に胸を張って言い切った。
「それがわしの信条だからな」
「考えるよりですか」
「考えるのは後でいい」
「それが科学者の言葉ですか」
「何を言う、まずは論文を書いて研究してだ」
そうしてというのだ。
「動くということだ」
「何がどうなるかとかは」
「そんなことはどうでもいい」
それこそと言うのだった。
「それでだ、この度もな」
「早速巨大化してみたんですね」
「巨大猫は観光になっているが」
彼等は今もコーナーにいる、二匹共かなりのスペースのコーナーの中で今は気持ちよさそうに寝ている。
「今度は違う」
「ちゃんと食糧問題やエネルギー問題の解決にですか」
「役立つぞ」
「そうなるでしょうか」
渡辺は極めて冷めたジト目で兎を見つつ保志に応えた、兎は今は堆く積まれた人参をポリポリと食べている、その動きは明らかに兎のものだ。
保志は巨大兎をより生み出そうとした、だが即座に一つの問題があることがわかった。その問題はというと。
「食費がかかるな」
「そりゃ大きいですからね」
即座にだ、渡辺は保志に答えた。
「その分だけ」
「猫もそうだが」
「そうですね、牛もそうですが」
「かなり食う」
「はい、しかもお水も飲みますし」
「牛は穴を掘らないがな」
「兎は掘りますから」
渡辺は兎のその習性についても話した。
「穴掘りますから」
「その対応もあるしな」
「しかも跳ねます」
「兎は跳ねる」
「はい、それも大きいと」
「跳ねるとな」
それこそというのだ。
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