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学校のお庭番

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第四章

「教えて下さい」
「こうしてですね」
「はい、これからも」
「わかりました」
 諸星もこう返事を返した。
「そうさせてもらいます」
「宜しくお願いします」
「先生も生徒が学校の主役であることは事実で」
 それでというのだ。
「用務員はどうしてもです」
「裏方ですからね」
 笑ってだ、諸星は話した。
「やっぱり」
「はい、ですから注目もされにくいですが」
「それがかえってですね」
「いいです、生徒も先生も見られていないと思っていても」 
 それこそ誰にもだ。
「それは生徒や先生に対してであり」
「用務員にはですか」
「見られていないとです、いえ」
「いること自体についてですね」
「思わないので」
 それでというのだ。
「かえっていいのです」
「そういうことですか」
「はい、そこが狙い目なので」
「これからもですね」
「何かあれば教えて下さい、何処の誰が何をしているかわかれば」
 その時はというのだ。
「私の方もです」
「手を打たれるんですね」
「理事長として」
 つまりこの学園のトップとして、というのだ。
「そうさせて頂きます」
「わかりました、では」
「これからも宜しくお願いします」
 理事長は諸星に微笑んで話した、そしてだった。
 諸星はそれからも何か見ればそこから不正を行っている教師や生徒のことを調べ理事長に話した、すると。 
 理事長はすぐに手を打ちその都度過ちは訂正された、いじめについては親が呼び出され停学等も行われた。
 そうしたものを見てだ、諸星はある日従妹の家、彼女が夫と共に暮らしている家に菓子を持って行って訪問して言った。
「いや、お庭番っていうかな」
「忍者ね」
「それになった気分だよ」
「お話を聞くとそうね」
 従妹は諸星が持って来てくれた饅頭を彼と一緒に食べつつ応えた。
「実際にね」
「ああ、学校の用務員はな」
「学校の隅から隅まで行くし」
「裏もな」
「それで意識されないわね」
「そこにいてもな」
「あまりね」
 存在感、それがなくてだ。
「私にしてもね」
「お前は俺に会うといつも声かけてくれるけれどな」
「だって従兄だから」
 それでとだ、従妹は彼に答えた。
「だからよ」
「それでか」
「そう、従兄だから」
 親戚だからだというのだ。
「それでね」
「声をかけてくれるんだな」
「親戚でお互いよく知ってるから」
 そうした間柄だからだというのだ。
「私はね」
「そうなんだな」
「ええ、ただ挨拶はしてもらってるでしょ」
「学校の中を歩いてるとな」
「うちの学校教育しっかりしてるから」
 勉強のことだけでなくというのだ。 
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