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レーヴァティン

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第百三十四話 熊本城攻略その四

「攻めて来る気配だけか?」
「それはないと思うけれどな」
「来るなら来いってんだ」
「返り討ちにしてやるからな」
「この熊本城が陥ちるものか」
「こんな堅固は城はないからな」
 城のこのことへの絶対の自信も見せた。
「それに一万の兵がいるんだぞ」
「鉄砲も弓矢もたんまりとあるんだ」
「攻め落とせるものか」
「空から来ても木の杭撃って空船を叩き落としてやる」
「術で来たら弓矢だ」
「そっちの備えも万全だぞ」
 そうした状況であることを話すのだった。
「攻め落とせるものなら攻め落としてみろ」
「出来るものならな」
「よりによってこんな鬱陶しい時に来たが」
「攻め落とせるものか」
「それを今から教えてやるぜ」
 こんなことを言っていた、そしてだった。
 彼等は身構えていた、戦意はあったがそれでも雨の夜の中にいるので乱れが出ていた。そのことが彼等にとって災いし。
 空に何かが来ても全く気付かなかった、もっともそう簡単に気付くものではなかったが。熊本城の要所に。
 突如何かが強引に降りてきた、どれもかなり大きなものであり運悪く降りたその下にいた兵達が潰された。
「何だ!?」
「何が来た!?」
「何も見えないぞ」
「何が来たんだ!?」
 兵達は味方が潰され蛙の断末魔の如き叫び声をあげたのを見て何かと思った。その彼等に対してだった。
 弓矢や手裏剣が放たれた、そして雨の中とはいえその雨から守られていたのか鉄砲までが放たれた。
 槍や刀も来た、それで多くの兵が倒され要所が占拠されていった。
「門を抑えろ!」
「櫓もだ!」
「敵兵は殺せ!」
「同士討ちは気をつけろ!」
「白い布が胸にある奴には手を出すな!」
 こうした声が闇夜の中で出て来る、そしてだった。
 彼等は門や櫓を占拠していった、そうして。
 歓声を挙げていった、その完成が城の中をさらに乱す。英雄はそれを見て言った。
「順調だな」
「はい、城内に味方が次々と降りています」
「そして城の要所を掌握していっている」
「そうなっていますね」
 謙二は英雄に会心の声で応えた。
「これは」
「俺の狙い通りだ、ではな」
「それではですね」
「俺達もだ」
「正門や裏門も動揺しています」
「そちらに行った兵もいるな」
「その様ですね」
「ではだ」
 英雄からも正門の動揺はわかった、闇夜しかも割と激しい雨の中なので状況はよく見えない。だが人の気配を察したのだ。
 動く感情や声、それが正門からわかった。それで英雄は言うのだった。
「これより正門にだ」
「銃撃と砲撃をですね」
「加えてだ」
「門と櫓を壊しますね」
「雨だが」
 それでもというのだ。
「鉄砲も大砲も油衣で覆っていた」
「そうしておいてよかったですね」
「全くだ、雨でも工夫次第でだ」
「鉄砲も大砲も使えます」
「そうだ、もっとも長くは使えず」
 濡れてしまう、だからどうしてもそうなってしまうというのだ。 
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