世界に痛みを(嘘) ー修正中ー
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黄金の大鐘楼
前書き
正直、エネルの"雷迎"ってワンピース史上最凶レベルの規模と威力を誇る力だと思う(小並感)
スカイピア全土に暗雲が立ち込める。
空島の住民は再び絶望し、恐怖は未だ終わっていないのだと誰もが理解した。
「ヤハハ!油断したな、ゴムの男!!私は神官とは違うと言っただろう!!!」
天空にてエネルの高笑いの声が響く。
エンジェル島へと堕とした雷迎はルフィの奮闘により破壊された。
しかし、エネルにとってそれは想定内の出来事であり、さほど驚くことではなかった。
あれはルフィをおびき寄せるための囮
本命は神の地上空にて当初より造っていたこの雷迎だ。
それが遂に完成した。
先程の雷迎とはわけが違う。
その大きさはルフィが先程消滅させた雷迎の数倍の大きさを誇り、数十倍のエネルギーを内に秘めている。
「この神の地ごと、消えてなくなるがいい!!!」
そして遂に、雷迎がスカイピアへと堕とされた。
ルフィは右腕の黄金が枷となり間に合わない。
シャンディアの戦士であるワイパーとラキも呆然と空を見上げことしか出来ず、ガン・フォールは己の無力を呪った。
そんな状況の中、ナミ達は見た。
神の地へと堕ちる雷迎を迎え入れるアキトの姿を
ビビはそんなアキトの姿にアラバスタ王国での爆弾の一件を思い出す。
ビビはアキトの生還を望み、アキトの身を案じることしか出来なかった。
神の地へと雷迎が迫る。
アキトは宙にて滞空し、磁力を最大限に高め、身体の表面を斥力で覆う。
両腕を腰に構え、身体から斥力の力を放出したアキトは両手の掌を宙より迫る雷迎へと向けた。
雷迎は大きく放電し、その莫大なエネルギーが容赦なくアキトへと牙をむいた。
斥力と雷のエネルギーが衝突し、周囲の大気に波紋状の衝撃波が吹き荒れる。
それは大気を震撼させ、眼下の神の地の樹木を揺らした。
途方も無い質量と莫大なエネルギーを秘めた雷迎がアキトの身を襲う。
アキトは苦悶の声を上げ、必死に大気を踏み締め、全力で雷迎を押し返そうと奮闘する。
これだけの規模とエネルギーを誇る雷迎だ。
ルフィと同じように内部へと侵入し、雷迎を内側から破壊するよりも先に神の地へと着弾してしまうことは想像に難くなかった。
例えそれで雷迎の破壊に成功しようともどれだけの被害が生じてしまうかは予想もつかない。
少なくとも神の地に深刻な被害が生じてしまうことは確かであった。
この雷迎を止めなければ空島は消滅し、400年にも渡るクリケット達の悲願もエネルに破壊しつくされてしまうだろう。
アキトにとってそれは断じて許容出来ることではなかった。
故に、アキトは正面からこの雷迎を押し返すことを選択する。
それが現状考えられる最善にして最高の策だ。
しかし、現実は決して甘くはない。
莫大な雷のエネルギーを秘めた雷迎に圧され、アキトの身体は徐々に大地へと押されていく。
掌は出血し、服の裾が破けるのを皮切りに服全体が消滅していった。
「ヤハハ、馬鹿め!!」
エネルはそんな無謀なアキトの姿を見下ろし、嘲笑した。
「よくやったと言いたいところだが……」
「この私が、神の地の神だ!!!」
「これで空島もお終いだ!!私を邪魔する者は全てこの世から消え去ることになる!!!」
狂気の笑みを顔に張りた付けたエネルはスカイピア全土を見下ろす。
万雷は今なお続き大地を破壊している。
雷迎により神の地は跡形も無く消滅し、スカイピアが文字通り消え去るのも時間の問題だ。
「さて……」
「残るは貴様だ、ゴムの男!!」
その言葉を皮切りにエネルは巨大豆蔓へと落雷させる。
巨大豆蔓ではその巨体をくねらせ、必死に登る大蛇の姿があった。
エネルは知っている。
あの大蛇の体内に憎きあのゴムの男、ルフィがいることを心綱で感知していた。
万雷が巨大豆蔓へと集中し、大蛇の身を襲う。
エネルは容赦することなく限りない大地への道を阻む敵を排除に取り掛かった。
大蛇の皮膚が黒く焦げ、痛みに体が悲鳴を上げる。
それでも尚大蛇は巨大豆蔓を登り続けた。
神の裁きがその身に直撃する。
それでも尚大蛇は止まらない。
大蛇は理解していた。
今、400年の時空を超え、彼らの意志を継いだ者達が再び黄金の鐘を鳴らそうとしていることを本能で理解していた。
400年前突如として自分は独りぼっちとなった。
寂しかった。
心に穴が空いたようであった。
大好きであった黄金の鐘の音も聞こえない。
大好きであったモンブラン・ノーランドとカルガラの姿も見えない。
探して、待って、探し続けて、待ち続けて、400年の月日が経過してしまった。
黄金の鐘の姿もなく、鐘の音も聞こえない。
そんな中、モンブラン・ノーランドの姿を一人の青海人から垣間見た。
神の地にてその青海人を見た時から大蛇は過去を幾度も回顧している。
大蛇は彼らが愛した場所をこれ以上傷付けさせないように奮闘する。
外敵であり、現状の全ての元凶であるエネルを打倒すべく同じ志を持つ青海人の男を援護するのだ。
大蛇は巨大豆蔓から体を離し、目一杯箱舟マクシムへと首を伸ばす。
大蛇は満身創痍の体を動かし、その巨大な口を大きく開いた。
ルフィが勢い良く大蛇の口から飛び出す。
エネルは即座に雷神へと変貌し、ルフィを再び迎え撃った。
「オラァ!!!」
勝負は一瞬であった。
ルフィは大蛇の体内から空へと飛び出した瞬間には腕を前方へと押し出していた。
技名を叫ぶこともせず、一心不乱に"ゴムゴムの黄金回転弾"をエネルへと叩き込む。
奇しくもルフィ本人が気付くことは無かったが、ルフィは蒸気を体から発した状態で技を繰り出していた。
それは後に"ギア2"と命名する技の原理をルフィが無意識の内に体で覚えていたこと、そして黄金回転弾を繰り出すために腕を捻じったこと、幾つもの偶然が重なったことが起こした現象であった。
今のルフィは右腕を何重にも捻じったことで体内の血液の流れは爆発的に上がり、身体能力は飛躍的に上昇している。
その速度は通常のルフィの技の速度を軽く凌駕し、エネルへと直撃した。
戦闘が開始されて早々攻撃されたことでエネルはまともに防御することも出来ず吹き飛ばされる。
血しぶきが飛び散り、黄金の矛が砕け散った。
歯は無残に折れ、骨には罅が入る。
エネルはルフィの黄金回転弾により深刻なダメージを負い、マクシムの黄金の顔へと叩き付けられる。
黄金は大きく凹み、エネルは吐血した。
「……まだだァ!!」
しかし、それでも尚エネルは倒れない。
待望への執念と神としての矜持が今のエネルを動かしていた。
ルフィは宙から眼下へ落下し、大蛇も満足気な様子で大地へと墜落していく。
エネルは深刻なダメージを負うことになったが、自身の勝利は揺るがないことに笑みを深めた。
しかし、雷迎が押し返される光景を視界に収めた瞬間、エネルは驚愕のあまり言葉を失うのであった。
神の地へと雷迎が迫る。
雷迎は徐々に神の地を消滅させんと堕ちる。
アキトは為す術無くその圧倒的な力に押されていく。
樹木が大地から引きはがされ吹き飛ばされる。
大地は荒れ、神の地全体を爆風が襲う。
雷迎から迸る雷が大地の表面を線のように削り、破壊していく。
アキトは雷迎に向けて斥力の力を全力で叩き付け、押し返そうと奮闘する。
それでも依然として力が足りず、雷迎を押し返すには至らない。
アキトは既に無意識に自らに課していたリミッターを解放し、周囲への被害を一切考慮することなく斥力の力の全てを放出していた。
その身に宿す潜在能力を全て解放し、潜在能力以上の覇気の力を雷迎へと叩き付ける。
斥力の威力も通常の数十倍にまで膨れ上がり、雷迎を徐々に押し戻すも、再び押し返される。
まだ足りない。
リミッターと潜在能力の全てを解放しても雷迎を跳ね返すことは叶わない。
解放した力に耐え切れずアキトの身体の内部が破壊され、身体の至る箇所から流血していく。
アキトは崩壊していく自身の体を気にすることなく、力を放出し続ける。
死力を振り絞る。
己の死を予見し、死が数秒後に迫り、精魂が尽きそうになった時、アキトは自身に眠る無数の可能性の存在を感じ取り、その扉を強制的にこじ開けた。
それは無意識であった。
アキトの雷迎を押し返そうとする強き意志と死への恐怖、そして生への執着が引き起こした現象であった。
アキト自身この瞬間を覚えているわけではない。
だが、アキトはこの瞬間だけ一時的に飛躍的な成長を遂げたことは確かであった。
そして、遂に、アキトは数秒にも満たぬ刹那の瞬間、ジカジカの実の覚醒へと至った。
大気を踏み締め、筋肉が大きく隆起する。
筋肉の繊維が千切れたと錯覚する程に両腕に力を入れ、アキトは咆哮を上げた。
雷迎が遂に押し返され、神の地から徐々に離れていく。
斥力の力が爆発し、波紋状の衝撃波が大気を大きく振動させ、神の地全土を震撼させる。
アキトの掌から途轍も無い衝撃波が生じ、雷迎は天へと凄まじい勢いで押し返された。
エネルはその信じられない光景に驚愕し、大きく目を見開く。
天へと押し返された雷迎はエネルと箱舟マクシムへと向かった。
アキトにより押し返された雷迎は凄まじい速度で箱舟マクシムへと飛んでいき、エネルへと直撃する。
箱舟マクシムを破壊されるわけにはいかないエネルは回避することなど出来るはずもなく、一身で雷迎を迎え撃った。
しかし、ルフィとアキトとの戦闘で満身創痍と化していたエネルに雷迎を押し返す力が残っているはずもなく、為す術無く天へと吹き飛ばされる。
雷迎とマクシムの間に挟まれ、エネルは自身の放った雷迎と共に雲を突き抜けていく。
「この程度で私がやられるかァ……!」
エネルは雷迎を両手の掌で受け止め、その勢いを殺そうと死力を尽くす。
しかし、神の力と謳い、空島全土を恐怖に陥れていた力を以てしても雷迎を止めることは叶わなかった。
エネルは凄まじい勢いで空島から追放され、天を突き抜け、大気圏から宇宙空間へと瞬く間に突入する。
「こ、こんな、馬鹿なことがぁ……!」
それでも尚アキトに押し返された雷迎の勢いが止まることはなく、宇宙空間の深部へと放逐されていく。
何ィ……!?
エネルが最後に見たのは背後に悠然と存在する月であった。
限りない大地、自身の悲願が遥か遠方に浮かんでいた。
「ガァア……!?」
そして遂に、エネルでも御し切ることが不可能となった雷迎が膨張を始める。
全身を走る想像を絶する痛みにもがき、精魂尽き、薄れ行く意識の中でエネルは過去を回顧した。
『"サトリ"に"シュラ"、神官を2人まで倒されたか。これは序盤から番狂わせだな、ヤハハハハ!』
『奴らもまだまだ甘い。どうやら青海人達の実力を見誤ったようだ』
『まあ、神の加護がなかったのだろう、ヤハハハハ!』
『明日、再びシャンディアを迎え撃ち、長きに渡る闘いに終止符を打とうじゃないか』
『気張れよ、お前達。神である私を失望させてくれるな』
青海人が空島に来た時点で事態を深刻に捉えるべきだった。
『その必要はない』
『神の地は奴ら、神官に任された地だ』
『此度の青海の猿共の件は、神官である奴らの不手際が招いた事態に他ならない』
『奴らの不手際は奴ら自身で刈らせろ!!』
エネルは知っていた。
青海人の連中は神官を撃破する程の実力を有し、いずれ神である自分に脅威になり得る可能性を秘めていたことを
『しかし、幾ら油断や驕りがあったとはいえ、青海の猿共などに無様に負けるとは……』
『サトリとシュラもまだまだ甘い……』
エネルは神としての矜持を先行し、あえて青海人の連中を放置した。
ゴロゴロの実の力を過信し、己の実力に絶対の自信を持っていた。
神である自分に敵うはずもないと高を括り、青海人のことなど気にも留めていなかった。
青海人の中にゴロゴロの実の力を無効化する男が2人もいることなど予想もしてなかった。
しかし、今だからこそ思う。
あの時青海人の連中を少しでも脅威だと捉え、万全を期してさえいれば……!
青海人が空島に来た時点で雷迎で全てを消滅させておけば……!
神官だけではなかった……!
本当に甘かったのは……!
エネルは己の愚かさを悔い、自身の悲願である限りない大地への想いを捨てきれないまま遂に心身共に限界を迎える。
雷迎はエネルとマクシムを巻き込み爆発し、エネルはその爆発の光の中へと姿を消した。
ルフィとアキト、そしてエネルの空での戦闘にて生じた衝撃波は空島全土に波及し、黄金の大鐘楼が座する天空にも行き届く。
400年前を境に一度も鳴ることのなかった黄金の大鐘楼の美しき歌声が空島全土に鳴り響き、"シャンドラの灯の響き"が知れ渡るのであった。
後書き
エネル、宇宙へとご到着
> 何ィ……!?(限りない大地──!!)
苦痛と喜びがブレンドしたようなテンション
< 余談 >
・最初の案ではエネルはアキトにより月まで吹き飛ばされ、雷迎のエネルギーの膨張とアキトの斥力、月に板挟みにされ、最終的には大爆発を起こし敗北、という予定でしたが、流石にそれだとアキトの戦闘力のインフレが凄まじいことになるためこの案は没になりました。
空島編は次回で最終回です。
空島編は去年の08月08日(水)から投稿を開始し、約1年かけ漸く終わりが見えてきました。
思えば長かったです……
皆様の感想はとても執筆の励みになりました。
皆様、これまでお付き合いいただきありがとうございましたm(_ _)m
アンケートも次回までです。
次回はエピローグとなります。
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