ジャパニーズサプール
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第一章
ジャパニーズサプール
大阪の高校生遠江夏樹はこの時巷の平和主義とやらにうんざりしていた、何かあると街頭に出て来て戦争反対だの基地反対だの自衛隊反対だの言うが。
その実ある国の先軍政治や核開発は批判しない、何故か日本に対してだけ言い尚且つそうしたことを言っている人達の顔触れを見れば何処で主張していても同じで人権だの原発反対だの皇室反対だのも言っている。
そしてそうした人達の素性を調べると過激派出身でお金の出どころも怪しい、民主主義で言論弾圧反対とも言いながら自分達と違う意見には甚だ不寛容で平気で弾圧しようとする。そんな人達ばかであるので。
彼はもう平和主義というものにほとほと嫌気がさしていた、日本でそんなことを言う人はその実は運動家で工作員か何かではないかとさえ思っていた、そうした人達ばかりなので。
平和という言葉にも嫌気がさしていた、そんな中でだった。
彼は難波の街、丁度高島屋の前を歩いているとそこに風変わりな人が歩いていた。その人はというと。
随分と洒落た高級そうなスーツに靴、ステッキにボルサリーノで飾った中年の男の人だった。背は一六七センチ位でやや太っているが顔立ちも普通より下の感じだ、妙なステップで歩いている。街行く人達はその人を見て何だという顔をしているが。
その人は平気な顔で歩いている、夏樹はその人を見てすぐに怪訝な顔になった。そうしてその人に近寄って尋ねた。
「あの、パフォーマンスですか?」
「パフォーマンスじゃなくてサプールだよ」
その人は夏樹に笑顔で答えた。
「これはね」
「サプール?」
「そう、コンゴにいる人達でね」
「コンゴって確かアフリカの国ですよね」
「そうだよ、アフリカ中部の西にある国で」
「そこのですか」
「コンゴでは内戦が続いて大変だったけれどその国であえて武器を捨てて」
戦争をせずにというのだ。
「暴力を否定して立派なスーツを着て紳士になって平和主義に徹する」
「そうした人達がいるんですか」
「それがサプールでコンゴの首都キンシャサでは結構な数の人がこうした服を着て街を歩いて平和を主張しているんだ」
こう夏樹に話した。
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