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雪国

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第四章

「言わないわ」
「そうなんだな」
「というかね」
「というか?」
「お母さん帰ってもらってよかったじゃない」
「よかったわね、じゃないんだな」
「だって私若し離婚になったら」
 その場合はというと。
「お母さんについていくつもりだったから」
「俺は一人でいろってか」
「そう思ってたから」
「だからか」
「今こう言ったのよ」
 よかったわね、じゃなくてよかったじゃない、だったというのだ。
「そういうことよ」
「そうなんだな」
「そうよ、あとお母さんにも言われたわよね」
「二度目は、だよな」
「ないわよ」
 娘も俺にこのことを言ってきた。
「覚悟しておいてね」
「厳しいことだな」
「厳しいも何もね」
「当然なんだよな」
「そうよ」
 こう俺に言うのだった。
「これがね」
「そうなんだな」
「あとね」
「あと?」
「今日出前頼んだから」
「ああ、今七時だな」
「お母さんからそろそろ帰って来るってメール来てたから」
 帰る間ずっと俺の隣にいたけれど話しかけるどころかずっと無言でそっぽを向いていた。怒りは収まっていなかったのだ。
「だからね」
「それでか」
「晩ご飯出前よ」
「それで何を頼んだんだ」
「特上寿司十人前よ」
「十人前?」
「私とお母さんが食べるから」
「一人五人前か」
 これには俺も驚いた、娘は育ち盛りのうえに部活は女子サッカー部でいつも走っていてそれでかなり食べる、けれどそれも十人前には驚いた。
「そんなにか」
「お腹一杯食べるから」
「母さんそんなに食べないだろ」
「お母さんが食べる分以外には私が食べるから」
「お前がか」
「お昼に帰るってメール来た時から決めてたから」
 女房にというのだ。
「晩ご飯の時にはうちに着くってね」
「もうその時にか」
「お昼食べた後は部活に出ておやつも食べてないから」
 つまりお腹が空いているというのだ。
「八人前でも九人前でもね」
「食えるのか」
「そうよ」
「そうか・・・・・・って待て」
 娘の今の言葉で俺はあることに気付いた、それで娘に聞き返した。 
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